第五話 勇気
ここは、前いた学校じゃない。大丈夫。
柚葉は、心の中で何かを決意するよう自分に気合いを入れ勇気出して頼んでみよう。
「あの……」
「…………」
匠に声をかけたけど返事がなかった。不思議に思って横から匠の顔を覗き込む、じっと下を向いたまま考え事をしているように見えた。
「あの……匠……君」
「え!? 僕!?」
「あの……学校の事……教えてくれる?」
勇気を出して、頼んでみた。
「あ、あの……匠君?」
「え!? あ、いや。うん。僕でいいなら……」
「良かった……よろしくね」
強引だったかな?
でも、何故だか匠君に案内をしてもらいたかった。
「柚葉ちゃん俺も一緒に案内してあげるよ」
「えっと……」
「あ、俺は佐藤光。匠とは幼馴染だよ」
「あ、そうなんだ……うん。よろしくね光君」
匠君のお友達の光君はとても明るく面白い子だなぁと思った。
「光君、この学校のお気に入りの場所は?」
「ん…… ボクは広い運動場」
「運動場?」
「そうだよ!」
想像してなかった答えに、びっくりしたけどこの明るくとっても賑やかな光君と打ち解けるのに時間はかからなかった。
「ねぇねぇ、運動場で何するの?」
「ドッヂボールやサッカー」
「運動が得意なの?」
二人で楽しそうに話し合う間に匠君が話を合わせるようにかつ割り込む様な感じで言葉を繋ぐ。
「勉強はダメだけどな」
「それを言うなよ!」
光君と匠君のやり取りを見ているのも楽しかった。今まで味わったことのない当たり前な学校生活に心を踊らせていた。
転校してきた学校で、新たな生活が始まった柚葉。この先は……
楽しみにしてくださったら嬉しいです。
読んでくださった皆様、ありがとうございました。
by 菜須よつ葉