修学旅行 中編
この小説の作者は二人おり、リレー小説という形で書き進めています。
作者の一人、babaroの自分勝手な妄想が大半ですがよろしければどうぞ。
「あと待ち合わせまで20分か」
鳩時計に電池を入れ空港にある時計と合わせてる由衣が言う。
「明日帰っちゃうんだよね」と呟くとbabaroaくんはちょっと寂しい気持ちになったが由衣は構わず「スゥタバァ行ってないね」と言う。
「テイクアウトでコーヒーを頼むことにしよう、待ち合わせ時間までぴったりだと思うんだ」と言うとパチン! と指を鳴らして由衣はまた手を握りスタバまでbabaroaくんをリードして行った。
案の定空いていたが時間が無いと思うや否や、難しい名前のドリンクを2つ頼み、待ち合わせ場所まで早歩きで行った、時間ギリギリになってようやく着いた。先生は独り空港内で、待ち侘びて居るようだった。
「待っていたよ」
先生は僕らをフードコートの椅子に腰かけるように促すとスマートフォンの充電器をさしだした。
「二人ともこれは何だと思う」
いつもより深刻そうな先生に僕は思ったまま「充電器ですかね?」と言った。
「Anker製のプレミアムライトニングUSBケーブル 【iPhone X/8/8 Plus 対応/Apple認証】コンパクト端子 (ホワイト0.9m)ですよね」
由衣は先生を睨み付けながら、早口で話し終えると掛けてもいない眼鏡を持ち上げる仕草をした。
「何故、充電器に詳しいのか、それは先生訊かないでおくよ。それよりこの充電器持ち上げてみてくれ」
僕はテーブルに置かれた充電器に手を伸ばす。
「これ何でできてるんですか?」
先生に尋ねると「ゴルゴーンに石化させられた充電器らしい」と一言。
僕はそのカチカチに固まった充電器をこれでもかと凝視した。その隣でスタバで買ったコーヒーフラペチーノを飲みながら僕を眺める由衣。
「ほんとにカチカチだ…ゴルゴーンってほんとにいるんだ」
驚いてその先の言葉をなくした僕に由衣が一言。
「私がbabaroaくんだけのゴルゴーンになっちゃうから☆」
由衣の言葉に先生は少し考えた後、「今夜はほどほどにな」と言いながら充電器をしまった。
移動用の小型のバスに揺られ数分、僕たちは目的の旅館に到着した。
もしも、僕の学校が一クラス数十人規模学校ならば来ることはなかっただろう、日本庭園を有した趣のある旅館だった。
「私、夕飯はモスバーガーが食べたい!」
無邪気に石段を上る由衣に先生は「モスもいいけどもっとおいしいものが食べられると思うぞ」と旅館の扉を開けた。
「ようこそ、おこしくださいました」
迎えてくれたのは四十代くらいの着物の女性だった。
「わたくし、女将の恵実と申します、遠くからきて疲れたでしょ、ゆっくり休んでくださいね」と僕たちに言った。
僕は熟女特有の目尻の皺のいやらしさに今更になって気づき、心躍った。
しかし、恵実さんは左手の薬指に指輪をしており、なおかつ付き合うと遠距離恋愛になる。だが、僕は旅館の女将のような一期一会を大切にする職業は大好きだし、片思いの女の子に無視されながらも三か月間一方的に手紙を送り続け、文通をしたことは、babaroニアでうわさが絶えない程である。なので恵実さんとの一線超えた大人の恋も視野には入っていたが、恵実さんのお婿さんや旅館の従業員さんのことを考えると胸が痛むのでこの恋は墓場まで持って行くことにした。
旅館の中に歩を進めると巨大で綺麗な水槽に由衣は「あっ! 何この魚ピンクだね」と由衣は言う「ピンキーちゃん、可愛いね」
babaroaくんの袖をつかんで言う。
「お! 見事な鯛だね由衣食べちゃダメだぞ」
「食べないよ~~~可愛いもん」と由衣は頬を膨らませ言う。
女将さんは「部屋へと案内しますので」と慣れた感じで廊下へと踵を返した。部屋に案内されると「お食事は大広間にて用意ができ次第お呼びに参ります」
