修学旅行 上編 三分の一
この小説の作者は二人おり、リレー小説という形で書き進めています。
作者の一人、babaroの自分勝手な妄想が大半ですがよろしければどうぞ。
僕は由衣と佳林に別れを告げ、男湯に入っていった。
「由衣さん? やっけ? お兄ちゃんからときどき話聞くよ」
佳林は由衣の胸元に目を一瞬向けて言った。由衣はどぎまぎしながらも尋ねた。
「babaroaくんはどんなこといってたんだろ? 私気になるかも……」
少し考える佳林に緊張の面持ちの由衣。佳林は手を頭の後ろに置きながら、「ごめん。今、温泉のことしか頭にないや」と軽く舌を出して微笑んだ。
脱衣所の籠に衣類を畳みながら、そそくさと放り込む佳林と対照的に由衣は脱衣所をきょろきょろと見ていた。
「どうしたん? 由衣さん、目のやりどころ気にしてもしかして、私の身体に見とれちゃった?」
佳林は由衣の肩を軽くたたいた。由衣はビクリとして佳林の方に目を向けて、自分の前で気にせず裸を晒している佳林にさらにビクリとしたのだった。
心配そうに上目遣いに見つめる佳林に由衣は心の中で[それ、babaroニアでは履いてないって意味だから]と呟き。
「いや、たしかにそうだけど」と言った。佳林は何か心得たような顔をして不気味な微笑を浮かべた。
「由衣さんにそんな趣味があったとは、私知らなかったな~。で私ばっか見られてて恥ずかしいから、由衣さんも脱いじゃおっか!」
「それ、ナイキじゃん」と佳林は言う。
ちょっとクスッと笑うと「それかっけぇ」
「え? マジ? でしょ~400円もしたんだよ」とクスッと笑うと「ささっ脱いで由衣さん~」と促す。
「今の時間は普通混んでるんやけどね~今日は閑古鳥が鳴いてるで~」
佳林の無邪気な笑顔に根負けして佳林は脱ぎ始めた。
「ささっ!入ろ由衣さん、白!由衣さん~白いね」などと話していた。
一方その頃、キャッキャうふふしてる頃babaroaくんと先生は隣の「白い肌、綺麗」などの声が聞こえる中、無言で温泉に入っていた。
「背中洗ってあげる」
佳林は由衣の背中をごしごし洗い始めた。由衣は最初ばかりは照れていたが、心地よくなってきたようでふわふわしていた。
「えい!」
佳林は隙を見つけたようで由衣の大きめな胸を鷲掴みにした。
「えひぇ! や、やめてよ。佳林ちゃん」
抵抗しようとする由衣に佳林は掴んだ手を放そうとせず、細い指をごそごそと彼女の胸に這わせた。
「どうやって大きくしたのか? 教えてくれな~いおねぇさ~ん」
「やめてって! 私のは遺伝、遺伝だよ」
逃ようとする由衣と絡みついてくる佳林、捕食されるものとされるもの関係に似ていた。
「それに小さめの人が好きな人もいるから、佳林ちゃんはそれでいいと思うから!」と言いながら踏み出した足元には薄くなった石鹸があり、それは案の定、由衣に踏まれて彼女は転びかけた。
「由衣さん、危ない!」
由衣はさっきから危険な目にあっているという思いを隠し、佳林の手を握った。
「あ!」
「え!」
あろうことか握った佳林を道ずれに温泉の中に大きな音を立てて落ちて行った。
「佳林ちゃん、ごめん」
顔を真っ赤にした由衣に佳林は「こちらこそ、助けられんでごめんな。胸も体重の一部やしな」と言うと口までお湯に浸かり、ぶくぶくと息を吐いた。
由衣はいつからここで働いてるのと尋ねたが佳林は、ちょっと考えてから「う~ん3か月位かなその前は海賊船に乗ってた」と意味の分からない言葉を発した。
「海賊船?まさか悪名高きbabaroニア宇宙海賊?まさかいたとは……」
「ちゃうちゃう、babaroニアって何処?まぁ海やで、しかし大きいな~」と佳林は由衣の胸を見て言った。
