第7話 冒険者登録
説明回
イフリートに負けてから3日が経った
俺は今、冒険者としての訓練をしている
異世界系ラノベとかでよく見られるあの冒険者だ
なぜそんなものがあるかというと「過去に来た異世界人が作った」とか何とか
詳しくは教えてもらってないが、やることは魔物退治や薬草や鉱石の採集に旅商人の護衛など、便利屋みたいな扱いをされる冒険者だ
何故そんな冒険者になることになったかと言うと
「自分の食い扶持は自分で稼ぐものじゃぞ」
などと言われ「他に仕事は無いのか?」とか細かいやり取りはあったが、この場では割愛させていただく。
とにかく冒険者になると決まったら冒険者ギルドへ向かうかと思ったんだが、
文字も言葉も通じない状態では冒険者になれない
そのため言霊の魔法(通訳の魔法)を習得するついでに冒険者に必要な訓練をしている訳だ
午前中は魔法の基礎訓練、午後は戦闘訓練、夕食を終えてから異世界の基礎知識の学習、これを3日ほどやったらしい
ここで疑問に思ったかも知れないが、らしいと言うのは3日経った実感があまり無いからだ。
と言うのも俺がこの世界に来たのが夏至の日で、この地域では白夜(太陽が沈まない)期間にあたり、日が沈まないため3日たったと頭では分かってるんだが、実感として夜暗くなってまた太陽が昇らないと1日たった気がしないのだ。
夏至から数えて1週間は完全な白夜らしいのであと3日は太陽が昇り続ける
そのあとも夏至から数えて1ヶ月ほどは太陽が殆ど沈まないらしい
そんな地域なので夏と言っても日本と違い、気温は春から初夏ぐらいで
天気が悪い日や朝晩は肌寒く感じる程度だ。
運動するには丁度いいぐらいの季節かね?
それとは関係ないんだろうが生まれ変わったこの体はデメリットを考慮しても相当のチート性能だった
一日で魔法の基礎を習得し、二日目で言霊の魔法を覚えた、三日目で初級攻撃魔法を習得
他にも反復練習が必須な近接戦闘の攻撃と防御は二日で冒険者として上位レベルに仕上がった
それもこれも戦闘用ホムンクルスとしての性能で可能としているらしいが化け物に変身とかは出来ないらしい
この異世界の基本知識も補助AIのエイがいるので覚えることも少なかったが
そもそも他の異世界人がこの世界を発展させていったようで
歪ながらも元居た世界に近い文明水準になっている
歪なのはこの世界に来た異世界人の個々で知識に偏りがあったからだと思うが
それにプラスして魔法がある影響なのは間違いないだろう
というのもこの世界、魔法が万能すぎるのだ
どれぐらい万能かというと戦闘から生活まで幅広く使える他、戦闘中に武器を落としたら拾うのも魔法(魔道具)ときたもんだ
「魔法の質でその人の人生が決まる」といった言葉が出てくるほど万能だ
そんな魔法の練習四日目の訓練は魔法の精密作業だったのだが、
ここに来て問題が発生した
「魔法を放つのはイメージなのですからイメージを強く持ってください」
魔法の授業は以前に紹介されたメイド二人が担当している
「なんでこの距離で外れるんですか!的も人より大きいゴーレムなのに!」
そんなこと言われても既に強くイメージしているんだが、どうしてもな
やっぱイメージが悪いんだろうな、俺のイメージはアレがあるからイメージがね
「うーん、トウヤ様この石を的に投げてみて」
メージュに言われて渡されたのは投げるのに丁度いい大きさの石
言われた通り投げるがやはりはずれる
「ノーコンなんだね」
「そうだよ、ノーコンなんだよ悪いかよ」
「ノーコンでもイメージには影響ないはずなんですけど、何ででしょうか?」
《ノーコンのイメージがそのまま魔法に出ています、恐らくノーコンを直すまで魔法はこのままでしょう》
エイの言葉は俺と製作者のデドラにしか伝わらないので俺が代わりに伝えると
「私たちよりエイ様のほうが詳しいのでエイ様がそういうのでしたらそうなのでしょう」
そのあとは投擲訓練と魔法訓練を交互にやったがうまくいかず昼食となった
この後はいつも通りだったら異世界の知識の勉強だったのだが、
今日は予定を変更して冒険者ギルドに登録することになった。
ギルドに登録するために初めて屋敷の外に出たが思ったより人が多く、たまにエルフ、獣人、ドワーフなどの亜人種なども見かける
案内は赤髪メイドのペイナと青髪メイドのメージュの二人
俺が異世界に召喚されてからこの二人のメイドを専属で当てられたようで、何かあれば二人が付いてくるのだが・・・
二人が美人すぎるのか結構な人がこちらを見てくる
中には拝んでる人もいるぐらいだ
エルフも想像通り美人なのだがエルフにはない巨乳でスレンダーな体型のせいか、エルフより美人に見える
