第十五話 なんだこれ
僕は悩んでいた――
お母さんが勝手に付けてしまった、拾ってきた子猫に付けた名前に関して。
――う~ん。名前を聞かれたら正直に答えるしかないかなぁ……
腕を組みながらてくてくと毎日通いなれた通学路を歩く。
横にはもちろん光もいて、いろいろと話しかけてきている。やれ昨日のテレビ番組がどうのとか、今日の給食が楽しみだとか。僕にとってはそんな事はどうでも良かった。何より困るのは子猫に関する名前で、自分から飼うといった以上は名前を付ける事は当たり前で、お母さんがどうしてそんな名前を付けてしまったのかなんて理由を聞かないまま今日を迎えてしまった。
実際には何度か聞こうと詰め寄ったけど、そのたびにうまくかわされたというか、誤魔化されたというか……。 その攻防は今朝家を出るまで続いたのだけど、どうしても教えてもらうことが出来なかった。
「おい匠!!」
――う~ん……
「匠ってば!!」
隣の光から肩をつかまれながら揺らされる。
「え!? な、なに?」
ビックリしながら振り向いた。
「何って……聞いてなかったのかよ……てか、さっきから何を考えてるんだ?」
「何って……別に何かを考えているわけじゃないけど……」
光からの質問に焦りながら視線を外して答えた。
「ふ~ん……まぁ、いいけどさ」
それ以上聞かれることが無くてため息をついた。
すぐに光は違う話題を振ってきて、今度は内心では何かを考えていることを悟られない様に注意しながら返事をかえす。学校に着くまえから少し精神力が削られた気がした。
「おはよう」
「おっす!!」
学校について教室に二人そろって入って行くと、クラスメイトから朝の挨拶と共に何人かの男子に囲まれ、そのままの状態で自分の机へと移動していく。ランドセルを背中からおろして机に置き、いすに座って一息ついて教科書などを机に入れようとした時に後ろから声を掛けられた。
「おはよう匠君」
「え、あ、松……」
声のする方に振り向いて返事をしようとしたら、そこには「む?」ッというような表情をしながら机に座った柚葉と、首をかしげてこちらを見つめる果桜の姿があった。
「ん?」
柚葉のその表情を見て昨日の事を思い出す。たぶん……いやきっとこ゚の顔は「まさか松岡さんとか言わないよね?」っていう顔だ。そして挨拶の途中で言葉を切った僕に対して不思議に思っているだろう果桜の姿。
――ごきゅっ
一度口を閉じてから唾を飲み込むと、 覚悟を決めてその後を続ける。
「お、おはよう。ゆ、柚葉?」
――!!
――!?
その言葉を聞いた二人の表情が直ぐに変わった。
柚葉の方は何故疑問形なのかという感じの顔で、果桜の方は突然呼び捨てにしたことを驚いている顔だと思う。直接聞いたわけじゃないから分からないけど……そんな感じがした。
「え!! え!? なんで!? いつから!?」
果桜の方は僕と柚葉の顔を交互に見ながら大げさに驚いている。
「えへ……」
柚葉はなぜか俯いてしまってその後何もいわなくなった。
ーーなんだこれ……めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど……
僕はそのまま何も言わない柚葉から顔を戻して、何も言わずにランドセルから教科書などを机にしまい込んだ。
なにやら果桜が後ろで柚葉を質問責めしているようだけど、聞いてないふりをするのが精いっぱいだった。
お読み頂いている皆様に感謝を!! m(__)m
前回は菜須先生に書いて頂いた(匠side)ですが、今回は戻って頼庵が書きました。どうでしょうか?
やはり文章体などに違いがありますかね?
実はちょっとした手違いで書いて頂いたのですが、そのままボツってはもったいないと思いまして、そのまま掲載することにしたので、自分の番は一回お休みとなりました(^_^)
菜須先生の書いた匠もお好きになって頂けると嬉しいです!!
え? 自分は柚葉sideを書かないのかって? そんな需要ないでしょう(笑)
時間的余裕などが有れば書くかもしれませんけどね(*^^*)
by 藤谷 K介
次回はちゃんと菜須先生の(柚葉side)です!!




