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ホモ彼氏のオトしかた  作者: ろばてーる
8/16

美少女襲来

事件は突然起こる。

それも何の前触れもなく。


「愛華ちゃん、ちょっといい?」

そう私を呼んだのは同じクラスの華園花蓮(はなぞのかれん)ちゃん。

名前の通り華があり可憐な美少女である。

うちの高校は文化祭でミスコンが毎年開かれるが、その候補の一人でもある。

月とスッポンとはこう言うことか。

そんな月の花蓮ちゃんがスッポンの私を階段下の隅の方へ呼び出したのだ。

絶対殺られる。直感的にそう感じた。

「花蓮ちゃん、貴方の様な方がスッポンに何の用?」

「スッポンって何のこと?…少し愛華ちゃんに頼みたいことがあるの。」

「頼みたいこと?」

花蓮ちゃんが微笑んで頷く。

「私好きな人がいるんだけど、協力して欲しいんだ」


嫌な予感。

女の協力してほしいんだーは大抵信じてはいけない。


「もうわかっちゃったでしょ?」

「まさか……陣内君?」

「は?」

花蓮ちゃんの笑顔が固まる。

は?って言った?

あの可憐な美少女が、は?って…

「はぁー、違うから。高尾雅宗君のことよ!」

「ごめん、雅宗は私の彼氏だから他当たって。」

更に花蓮ちゃんの顔が曇った。

私が動じることもなく即答したことに腹を立てたらしい。

「ブスの上に物わかりが悪いって最悪。」

キャラチェンの切り替えはやっ!

しかも美少女からブスと言われるほど辛いことは無い。

「花蓮ちゃんってギャップ凄いんだね。今までねこかぶってたんだ?」

「こんなに可愛くて性格も良ければ基本人が寄ってくるからねー。男にも女にも困ったことないし。」

なんて性格ブスな…。

なんて残念な女なんだ!!

「そーいうの、そのうちポロッとばれて独りぼっちになっちゃうよ?」

さり気なく気遣ってあげた。

「顔がブスじゃなきゃ大抵は大丈夫よ、それに私はそんなヘマしないから。」

ぼっちになってしまえ!!!

と、つい心の中でつっこんでしまった。

だいぶ自分に自信があるのかこいつ…。

「とにかく、私は高尾君をどんな手をつかってでも振り向かせる。だからあんたは引っ込んでて!」

えーー…我が儘お嬢様にも程がある。

私が雅宗を渡すなんて考えられないのに。

しかもこんな自意識過剰な性格ブス女に!

「好きな気持ちは自由だけど、私だって渡す気も手放す気もないよ。」

「愛華ちゃん、ブスの上に物分りも悪くて更には強情だとモテないよ?」

私を蔑むような目で見下してくる。

思わず身震いするほどの迫力だった。

「…悪いけど、雅宗が好きなのは男だから。花蓮ちゃんを好きになることなんて皆無よ。」

「は?そんな冗談私が信じると思ってんの?いくら渡したくないからって、嘘が下手すぎだよ〜。」

いやーな感じで笑ってるけど、これ本当です。

「まぁいいや。そっちが雅宗君を渡す気がないならもう手加減しないから。」

そう花蓮ちゃんは言い残し、私を睨みながら階段を登っていった。

たった数分だと言うのにどっと疲れた…。

でも、突然のライバルしかも美少女に宣戦布告されるなんて。

どんな手を使って雅宗を誘惑してくるのだろう。


その日の放課後、いつものように廊下で私を待つ雅宗の姿をみつけた。

私も早く支度しなきゃ…

身支度を整えて教室を出ようとしたときだった。

「まーさむねくんっ」

女子を更に女子っぽくしたような、ピンク色の声が聞こえて咄嗟に雅宗を見る。

そこには私に宣戦布告をした花蓮ちゃんがいた。

「あ、華園さん。お疲れ様。」

「お疲れ様ぁ♡これから部活でクッキー作るんだけど、良かったら雅宗君もどお?」

クッキーぃ?!

女子力振りかざしただけで雅宗がほいほいついてくわけ…

「もしかして家庭科部?!俺も行っていいの??」


うおおおおぉぉい!!!!

ついてくんかい!!!


「ほんとっ!?うれしーぃ♡」

勝ち誇った笑みを私にしてくる悪女。

こんな腹の中真っ黒な女にひょこひょこついて行っちゃいけません!

しかし、私が止める前に2人は家庭科室へと行ってしまった。

つーかせめて一言ぐらい言ってから行けよ!!

有り得ない有り得ない!

確かに私は仮の彼女であって何か言う資格もないけどさ!!!

これだから男って単純でいや!!

そこで違和感に気づく。


…あれ、男が好きなのに美少女について行くってどういう事?

顔が良ければ女もいいってか!?