そんな二人を左右に侍らしている(様に見える)俺は嫉妬の対象になってるようで殆どの男に睨まれながら冒険者ギルドに到着した
ギルドの中は半分が食堂で、もう半分が役所みたいな感じになっていて結構混んでいるがメイド二人が姿を現すと一人のギルド職員と思わしき女性が近づいてきた。
「はじめまして、私は冒険者ギルド案内役のアンナと申します。今日はどういったご用でしょうか?」
「はじめまして、私はヴォイニッチ家の戦闘メイドのペイナです、同じメイド服を着ているのは戦闘メイドのメージュ、そして私たちの真ん中にいるのは此方で保護している異世界人のトウヤ様です。
今日はトウヤ様の冒険者登録に参りました。」
「承知いたしました、こちらで話すのもなんですので個室へどうぞ。」
案内された個室は少々豪華な感じのする部屋だった
俺が案内されるがままに着席したがメイド二人はそのまま後ろで待機しているが落ち着かない
「トウヤ様でしたね?まずは異世界人かどうか確かめるために幾つか質問しますが、よろしいでしょうか?」
質問内容は簡単に生年月日(西暦)、出身地(国と都道府県までで市町村などは無し)、あとは天体の知識などを聞かれた
生年月日や出身地はともかく天体の知識なんて学校で習ったことすら覚えているか怪しいのだが、エイが記憶していた天体情報を教えてくれたおかげで答えることができた
「ありがとうございます。質問は以上です、答え合わせと景品をとってきますので少々お待ちを」
そのあと答え合わせの景品を贈られたのだが豪華すぎてビックリする内容だった
「お待たせしました、トウヤ様が異世界人であることが認められました。これは帰還希望者達が書いた希望の書(日本語版)です。
帰還希望者とはそのままの意味で地球に帰りたい人たちのことで、その本は地球に帰るための必要な知識の一部が、他には帰還のため作成された道具などの紹介なども書かれています」
「帰るのに必要な知識の一部?」
「そうです、帰るために必要な知識は全てそろっていないと帰還希望者達は考えていますので一部という表現になっております。それとこれは帰還用に作った道具の副産物の一つとして有名なアイテム袋です。
その袋一つで家一軒分の収納力があり、とても重宝するのでどうぞお受け取りください。」
「くれるってんなら貰うけど貴重なものじゃないのか?」
「はい貴重なものです、売値にすると金貨100枚ほどでしょうか、他には懐中時計と金貨200枚ほど冒険者ギルドから支援として出させていただきます。
懐中時計はトウヤ様の名を刻むので明日以降に来ていただいたときにお渡ししたいと思いますがよろしいでしょうか?」
「支援ってことは後で返さなきゃいけないのか?」
「返していただくのは金貨200枚を無利子無期限で自由に返してくださって結構です。他の希望の書、アイテム袋、懐中時計は帰還希望者達からのプレゼントとなっておりますので、どうぞお受け取りください」
おいしい話すぎて疑いたくなるが、冒険者ギルドを立ち上げた創設者が異世界人で帰還希望者として迷い込んだ異世界人を保護し知識を集めるためにも、異世界人の支援は必須らしくどのような異世界人にも程度の差はあれ支援するらしい
その程度の差というのが質問にあった天体の知識で地球の位置を特定できるような知識があれば教えてほしいとのことだった。
現在までに分かってることは希望の書に書いてあるので他に知っている知識があれば高値で買うがいくらになるかは検証しないとわからないということ
「最初の支援の額は先行投資と考えていただければよろしいかと」
簡単な天体知識もなければ額は下がるのだろうがそれでもゼロということは無く一人で一か月はくらせる額が貰えるらしい
「最後になりましたが、これがトウヤ様の冒険者カードになります。
最初ですのでランクFの冒険者レベル0からスタートになりますが、試験を受ければ直ぐにでもレベル10以上、適正モンスターを適正数倒せれば適正なランクにまで上がれるのでがんばってくださいね!」
ここで言う冒険者レベルとはゲームのようなレベルではなく、どの程度冒険者として使えるかという目安を分かりやすくしたもので、強さとは関係ない。
逆に強さに関係するのがランクというもので弱いランクから順にF・E・D・C・B・A・Sとあり、倒したモンスターのランクと同じランクの経験値(功績)が貰え一定数たまるとランクが上がる。
この際にランクFのものがランクBの経験値をためるとそのままランクBとなり、その後ランクBのモンスターに負け続けるとランクCとなったり強さ=ランクに出やすい制度になっている。
「冒険者カードは都市に出入りするさいの身分証明書になるので無くさないでくださいね」
こうして俺は冒険者になることになった
案内役の名前がアンナは我ながら安直ですね