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ホモ彼氏のオトしかた  作者: ろばてーる
14/16

伊達政宗と愛姫

雅宗のいない日常はいつまでも慣れない。

こんなにも雅宗が私にとって大きな存在だったことを改めて思いつつ、その事に慣れなきゃいけない、雅宗を忘れなきゃいけない。

その事実が受け止められなかった。


「では、今日はあの独眼竜政宗についてお話します。」

社会の歴史の時間、伊達政宗についての授業が行われた。

「皆さんも知ってると思います、伊達政宗。彼は米沢の戦国大名、伊達輝宗の長男として1567年に産まれました。彼は右眼に眼帯をつけてるけど、あれは幼い頃の病気が原因だったの。彼はそれでも厳しく育てられ、僅か15歳で初陣の時を迎えました。20代半ばにして天下統一を目指し、数々の戦を経てその時代では長寿である70歳まで生きたとされてます。」…

伊達政宗。

雅宗と同じ名前だ。

確か雅宗の名前は伊達政宗の意味もあるって昔聞いたっけ…。

「ちなみに伊達政宗は12歳の時、愛姫と呼ばれる女性と結婚しました。途中夫婦仲が悪くなるような事もありながらも、4人の子供も授かり、一生を共にしたとも言われています。」


愛姫…。

読み方は違うけどなんだか私みたい。

少し前までの私ならこんなことすらめちゃくちゃ喜んでただろうな。

でもね、雅宗と愛華は幸せになれなかったんだよ。

ちらっと雅宗の背中をみる。

雅宗はなにを考えてるんだろう。

少しは私のこと考えてくれたのかな。

そんなことを思いながら私は今日も1日何事もなく過ぎていく。

そう、思ってたのに…。


「愛ちゃーん!今日の社会の授業やばくない?」

「ん?何がー?」

帰り支度をしている時、早速美緒が飛んできた。

来ると思ってたから心の準備はしてたけどね。

「だってさ!伊達政宗の結婚相手が愛姫って!高尾君と愛ちゃんじゃん!これって運命だよ!!」

「たまたまでしょー。美緒は大袈裟なんだよ。」

「えー、こんな偶然そんなないでしょ。」

確かに、一瞬運命ならいいなとは思った。

「でもさ、私達は違うから。雅宗はさ、私のこと…好きにはなってくれないから…。」

自分で言ってて、涙が出そうになる。

「愛ちゃん…。」

美緒が私の手を握ってくれた。

「本当に…高尾君が好きなんだね。」

そうだよ。

ずっと片想いしてきたんだもん。

雅宗しか、好きになったことなかったんだもん。


「いいの。私は陣内君を好きになる。そう決めたから。」

「愛ちゃん…。」

もう蓋をしよう。自分の気持ちに。

そう決意したときだった。

「愛華。」

急に雅宗に手を無理やり引っ張られた。

「雅宗!?急に何…!」

「え!高尾君!?」

「ちょっとだけ愛華借りるね。」

心配そうな美緒にそれだけ言い残して、私は手を引かれるまま、 近くの空き教室へ連れてかれた。



「ちょっと、雅宗?!」

空き教室へ入ると握られた手がさらに強くなった。

あまりの急な展開にまだ私はついていけてない。

雅宗とは未だに視線も合わない。

「雅宗…?」

もう一度名前を呼んでみる。

雅宗はゆっくり、身体ごと私の方を向いた。

やっと合った視線。

久しぶりに近くでみた雅宗は、少し痩せたように見えた。

「愛華…俺さ。男が好きだ。」

突然の男好き宣言に思わず「は?」と声が出る。

本当に、私をこんな所まで無理やり連れてきといて何をしたいんだろう。

「男が好きだった。でも…、愛華に好きだって言われた時、今までに感じたことのない変な痛みがあって怖くなって逃げ出した。」

変な痛み?

「雅宗、ごめんってだけ言われてかえっちゃったからさ。私はてっきりフラれたと思ってたんだけど…違うの?」

雅宗は少しだけまた視線を私から外した。でも何かを決意したように、再び私を見る。

「あれは、今まで男しか好きになったこと無かったから…。他の女の子に告白されてもなんにも感じなくて断り続けてきたけど、愛華だけは違くて。だからその痛みの正体を知るために、陣内君に告白した。」

「それで…分かったの?痛みの正体。」

雅宗が陣内君に告白した時、確かに雅宗は大切なことに気づけたとか何とか言ってたけどその事なのだろうか。

雅宗は私の質問に小さく頷いた。

「分かったよ。陣内君と話すとさ、ドキドキするんだ。だから陣内君のことが好きなんだって思ってた。でもいざフラれた時、愛華の時ほど胸は痛くなくて、ドキドキすることが好きな事なんだって今まで勘違いしてたのかなって思った。」

「でもドキドキは好きだからするんでしょ?好きじゃなきゃドキドキしない。」

「確かに、今まで好きになった人達は本気で好きだったと思う。でも、俺の隣に居なくなって辛くなるのは愛華だけなんだよ。」

雅宗は恥ずかしそうに顔をそらす。

「雅宗…私のこと、好きなの?」

その反応をみて、思わず自意識過剰すぎることを口走ってしまった。

でも、その言葉に更に顔を赤くさせた雅宗はまた私と視線を合わせる。

「愛華と話せないのは凄く辛かったよ。でも、顔を見るだけでなんだか安心した。これがきっと痛みの正体。」

そう言うと、握っていた手を自分の方へ思いっきり引いた。

私の身体はされるがまま、雅宗の腕の中へ収まる。

私を抱きしめる腕は凄く熱かった。


「愛華、俺のそばにずっといてよ。」


それが12年待ち続けた雅宗からの告白だった。






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