表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元勇者の先生と勇者になりたい少女  作者: 小骨 武
学校の怪談編
21/82

21. 朝食は欲望の味


 勢いよく地面を踏みしめる。

 同時、靴の底に摩擦増加の魔法を発動し、地面を蹴る全ての力を推進力に替える。

 最後に、魔法の使用を止めて靴が地面を離れると、ユニの体は砲弾のような速度で前に飛び出した。


 今まで何回もしてきた基本動作は、滑りやすい砂の地面でも自由に動き回ることを可能にする。

 風を受けながら手の中にある練習用の剣を握りしめた。


 敵は黄金の鎧に身を包んだナティ先生。

 体がまるごと隠れるほど大きく分厚い金の盾を前面に構え、私の攻撃を待っている。

 今回の戦闘はハンデとしてナティ先生は剣を持っていない。

 胴体部分の鎧に一撃加えれば、私の勝利。



「ていやーッ‼」



 戦闘開始の合図をナティ先生がした二秒後、離れた位置にいた私の剣がナティ先生の盾に降り下ろされた。


 ガキーンッ、という大きな音とともに剣と盾がぶつかる。

 魔法で地面に引っ付いて剣に力を込め続ける私を、輝く兜の奥からナティ先生が見つめる。



「私に力押しは無理があるんじゃないか?」


「やってみないとッ……わからないですよッ‼」



 私は全力の力押しで声を震わせているのに、ナティ先生は全く力を使っていない。



「生徒に全力を出すつもりはない。

 わかっているのか?これは手を抜いているんだ。

 魔王の攻撃を受け止めてきた私相手に、それは通用しない。

 出直してこいッ‼」



 盾が突然凄まじい力で押され始める。

 ナティ先生は離れようとした私ごと盾を振り払った。



 <シールドスマッシュ>



 ユニの体がまたもや砲弾のような速度で飛び出んでいった。

 ただの基本技だが、ナティがすると途端に即死級の攻撃になる。

 もちろんナティは手を抜いている。

 その上で人間砲弾になってしまうほど、ナティの怪力は想像を絶していた。


 ユニはそのまま勢いを止められずに壁に衝突した。

 ミシミシと体が軋むが、体を強化しているためケガはない。



「やっぱり力押しは無理みたいですね。だったらッ」



 もう一度、魔法を使い、高速で接近する。

 立ちはだかる盾で視線が途切れた瞬間、盾の外側に横移動、ナティ先生の背後を目指す。



 ナティ先生は強いです。

 この動きも読まれているから対処してくるでしょう。

 そこが狙い目です。

 振り返って対処する瞬間にスピードを上げれば……


 ……あれ?


 なんでいつまでたっても後ろを取れないんですか‼

 というか、それ以前に盾の横に回り込めない‼



 周囲の景色がぐるぐると移り変わる中、ナティの盾はユニを捉え続けている。



 筋力でナティ先生に勝てないにしても、速さなら勝てると思っていたんですが……。

 そんなことはなかったみたいですね…。

 でも、ナティ先生が持っている分厚い盾は重たい。

 だったら突然の切り返しには反応できないはず‼



 右回りし続けていたユニは、足元に摩擦増加の魔法を使い左回りに移動、体を回転させて剣を全力で叩き込む。



 …………ッ‼見えた‼ナティ先生が違う方向を向いてる‼今だッ‼



 ゴスッッッ‼



 鈍い音がしてお腹に激痛が走る。

 盾の後ろから表れたナティ先生の右拳が私のお腹に突き刺さり、私の体がくの字に曲がる。



「くはッッ‼」



 スピードが仇となり、私のスピードとナティ先生のスピードで加速された拳が、私のお腹をメリメリとえぐる。

 一瞬動きが止まった後、ナティ先生が拳をそのままの力で振り抜く。

 私は地面を跳ねるように転がった。



「スピードはユニの専売特許ではない。

 対処される可能性を考慮すべきだ」


「うぅ、はいぃ、…………………おええぇ」



「「「あっ」」」



「少し強すぎたか………いや、これぐらいは受けられるようにしないとだしな」


「や、ヤバイ、ユニが殺される‼」


「ユニちゃんが死んじゃうッ‼」



 観戦していたツラックとナルミシアが悲鳴を上げた。



「別に殺したりしない。

 それよりもツラック、お前は来ないのか?

 私は二体一で良いと言ったはずだが」


「あー、ちょっとお腹が痛くなってきたんで帰ります」


「嘘をつくな、指輪で嘘をついているのはまるわかりだ。

 ユニのように殴られた後ならまだしも、殴られていないお前を腹痛で返すわけないだろ。

 せめて一発受けてからいけ」


「いやいやッ‼一発で死ぬッ‼余裕であの世に逝っちゃう‼」


「情けないやつだな、それにナルミシア‼

 サボってないで想念伝達(テレパシー)をしろ‼」


「やってますよー、繋げては切ってまた繋げて、ってこれ、けっこう疲れるんですよ‼」


「それしかしてないんだから、もうちょっと頑張ったらどうだ?」


「無理ですー。これが私の限界ですー」


「全く、どいつもこいつも……」



 ナティの指輪が鎧の下で光り、鎧と盾が指輪に吸い込まれるようにして消えた。

 その後、別の指輪が光り始めユニの治療を始めたが、オロロロロと吐き続けるユニを見かねて、今日の練習は中止となった。



「ユニ、大丈夫かな」


「ユニちゃんの柔肌が仇になるなんて……」


「………それにしても今だに信じられないな、あの話」


「悪魔の死骸が埋まってるってやつだね。

 私達三人にだけ特別に教えてくれたみたいだけど、練習に参加しないといけなくなったという。

 ………トイレ掃除も嫌だけど想念伝達(テレパシー)をたくさん使うのもねぇ」


「たくさん使うとなんかあるのか?」


「疲れる」


「………それだけ?」



 ツラックが呆れたように呟いた。


 翌日、ユニは昨日のことなど何もなかったかのように回復していた。

 三人はいつものように朝食を食べるために食堂に集まった。



「ユニちゃん、昨日の大丈夫だった?」


「見ての通りバッチリです。回復の指輪も使ってもらいましたし、一日寝れば大したことないですよ」


「いや、あのパンチは大したことあるだろ。めりこんでたじゃん」


「私はちゃんと強化してましたし、ナティ先生も手加減してました」


「手加減の意味知ってるか?」


「私は大丈夫ですって。それよりも話があります」



 ツラックがウィンナーをつつくのを止めて、肉だらけの朝食から顔を上げた。



「話?」


「昨日あの後、ナティ先生に、バベルにいっしょに行かないかって誘われたんです」


「ええ‼バベルってあの元帥様が住んでるっていうあれ!?」



 ナルミシアがデザートの山をスプーンですくって、口に運びながら、驚きの声を上げた。



「王宮の後ろにあるやつか。一度入れば出れなくなるとかって噂の」


「入った人がいないから、出た人もいないってオチだったような」


「そんな話は知りませんけど、たぶんそれです。

 いっしょに来てほしいってナティ先生に言われたんです。

 もちろん二人がいっしょでも良いとのことです」


「おまけみたいな言われ方だな」


「ええっ‼でも凄いよ‼

 普通は入りたくても入れないのに……これは行くしかないね」


「ツラックはどうします?」


「じゃあ、俺も行くよ」


「三人全員で行くって伝えときますね」



 ユニはバランスの良い朝食を頬張りながら、二人の皿の上を見た。



「二人とも野菜はどうしたんですか?」



 ツラックとナルミシアは顔を見合わせた後、首を横に振って拒否をした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