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元勇者の先生と勇者になりたい少女  作者: 小骨 武
学校の怪談編
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11. 学校編入


「君がユーゴの教え子で、尚且つ勇者を目指しているという女の子、ユニか……」


「はい、魔法を学ぶために、この学校に編入しました」



 ユーゴがリーナの研究所にいた頃、ユニは王都第一魔法学校にいた。

 編入試験はなく、今日のところは取り敢えず学長のナティ先生に挨拶をするだけの予定だ。



「銀髪の可愛い女の子と紹介を受けていたが、確かに可愛らしい女の子だ。

 勇者になるというのが不安になるぐらいにな」



 男口調で話すのは学長のナティ。

 金髪に鋭い目付き、女性のものとは思えないような筋肉質な腕。

 ゆったりと座っているだけでも鍛えられた体であることが分かる。

 魔法学校の学長なのに魔法よりも筋肉を使っていそうな容姿をしている。



「入学おめでとうと言いたいところだが、勇者を目指している君、つまりユニにはそんな時間はない。

 さっそく魔法の授業といこう」


「あ、はい。よろしくお願いします」



 私はナティ先生の鋭い目付きに終始圧倒されていた。


 ナティ先生はそんなことを気にも留めず、古くさい木製の机を漁って丸い水晶を取りだし、机の上に置いた。



「これは現在の魔力量と魔力の性質を調べる道具だ。

 ここに手を置き、魔力を込めろ」



 言われるがままに魔力を込めると、水晶が光り、ナティ先生と私の顔を虹色に照らす。

 色とりどりに光る水晶は私を興奮させた。



「虹色ってことは、色々な魔法を使えるってことですか!?」


「そうゆうことだ。

 言っておくが別に珍しいことでない。

 魔力量も使える魔法の種類も平均的だ」


「そうなんですか……」


「そう肩を落とすな。欠点がないというのは十分に長所だ。

 努力次第で様々な魔法を使えるようになるし、魔法使いでなく勇者であれば魔法で特別に秀でる必要はない」


「あのー、ちなみに凄い人が水晶に触れるとどうなるんですか?」


「聞いた話では、魔王討伐で大きな功績を上げたリーナは、見ただけで水晶が黒く変色して爆発したらしい」



 鮮やかな色を出す水晶で舞い上がってから、ナティ先生の言葉で逆に落ち込んだ私の頭を、ナティ先生はゴツゴツした手で撫でた。



「よし、私が学校の内部を紹介しよう。だからそう凹むな」



 王都第一魔法学校。


 名前通り王都で一番の魔法学校だ。

 レンガで出来た校舎は時代を感じさせ、道にはタイルがきれいに敷き詰められている。

 広い学校の敷地内には新しく建てられた施設や大魔法を使えるような練習場、ユニや他の生徒の住む学生寮があった。



「明日からユニには特別な授業を受けてもらう。

 ここにいる生徒の大半は貴族で、それに合わせていたら勇者に成ることは出来ない。

 ユニには特別厳しくするように、ユーゴに言われている。

 覚悟をしておけ、いいな?」


「はい、頑張ります。

 頑張ってリーナって人にも負けないぐらい魔法を使えるようになります‼」



  *  *  *  *  *  



「魔法と言っても、これからあなたたちに教えるのは、魔法全体から見れば初歩中の初歩です。

 教えられたことをするだけでは、立派な魔法使いにはなれませんよ。

 この前のテストで点数の低かった人は反省しましょう。

 それでは今日からは火の属性魔法を……」



 ふあーっ、と欠伸をしそうになり、途中で噛み殺す。

 後ろを振り返ったカサミナ先生に、真面目そうな表情を向けた。

 私の座っている窓際の席には、太陽の心地よい暖かさと仲睦まじい小鳥達の歌声が押し寄せる。


 ナティ先生がここは貴族の学校と言っていたが、数日過ごすうちに、私にもその言葉の意味が理解できるようになっていた。


 レンガでできた学校。

 歴史を感じさせると言えば聞こえはいいが、それほど長い間建物にお金を使っていない、使えるお金がないということ。

 何故お金が無いかというと、お金を持っている貴族の親なら家庭教師を雇うので学校に行かせないから。


 そうでないここの貴族の人達は、親にお金を恵んでもらえなかったか。

 または、親がお金は無いのに貴族としてのプライドを持っていたかのどちらか。

 そんな人達が集まる学校は王都で一番と言えど、お金も親の圧力もないから形だけのものになるということですね。


 飛び立った小鳥のカップルがデートを終えて帰ってきた。

 ちゅんちゅん、と小鳥が軽やかに鳴けば、私の意識は薄らいでいく。


 一般的な子供は働くから学校に通わない。

 でも、お金に余裕のある貴族の親は学校に通わせない。

 通うのは、退屈な授業を、周りで私と同じように欠伸しながら聞いている貴族の三男の人達ぐらい。



「はい、ユニさん、炎の属性魔法と……」



 話を聞いていなかったが、先生の出した問題の答えを言う。

 何事もなく授業が進んでいるので合っていたことがわかる。



 一番の問題はこの退屈な授業。

 小鳥が遊んで帰ってくるまでの間、ほとんど同じ内容を難しく言い換えているだけで、話が全く進まない。

 時間をこんなにかけておいて驚くほど授業の内容は薄い。

 実技で魔法の練習がなかったら間違いなく休んでますね。

 ユーゴはなんでこんなところに私を通わせてるのか……。


 退屈な授業が響き渡る鐘の音で終了し、やっとこの時間がやってきた。

 ナティ先生の個人授業だ。

 ナティ先生は筋肉質な見た目通り、剣術や体術等を教えてくれた。



「遠慮せずもっと全力でかかってこいッ‼」



 私は息が上がり、剣を持つ手が震えているのに、ナティ先生は涼しい表情で剣を構えている。

 身体能力向上(ブースト)を使ってもナティ先生には全く敵わなかった。



「そろそろ魔力が切れる頃合いか。

 この辺りで今日の授業は終わりにしよう」


「……ありがとう……ござい……ました……」


「その程度では魔王を倒すなんて、夢のまた夢だ」


「……頑張り……ます……」



 ユーゴに習ったありとあらゆる剣技をぶつけても、息1つ切らさないナティ先生。

 息を整えて質問する。



「前から聞きたかったんですけどナティ先生って何者ですか?

 先生の剣術は魔法とは関係ないですし、それなのに何で魔法学校の学長をしてるんですか?」


「えっ、……まさかッ!?……ユーゴから聞いてないのか!?」


「友人と言ってました」


「はぁ、あいつは何をやってるんだ……。

 仕方ない、改めて自己紹介といこうか。

 私は現在ここで学長をやっているが、その前はユーゴと共に魔王討伐私をしていた。

 盾で後方の強力な魔法使いを守っていた。

 人呼んで『黄金の守護者』だ」


「……………そうだったんですか……」



 金色の髪を揺らして筋肉質な体で胸をはり、金色の瞳で微笑んでいるナティ先生はかっこよかった。

 ユーゴよりも勇者っぽかった。



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