悪役令嬢のヌイグルミになりました IFメルヘン
ある日、自分がヌイグルミになっていた。そんな馬鹿なと思うでしょうが、事実です。死んだ記憶もないのにな。いつの間にか可愛らしい女の子に抱きしめられていました。
「今日から貴方のお名前はリリーよ。よろしくね」
(とりあえず、ヨロシク。アンジェリカ)
「まあリリー!!貴方、おしゃべりができるのね」
(そうさ。僕は魔法のヌイグルミだからね)
「素敵!!」
「聞いてよリリー。お父様がね、再婚するんですって。嫌だわ。卑しい身分の女を娶るなんて。それにね、すでに弟がいるというのよ。ヒドイでしょ」
(可哀想だね。アンジェリカ。でも、そんな言い方をしではダメだよ)
「そうなの?リリーの言う事はいつも正しいから、そうなのね。ごめんなさい」
(分かってくれて嬉しいよ。アンジェリカ、弟と仲良くね)
「ええ。リリー」
「聞いてよリリー。私、王子様の婚約者になったのよ。王妃教育は大変だけど、頑張るわ」
(すごいね。アンジェリカ。頑張れ!!)
「でね、弟は王子のご学友になったの。私の事、応援してくれるって」
(良かったね。アンジェリカ。)
「王子様と・・・仲良くなりたいな」
「聞いてよリリー。今日はダンスの先生に怒られちゃった」
(大変だね。アンジェリカ)
「でも頑張るわ。未来の王妃として、しっかり練習しないとね」
(そうだよアンジェリカ)
「弟は褒められてたの・・・今度、コツを聞いてみようかしら」
(それは良いね!アンジェリカ)
「ふふ。頑張るわね」
「聞いてよリリー。王子様と同じ学校に通うことになったの」
(良かったね。アンジェリカ)
「リリーは連れていけないけど、ここで私を待っていてね」
(もちろんさ)
「弟も居るの。ちょっと安心」
(良かったね。アンジェリカ)
「帰ってきたときに、たくさんお話ししましょうね」
「聞いてリリー。どうしましょう。王子様がね、私以外の女生徒に恋をされているみたいなの。それで、私が嫌がらせをしてるって噂になって・・・弟は庇ってくれているのだけど。私、嫌がらせなんてしていないのに」
(分かってるよアンジェリカ。僕を学校に連れて行って)
「リリーを?」
(僕が守ってあげる)
そんなある日、全生徒の集まる前で、王子が突然大きな声で話し始めました。
「アンジェリカ・クラウス!!ナナリー・ホワイトに嫌がらせをしたというのは本当か!!」
吃驚したのはアンジェリカです。
「いいえ王子様。家名に誓って嫌がらせなどしておりません」
「そうです。王子よ、姉はそんなこといたしません」
「だが、ナナリーより証言があるのだ!!」
「はい。私、アンジェリカ様に嫌がらせをされました。本当に怖くて・・・」
(それは嘘だよ)
そこに現れたのはリリーでした。リリーは光に包まれ人型になりました。
『私が証明しよう。アンジェリカはナナリー・ホワイトに嫌がらせなどしていないと。アンジェリカの側には、ずっと私が居たのだから』
リリーの姿に、皆が唖然としました。その姿は誰もが一度は見たことある、この国の子供を守る妖精王だったのです。
『妖精王の私が証言しよう』
「な、何よこれ!!こんなの知らない。ここは悪役令嬢が一方的に断罪される場面でしょ!?王子様、なんで否定してくれないんですか!!」
ナナリーが騒ぎ立てます。しかし、王家に育った王子が妖精王の言葉を否定できるわけがありません。
『アンジェリカは、王子の心がナナリーに移ったと知っても悲しむだけで、決して嫌がらせなどしようとしなかった。小さい頃から見てきた私は知っているよ。君がとても優しい女の子だと』
「リリー・・・いえ、妖精王様」
『アンジェリカ。お願いがある。そんな心変わりをするような王子は捨ててしまって。僕と結婚してください』
わっと周りが明るく囃し立てます。
「妖精王との結婚なんて素敵」
「アンジェリカ様は幸せになるべきだわ」
「お幸せに」
弟も拍手をしています。一瞬、王子の方を向いて逡巡したアンジェリカ。しかし、
「はい。妖精王喜んで」
こうして、王子とアンジェリカは婚約破棄をしました。アンジェリカと妖精王の結婚は国中から祝福されたといいます。
私は魔法のヌイグルミ。お姫様を守る王様のヌイグルミ。小さい頃から見ていた可愛い女の子。馬鹿な王子と結婚するなんて勿体ない。私と結婚しておくれ。ああ、やっと手に入れた。




