第四話 新しいモノ
「え? あ、うん。よろしく」
彼女の可愛らしい声と笑顔に、僕は火照り始めた顔をあげられず下を向いた。
すぐに背中越しからガサガサと周りに気をつけながら荷物を机に入れているような控えめな音が聞こえて来た。
「どうした匠。顔が赤いけど体調悪いのか?」
隣の席で、幼稚園時代からの幼なじみ佐藤光が顔を覗き込むように言ってきた。
「そ、そんなことないよ。大丈夫」
顔を見られないように、さっと反対側に背けながら答えた。
「そうか?」
光はまだ納得してないのか不思議そうにしていたけど、すぐに違う友達に話を振って話題を変えていた。
他のクラスはどうかわからないけど、僕らのクラスでは席順をくじ引きで決める。だから隣も前も誰になるのかわからない。もちろん男女バラバラに座ることになるから、あまり女の子と話す事が得意じゃない自分にとって横に光がいて、前に男の友達がいるのは凄く有りがたい事ではあるんだけど……
窓際の席は人気がある。僕も初めて窓側になった時はすごく喜んだ。でも今まで一つ後ろの席が空いたままで少し寂しく思っていたりもした。
そんな気持ちも今は後ろに居る一人の女の子によって掻き消えた。いや消し去ってくれたのだ。
「あの……」
これから先の学校生活が少なからず変わって行く予感がしてワクワクしていた。それにそわそわする気持ちもある。
――だって女の子だし……
「あの……匠……君」
「え!? 僕!?」
考え事していた僕は後ろから聞こえる言葉にビックっとして前を向きながら体を震わせた。少し間をおいてゆっくりと振り返る。
「あの……学校の事……教えてくれる?」
少しウルっとした瞳で見つめている松岡さんをじっと見つめ返す。どう返事したらいいのか分からずに固まった。
「あ、あの……匠君?」
松岡さんは少し顔を赤らめながらもじっと僕からの返事を待ってくれている。
「え!? あ、いや。うん。僕でいいなら……」
「良かった……よろしくね」
またあの笑顔で見つめてくる松岡さんを見るとドキッとする。
――何だろう……この感じ……
ドキドキとするような、それでいてチクッとするようなこの胸の感覚は何だろうか……
前に顔を戻して考えていたけど纏まらない。
「柚葉ちゃん俺も一緒に案内してあげるよ」
僕の横から聞こえた声は光のものであった。僕は凄い勢いで隣に顔を振り光の事を見つめた。
「えっと……」
「あ、俺は光。佐藤光っていうんだ。柚葉ちゃんよろしくね。匠とは幼馴染なんだよ」
――ゆずはちゃん? 今日あったばかりなのに……
後ろを向いていないので良く分からないけど松岡さんの声は少し震えている感じがした。隣の光はやけに元気だけど。
「あ、そうなんだ……うん。よろしくね光君」
声しか聞こえないけどたぶん松岡さんは光にもあの笑顔をみせてるだろう。
ズクッ
ンッ!!
僕の胸に新しい感覚が生まれた。
お読み頂いている皆様に感謝をm(__)m
早くも第四話となりますColorですがお楽しみいただけているでしょうか?
ゆっくりとですが確実に進行して参りますのでよろしくお願いいたします。
次回は(柚葉side) byよっちゃんです(*^^*)