女将さんは笑顔で言った。由衣は一人部屋へと「また後でね」と一言言うと駆け込んでいった。babaroaくんは先生との相部屋であったが、見事な畳の臭いに日本人として生まれてよかったと思うひとときであった。窓辺からは日本庭園を拝める、なんとも贅沢な部屋であった先生は「やっと落ち着けるな~」とbabaroaくんに言うbabaroaくんは「そうですね今日は疲れました」と言った。
部屋に着いた由衣は荷物を置き、借りた上着を部屋の隅に畳まれた布団の上に広げた。由衣は一瞬ためらった後、そこに飛び込んだ。
「babaroaくん…振り向いてよ…本物の私は誰なの?」
由衣は溜め息を漏らすと借りた上着に顔をうずめた。
それは一年前の話になる。
「babaroaくん、私とお寺巡りに行かない? この前のbabaroaくんがすきなアニメの舞台になった場所にも行く予定なんだよ」
玄関の扉を開けた僕に由衣は間髪入れずに言った。
「いいね、じゃあ今日はお寺巡りデートだね」
「うん!」
由衣はカメラを構えて一枚目に僕を撮った。
着いたのは由緒正しきお寺だった。由衣はカメラのレンズをあちこちに向けて幸せそうな顔をしている。
「babaroaくん次あっちいこ!」
僕の手首を握り彼女は真っすぐに走ってゆく。引っ張られて走る僕を他所目に由衣はくすんだ大仏の前で立ち止まった。
「私こういう歴史的なものを見ると昔の人ってどうやって、今の人々も魅了させることができるものをつくったのか。すごく興味が惹かれるんだ」
由衣は大仏の周りを一周して、僕の前に戻ってきた。
「そうだね、今より技術が進んでいないのにここまでのものをつくるって簡単ではないだろうね」
僕は頷き、「お土産みたいんだけど、一緒にきてくれない?」と近くの売店を指さした。
「由衣はお土産買ったりしないの?」
「お土産か~、私はこれに全部残すから」
自慢のカメラを由衣は掲げた。
「そっか、由衣らしいね。あ! これ」
僕は売店でこの付近が舞台になっているアニメのグッズを見つけ声を上げた。
「お、見つけたんだ。babaroaくんにおすすめされて私もアニメ全部観ちゃったよ」
由衣はアニメキャラのキーホルダーを手に取り言った。
「そのキャラを手に取るとは由衣もセンスあるね」
「そっ、そうかな?」
由衣は照れてそのキーホルダーを見つめた。
「うん、だってそのキャラはいわゆる不思議ちゃんっていうのかな? まわりの空気を気にせず話しだしたり、予想もできない行動をしたりするんだ」
僕は同じキーホルダーを手に取った。
「babaroaくんはそういう娘が好きなの?」
「そうだね、このキャラは嫁にしたいね」
冗談っぽく笑う僕とキーホルダーのキャラクターを見つめたままの由衣がいた。
「私はどうすればいいの?」
しんと静まり返った部屋に「由衣もう準備できた?」と部屋の外から声が聞こえ、由衣は薄暗い部屋の扉を開けた。
そこには、浴衣に着替えたbabaroaくんが居た。
「今から温泉行くでしょ」とbabaroaくん。
「ちょっと待ってて」と由衣。数分たったころ、旅館の浴衣に着替えた由衣が出てきた。
「一緒行こうか」とbabaroaくん、由衣は続ける。
「一緒に入るの?恥ずかしいな」
どこをどう勘違いしたのか、混浴だと思ってるらしい、修学旅行で混浴はないだろう。
「男女別だよ」とbabaroaくんは言う。とそこへ仲居の着物を着た、此処のバイトの子らしき人物が「やっぱり居たお兄ちゃん」と背後から声を掛けてきた。
去年「海賊王になる」と書置きし、なんの音沙汰もなく消えた、身長も相も変わらずちび助の佳林が居た。
「やっぱり来てたんだね~、久しぶりやん、今からお風呂かいな?やっと仕事終わったし、一緒に入ってええかな」と佳林は言うと由衣は驚いた様子だった。
佳林はbabaroaくんに「海賊王にはなれんかったよ~」と笑いながら言った。
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