ファーストキス
大変投稿が遅くなってごめんなさい。
雅宗に無理チューをした。
それも私自身もファーストキス。
「あ、ああああ愛華!?」
顔を真っ赤にして動揺する雅宗を無視して、私は陣内君に向き直る。
「陣内君、私は雅宗にしかキスできないから。」
陣内君は突然目の前でキスをされたのにも関わらず余裕の表情を崩さない。
むしろ、愉快に笑っている。
「お互い顔真っ赤にして、慣れてなさそうだけど。」
「まだ付き合いたてなんだから当たり前でしょ!?」
「ふーん…でもさ、いくらキスしたところで俺の気持ちは変わらないよ?」
な、なんて諦めの悪い…
「んじゃ、俺はここら辺で退散させてもらうよ。あとはお2人でごゆっくりー♪」
陣内君はそう言うと片手をひらひらさせながら私たちの横を通り過ぎていった。
少しの沈黙。
き、気まづい!!!!
私が雅宗をみると雅宗はぱっと目を逸らす。
「ちょっと…雅宗さん?」
「…初めてだったんだけど。」
真っ赤な顔でぼそっと呟く。
「私もだよ。」
「えっ!?」
お互いファーストキスだったようだ。
まぁ雅宗がファーストキスじゃなかったら男としたことになるからそれはそれで微妙な気持ちになる。
何にせよ、初めてで良かった…。
「何よその顔。」
疑うような顔で私を見てくる。
でもファーストキスは本当なんだから。
「あれはキスにカウントされないってのは?」
「ないね。…私にときめいた?」
「べ、別に!ただ…」
ただ?
「わ、悪くは…ない。」
どきゅん。
なんて可愛い顔をしてそんな胸きゅんセリフを!
「恋人同士なんだから本当はあれぐらい当たり前なんだからね!」
だからもっとしてもいいんだぞ?
ってさすがにそこまでは言えないけど…。
「陣内君もあんな感じなのかな。」
…なにをこいつは!!!
「私の神聖な唇とあんなやつのを一緒にしないでくれる!?」
「やっぱり男女だと違うのか…。」
「それにあいつの唇どう見ても薄いし!弾力のだの字もないわよきっと!」
「そーかなー…。」
私とキスまでしといて…。
恐るべし陣内和哉!!!!
「もう教室戻る。」
私はこの雰囲気に耐えきれず、雅宗を置いて教室に戻ることにした。
教室に戻ると美緒が私のところへとんできた。
「愛ちゃんみたよみちゃったよー!!雅宗君とちゅーしてたね♡」
「みてたの!?」
「あんな公衆の面前で堂々としてれば皆見ちゃうって〜♡上手くいってるみたいでなにより♡」
人に見られてたと思うと恥ずかしい。
そう言えば周りのクラスメイトたちの視線もちらほら感じる。
「それにしても愛ちゃんかっこいいよねー、あんなに強引にさぁ。」
「あれぐらい強引じゃないと雅宗はなかなかね。」
強引にしても振り向かないけどさ!
「雅宗君動揺してたっぽいけど慣れてないんだね、いがーい。」
「そりゃね、男好きなんだし今まで恋人もいた事ないんだから。ファーストキッス奪ってやった。」
「愛ちゃん男らしーー!でも愛ちゃんもファーストキスでしょ?」
う…。
でもさ、本当は私だって自分からじゃなくて好きな人からして欲しいんだけどな。
「次はいつ雅宗君とちゅーできるんだろうね。」
「それは…。」
いつ?むしろまたキスできるのか?
そう思うと凄く悲しかった。
放課後、私が教室から出ると雅宗が壁に背をついて携帯をいじっていた。
雅宗の顔を見た途端、あのキスのことを思い出してモヤモヤする。
「ん、愛華発見。」
私に気がついた雅宗が近づいてきた。
「おまたせ、帰ろっか。」
いつものように差し出される手をいつものように握り返す。いつもはドキドキするこの瞬間も、今日はモヤモヤに変わってしまっていた。
あのキスの一件以来すれ違う人達の視線が多くなっている気がする。
今じゃここまで有名なカップルになれたのか…
「なんか、いつもより見られてる感じがする。」
雅宗がつぶやいた。
「あんな堂々とキスしてれば皆みてるしね、そのせいだよ。」
「まじ?!そんな見られてたのかよ…ハズっ」
そんな嫌な顔しないでよ。
「まぁカップルなんだしいいじゃない。」
「カップルかもしんないけどさ、結局ニセモノなんだし。そー思うと自分がなんかいけないことしてる気分にならない?」
なにそれ…
「雅宗は私とキスするの嫌だったってこと?」
「そーじゃないけど、好きな人いるのに他の人とするのだって抵抗あるしさ。それに…」
「なにそれ?結局嫌だったってことじゃん!私とキスしたくなかったんでしょ?!だったら濁さないでそー言えばいいじゃん!私ひとりでドキドキして馬鹿みたい!!」
雅宗の一言一言に胸が締め付けられるようだった。
気がつけば私は涙で顔をぐしゃぐしゃにして走っていた。
どれぐらい走ったのだろう、足を止める。その後ろから足音が聞こえてきて咄嗟に振り返った。
「愛華…逃げんなよ。」
「雅宗には私が何しようが関係ないでしょ!なんで追っかけてくるのよ!」
必死に逃げても追いついてしまう。あの公園のときみたいに、どこに私が隠れたってきっと雅宗は見つけてしまうんだ。
それが私を苦しめてるなんて雅宗は気づいてないんだろう。
「帰ろう、愛華。」
再び差し出される手。
握りたい、本当はすっごく…
「雅宗がひとりで帰ってよ!てゆーかもう私に」
「…んっ?!」
突然腕を引かれてバランスを崩したと思った。しかし身体は優しく支えられてて、それと同時に唇が柔らかい何かで塞がれていた。
その何かがゆっくり離れる。目の前にあったのは雅宗の真っ赤な顔だった。
「ま、雅宗…?今なにして…」
「…ほら、キスしたら愛華機嫌直るかなって!それに…なんか俺もしたくなった。」
俺もしたくなった!?
まさかこんな言葉があの雅宗から聞けるなんて思ってもみなかった。
未だに雅宗の温もりがわずかに残っている。それだけで私も心臓が張り裂けそうだ。
それにしても泣いてる私をみてキスをしたくなったなんて…なんて健全な男子のようなことを言うんだ!
仮にも好きなのは男、きっと男経験がないから女に逃げてるんだろうけど…それでも今のは確実に無意識だった。
少しの期待で私の顔も思わずにやけていた。
「それってさ…私のこと少しは異性として好きになってくれたってことじゃないの?」
「え!?…そ、そうなのかな。」
「そうよ!!雅宗だってまだ健全な男子の心が残ってたのねぇ…。」
「俺はいつでも健全だから安心して。」
なにが健全だ。
男を好きな時点で違う気がする…。
「まぁ機嫌なおったみたいだし?愛華からしたら一石二鳥ってことで!」
そう言って雅宗は少年のような笑顔をみせた。
あぁ、この笑顔が私だけのものになればいいのに。