雅宗の恋バナといえばいつも男しか出てこなかったから完全に油断していたが…もしかしたら可愛い女の子は別腹とかいうやつかもしれない。


私は気になって結局家庭科室を覗きに行くことにした。

何かあった時用に美緒を連れて。

「ちょっと愛ちゃん。こんなこと前にもあった気がする。」

美緒が苦笑いで私を見てきた。

「あったね、美緒の彼氏浮気疑惑事件(第1話参照)」

「あれは高尾に騙されてただけだから。浮気にカウントされないから。」

「騙される方が悪いのよこの御時世…」

「深いな。」

コソコソ部室の窓の下で話してると急にガラッと窓が

開いた。

咄嗟に壁に張り付く私達。

しかし窓から誰か顔を出す訳でもなく、ただ空気の入れ替えをするためだったようだ。

むしろ窓が開いたことによって好都合。

話し声を聞くことができるじゃないか!

「じゃあ今日はクッキー作ることになってたよね。各グループに分かれて好きに作って頂戴。ちなみに今日は特別ゲスト高尾雅宗君にも来て頂きました!」

きゃーーと女子の小さな悲鳴。

やはり雅宗の顔だけはイケてるらしい。

学年構わず素晴らしい人気ぶりだ…。

「愛ちゃんのカレピ騒がれてるねぇ。いいのー?」

美緒が私の二の腕をつんつんしてきた。

「彼女としては鼻が高いわ!大体男が好きなんだからどれだけ騒いだところで心配ご無用!!」

「男が好きな人が美少女の誘いにホイホイついて行くのは?」

「…きっと花蓮ちゃんが男に見えたのかも。」

「いや無理あるだろ。」


そんなことを話しているうちにクッキー作りが始まったようだ。

窓の端から中を覗き込む。

傍から見たら相当不審者だなこれ。


「ちょっと愛ちゃん。高尾、花蓮ちゃんと同じグループみたいよ。」

雅宗は花蓮ちゃんと粉を振るっていた。

まてまて、花蓮ちゃん体近すぎじゃありませんか?

拳一つ入らないほどに近い。


「雅宗君上手い上手い〜お菓子作りもしかして得意だったり?」

花蓮ちゃんは雅宗を褒めたおしながらさり気なく体をくっつけている。

「得意ではないけどたまに作るよ。」

それに気がついているのかいないのか。

雅宗は気にしていないようだ。

雅宗があまりにも反応しないのが悔しかったのか、

「あ、最後はダマになるからー…」

今度はふるいに残った小麦粉の塊をヘラで潰しながらさり気なくふるいを持つ雅宗の手に自分の手を重ねる。

「あれはレッドカードだね。」

美緒が蔑んだ目でそう呟く。

あの女、強い…。


「…だいぶ生地がまとまってきたね!あとはよく練る!」

「腕キツイなこれ。毎回こんなんやってるの?」

雅宗はどうやら生地がまとまるまで切るように混ぜる作業が辛かったようだ。

ワイシャツの袖を捲りあげて肩を回した。

あ、意外と筋張った腕が男らしい。

雅宗の腕に見とれていると、

「慣れだよ〜、雅宗君腕ちょっと触っていい?」

そして今度は大胆に二の腕を触り始めたのだ!

「あっ雅宗君筋肉結構あるんだねぇ!」

うぉおおおおい!

触りすぎだろ!

私ですらそこまで触ったこと最近はないんだぞ!!

「一応人並みには筋肉つけとかないとだからね。」

そして雅宗も何故かドヤ顔だ。


「愛ちゃん、ホントにあんなんが好きなの?」

私を可哀想な目で美緒が見てくる。

その目は今の私には辛いです。

「ごめん、あいつが馬鹿なのは知ってたけどちょっとナメてたわ…。」

あそこまでベタベタ触られて好意に気づかないのか?

それとも気づいてないフリしてる?

雅宗はその後も表情を一切崩すことなく黙々とクッキー作りに励んでいた。


少し経つと教室からクッキーの焼けるいい匂いがしてきた。

「お腹空いたぁー!愛ちゃんもう帰ろうよー。」

さすがに一時間以内の観察は疲れる。

美緒も飽きたのかスマホをいじり始めてしまった。

「…うーん。私もう少しここにいるよ。美緒は先帰ってていいよ。」

美緒の顔がぱあっと明るくなった。

「えー、でも愛ちゃんに悪いし〜。」

「言葉とは裏腹に顔が輝いてますけどね。」

「んじゃ、帰るわ!頑張ってね♡」

こいつ…。

美緒は笑顔で帰っていった。

独りぼっちになる。

これじゃ本当に不審者だ。

「できたー!上手く焼けてるよ雅宗君!」

「お!本当だ!!うまそー!!」

「じゃあ温かいうちに、はいっあーん!」

楽しそうな花蓮ちゃんと雅宗の声が聞こえてくる。

他にも部員がいるはずなのになぜこんなに二人の声だけ聞こえてくるのか。

突然虚しくなってきた。

きっと雅宗はこのクッキーを陣内君にあげるんだろう。

それか花蓮ちゃんか…。


はあぁぁぁぁ!!!!!!


「うおっ!?!?」



私のでかい溜め息に驚いたのか、誰かが悲鳴をあげた。

「あ、ごめんなさい!」

…って、ん?

「陣内君…?」

「あれ…愛華?」


腰を抜かしてその場に尻もちをついていたのは陣内君だった。






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