「もう見ないでと」由衣は言う。
「ここのコーヒー牛乳あれやでうまいで、上がったら、飲もうお兄ちゃんと一緒に」と言う。
一方その頃babaroaくんは「あっちは賑やかですね」、と先生に言う、先生はコクリと頷き、「もう上がる」と言ってそそくさと出て行ってしまった。babaroaくんもそろそろ出ようと思ってた脱衣所に向かう。
先生は着替え終え二百円のマッサージチェアに居座っていた。
babaroaくんが脱衣所から出たとき丁度、由衣と佳林は出てきた。
「お兄ちゃん、これあげるわ」
手渡されたのはコーヒー牛乳。僕は蓋を開けそれを飲み込もうとした。
「はやい! 待ってお兄ちゃん」
佳林と由衣も瓶を持っていた。
「かんぱ~い」
両手に花ってこのことだねと僕は思いながら、飲み干した。
外はもう日が沈もうとしていた。薄暗い中、僕と由衣と先生は自宅に帰る佳林を見送ることにした。
「別に見送りなんかいらんのに」
なんて言いながら佳林は少しうれしそう。
「うーん、佳林ちゃん。これあげる」
由衣がかばんの中から取り出したのは誕生日に両親からプレゼントされたという、顕微鏡だった。
「寂しくなったらこれを見て私を思い出してほしい」
「寂しくて泣きそうでもこれ見たら、たしかに涙と止まるわ。ありがとな、由衣さん」
顕微鏡を大事そうに両手で抱える佳林に僕はツッコミを入れたかったが、そんな間もなく彼女は自転車に乗りあっという間に見えなくなっていった。
「そろそろ、女将さんが呼びに来てくれるんじゃないかな?」
先生が団扇を扇ぎながら言った。
「部屋に戻っときましょうか」
僕たちは旅館内に戻ることにした。
「私はモス御前が食べたいな」
旅館の廊下で言った由衣の言葉に僕と先生は「まだ引っ張るのか!」と息ぴったりで言った。
「お腹空いたね」と由衣は上目遣いで言った。
「またかよ由衣」とbabaroaくんは言う。
「ねぇご飯までピンキーちゃん見に行こう」とbabaroaくんの袖を引っ張り行くことにした先生は暇を持て余したのかついて行った。
「あれ?いないよピンキーちゃん?」と言ったが後ろから女将さんが笑顔で「ご飯の準備ができましたので大広間へどうぞ」と呼んだので行くことにした。
招かれた大広間は僕ら三人が使うにはもったいないくらい広く、正面には宴会などで使うのかステージまで用意されていた。その部屋に食事が用意されていて、僕たちはそれぞれ席に着いた。
「いただきます!」
先生は「二人がいなければ、ビールに枝豆なんだけどなぁ」と麦茶を流し込んだ。
「babaroaくん、この刺身とっても脂が乗っていながら、独特の魚臭さもなくてとっても美味しい!」
由衣はほっぺを押さえながらにこりとしていた。
「お、そうなんだ。僕も食べてみよう」と刺身が舌先に触れた瞬間、びびっときた。この新鮮さと活きの良さは、そう由衣が愛でていた[ピンキーちゃん]に違いなかった。なんだか複雑な気分の僕に「涙目だよ、わさびつけすぎた?」となんて言いながら、由衣はピンキーちゃんを口に入れて、なおもほっぺを押さえていた。
しばらく食事をしていると僕はあることに気付いた。
「先生の隣、食事がありますけどどなたか来られるんですか?」
その質問に先生は少し思案したあと「いや、うちの学校の人はこないよ」と隣の食事を見つめながら言った。
「見て―、二人とも~。私歌うよ~!」
僕と先生の目線の先にはステージの上でマイクを持った浴衣姿の由衣の姿があった。
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