第三談 不思議なもの
白の国 宴会場
何事もなく始まった宴会。そこに集まったのは使徒三十人近くと身なりのいい貴族のような人たち、ついでに使用人が数人いた。
七瀬は代表者的なので、貴族達につかまっていた。
「いやはや、七瀬殿は……」
「実はこんなのがあるんですが……」
「こちら、この国名物の……」
何人もの貴族相手に平気に対応している。さすがの一言。よくもまあ日本人からしてあまり良い印象を受けない貴族と話ができるもんだ。
そのころ、幸野は部屋の隅で食事をしていた。
おお?これ結構いける。何の肉だろ?
この国の飯をめちゃくちゃ食ってる。そんな幸野は誰も見向きもしていないが、一人だけ彼を見ている存在がいた。
「ヤッホー、幸野さん、久しぶり」
「ん?あれ?きな粉ちゃん?!」
そう呼ばれたのは不良女子高生、名前は柿南強狐。聞くだけなら不思議じゃないが文字にして知ると、なんでそんな名前になったか不思議なぐらい変わっている。現代において名前だけでいじめられる人も少なくないが、名は体を現すという。いじめた奴らを全員ボコったそうだ。
「きな粉ちゃんも来てたの?!」
「そう。まあ、さっきちょこっと出たけど……」
「ひょっとしてきな粉ちゃんも何か願いでもあるの?」
「じゃなきゃ来ないでしょ」
乙女にだって願いはある。そんな感じのきな粉。
他愛もない雑談をしていると、徐々に目線が集まるようになった。理由はきな粉が美少女だからだろう。大半の人(主にロリコ……以外)からすればぜひお近づきになりたいだろう。
そして、宴会も盛り上がると一人の真っ白な少女が姿を現した。白一色の服装はこの国の象徴である。すなわち王族。スタイル抜群、年齢から16位の顔立ちだ。
「使徒の皆様、初めまして。私この国の第一王女、フィルモス・ラル・エダリアと申します。今日はわれらの声に応えていただき感謝いたします。ぜひ、今宵の宴を楽しんで下さい」
礼儀正しい王女だった。王様と違い気品のある子だった。この場にいる大半の使徒は王とのギャップとその美貌に固まっていた。そして、思春期の男性陣は瞬殺された。
使徒の大半は成人していないものがとても多く、二十歳を越えているのは、幸野と七瀬の二人だけだった。
「はぁ~意外な王女さん、てっきり父親に似てると思ってたわ」
「……幸野さんって、あ……ああいうのが、好み?」
「ん?ん~性格判断で」
いくら、スタイルよくても性格に難があればお断りだね。いや、でもきな粉ちゃんとはまた別の魅力があるな。けど、なんだろう、いつの間にか使徒の男性ほとんど悩殺されてない?まあ、そんなことより、さっきから変な視線感じるような、気のせいのような……
(うう、あんな感じがいいのかな?やっぱ礼儀正しい方が女としていいのかな?ああ~でもなぁ、前に"ありのままで良い"って言われれたしなぁわからない~)