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元勇者の先生と勇者になりたい少女  作者: 小骨 武
海洋都市編
22/82

22. バベル


 王都第一魔法学校の校門では、石畳の道とレンガの壁が歴史を感じさせている。

 学校の外から校門を挟んで校内を見ると、中にいると感じられなかったそれらの雰囲気に浸ることができる。


 せめて外からの見栄えぐらいは良くしたいという意思が透けて見えるような気がする。

 と考えていると、校舎の方から揺れる金髪が見えた。



「三人とも早いな。良い心がけだ」



 これからバベルに行く予定のナティ先生は手ぶらだった。

 鎧と盾を収納したように、他の物も指輪の中に入れられるのかもしれない。



「それじゃあ、早速、行くとするか」



 ………やっぱりナティ先生の筋肉は凄いです。後ろ姿だけで鍛えてるのがよくわかります。


 ナティ先生の後ろに付いていくこと数十分、王宮の前に着いた。

 そのまま王宮に入ろうとするナティ先生に慌てて声をかける。



「こんな朝早くに来たら追い返されないですか?」


「来ることは事前に伝えてある。心配すべきは昼までに手続きが終わるかどうかだ」


「……手続き?」


「手続きで馬鹿みたいに時間がかかる。最悪、昼飯抜きだ」



 王宮に入り、手続きをすること一時間。

 武器の没収等に一時間。

 そうしてようやく許可をもらい、兵士に連れられて王宮の奥にある巨大な門の前にたどり着いた。


 ゆっくりと門が開き、眩しい日光が目に入ってくる。

 門の外には美しい花園が広がっており、花園のまん中にぽつんと不似合いな石造りの塔が地面から生えていた。



「バベルに来るには王宮を通らないといけなかったんですね。外から回り込んで入るのかと思ってました」


「外から入れるようだが、そんなことをすれば兵士が黙っていないだろう。

 なんと言ったって、人類最強と言われる元帥の住む場所だからな。

 警備が緩いと国の威信に関わる。

 それはさておき。さあ、いくぞ」



 ナティ先生の背中を追いかけて花園に入る。

 草花は背丈が伸びていて、来訪者がめったに来ないことが想像できた。


 その元気いっぱいの植物を踏みしめて、ずかずかと進み、塔の入り口と思われる場所に着いた。


 大きな塔にぽっかりと空いた四角い穴。

 外の明るさに反して中は暗く、先がどうなっているかはわからない。



「元帥って本当にいるんですね。

 教科書には伝説の人って書いてましたけど、具体的な話は一切聞いたことがなかったので、本当はいないんじゃないか……なんて思ってました」


「………そのどちらも正しい」


「どちらも?」


「ああ、元帥はいる。

 しかし、魔王討伐に本格的に参加したのは第一の魔王討伐のときだけだ。

 第二の魔王討伐からは元帥の姿を戦場で見た者はいない。

 時々町で目撃されるらしいが、それも宗教がらみの話で、魔王討伐は眼中にないようだ」


「そんな人達が人類最強……なんですか……」


「実力は本物だからな。

 私も一度だけ魔界の辺りで戦闘を見たことがあるが、確かにあれに肩を並べる者はいないな」


「それなのに魔王討伐に参加しないなんて…。

 今日会ったらついでに、魔王討伐に参加するように言わないといけないですね」


「ついでじゃない」


「?」


「今日はここに、魔王討伐に参加するように説得しに来たんだ」



 暗い穴の中に入っていくナティ先生に続いて、中に入っていく。

 中は意外にも明るい。

 石壁の隙間から魔法の光が漏れだしていて、石の廊下は紫に染められている。


 廊下を抜けると拓けた場所に出た。

 正面にある装飾のついた扉を目指す。

 ナティ先生が銀色のドアノブを掴んで扉を開けると、



 ッッッッ‼‼

 何ですかこれッ!!空間が歪んでるッ!?



 ぐねぐねとねじ曲がる空間から離れようとしたとき、ナティ先生が謎の手に引っ張られるのが見えた。

 三人が事態を把握する間もなく、驚いた顔のナティ先生は消えて扉は閉まる。


 扉が閉まる直前、ナティ先生の声が聞こえた。



「お前達は戻れ‼」



 しかし、その命令に従うことは出来なかった。

 振り向いた三人の行く手を、体が大きく、そのわりに脚の短い石像が塞いでいる。


 ギョロ目の石像は笑っているようにも見える表情で、石の目をグリグリと動かした後、三人に向かって突進を始めた。



「ツラック‼任せました‼」


「えっ‼何をっ‼」



 横にいるナルミシアの手を引き、走りながらだんだん速度を上げていく。

 地面から足の離れたナルミシアは奇声を発しているが、気にせず走った。


 ナルミシアは固有魔法を使える代わりに、他の魔法を使いこなすことが出来ない。

 置いていくならともかく、そんなことをするつもりはないので、私とツラックのどちらかが時間を稼ぐしかない。


 ツラックには申し訳ありませんが、頑張ってもらいましょう


 走りながら紫に光る部屋を見渡すと、横の壁に質素な扉があるのを見つけた。

 後ろを向くと、置いてきたツラックの方の壁にも扉がある。



「ツラック‼別々に逃げましょうッ‼」



 石像の相手を任されたツラックは、闘牛士のごとく石像の突進をかわしつつ、「わかった」と返事をする。


 ツラックにも私の考えが伝わったみたいですね


 全員がまとまって逃げた場合、最終的に強化魔法を使えないナルミシアを見捨てる必要がでてくる。

 それを避けるために、石像をツラックに任せ、二手に分かれて出口を目指す。


 質素な扉を開けると案の定そこには道が続いている。

 歪んだ空間に引きずり込まれることはない。

 問題なく避け続けるツラックを尻目に扉の先へ進んだ。

 石造りの廊下が伸び、松明が等間隔に並んでいる。



「ユニちゃん、後ろ、来てないよ」


「そう……みたいですね」



 重たい足音は聞こえてこない。

 ただ、それよりも気になることがあった。



「ユニちゃん?どうしたの?」


「この通路、長すぎじゃないですか?」


「た、確かに‼塔の中にあるはずなのに遠くまで通路がある‼」


「地平線の先まで続いてるように見えますね。それともう1つ」


「ん?何?」


「私達、こんなに進んで来ましたっけ?」



 二人の背後にも地平線の先まで通路が続いていた。



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