さよならの意味
雅宗にはっきりフラれた。
これは事実で、もうどうしようもない。
お先真っ暗とはこういうことなのだろう…。
明日から一緒に登校もできない。帰ることも、今までと同じように接することも。
私が雅宗を好きになって告白なんて馬鹿なことしたせいで、今まで築いてきた関係は一瞬にして崩れたんだ…。
こんなことなら告白なんてするんじゃなかった。
雅宗のこと好きになんてなるんじゃなかった。
私は原動力を失ったせいで抜け殻状態だった。
頭では分かってる。
いつまでも引きずったところで何にも変わらない。
失ったものは返ってこない。
それでも身体に力が入らないんだ。
考えると片隅に絶対雅宗がいて、それがどうしょうもなく嫌で。
「あーーーーーーっ!!!!!」
その姿を見てたのか、つけてきたのか。
「愛華。」
「……陣内君。」
陣内君の姿を見た途端、涙が一気に溢れてきた。
そんな私を陣内君は黙って軽く抱きしめた。
「…好きだったの。」
「うん。」
「…今でも、好きで好きでどうしようもないの。」
「うん。」
「なんで告っちゃったんだろぉ…!」
「愛華は間違ってないよ。」
「でももう戻れない!やっぱり雅宗を好きになんてなっちゃいけなかった!!」
「気持ちはどうしようもない。俺だってそうだよ。」
「辛いよぉ!寂しいよぉ!!雅宗とまた話したいのに!笑い合いたいのに!私じゃダメなのぉ!!」
抑えていた気持ちは言葉になってどんどん出てくる。
そんな私の叫びを、陣内君は頷いて聞いてくれた。
「愛華は頑張った。我慢してたじゃん。」
そう言う陣内君の声は少し鼻声になっていた。
「…陣内君、泣いてる?」
「泣いてねぇよ。」
私に顔を見られたくないのか、抱きしめる力が強くなった。
なんだか、泣いている陣内君が面白くて笑えてきた。
「ふふ…。」
「なに笑ってんの。」
「いや、なんか面白くて…。あ、鼻水めっちゃついた。」
「は!?おい!!」
いつの間にか涙は止まって笑っていた。
ついさっきまで人生の終わりみたいに泣きじゃくってたのに…。
「私って単純かも。」
「そのほうがいいときだってあるだろ。」
それにしても、本当にいいタイミングで陣内君は現れる。毎回毎回…
「陣内君ってストーカー?」
「はぁ!?」
陣内君が顔を赤くして後ずさる。
さては図星か。
「わっかりやす。」
「俺だって自分で自分が信じられないわ。でも言ったじゃん?諦めないって。」
今の私には真っ直ぐすぎる言葉だ。
雅宗一筋だった私の中に、陣内君は少しずつ踏み込んできている。
このまま陣内君と付き合った方が幸せだ。
絶対。
「都合良いかもしれないけど、私陣内君のこと好きになりたいかも。」
「本当に都合いいなー。まぁ俺はいつでも両手広げて待っててやるよ。」
そう言って両手を広げる陣内君がとても頼もしくみえて、陣内君ならきっと好きになれる、そう思った。
「高尾と愛華別れたらしいよ!」
「まじ?チャンスじゃん。」
「えー、愛華が無理ならウチらじゃ無理っしょ。」
「でも風の噂だと、愛華は既にあの陣内君と付き合ってるらしい!」
「うわ!ちょっと可愛いからってイケメンに手出しすぎじゃない?」
学校内では既に私と雅宗は別れたことになり、更に言えば陣内君と付き合ってることになっているらしい。
聞く限りだと私最低女じゃん…。
あれから雅宗とも気まづくなって、すれ違ってもお互い目を背けるだけだった。
辛くないと言えば大嘘になる。
てかむっちゃくちゃ辛い!!!
「愛華、昼飯一緒に食べない?」
ちょっと浮いている私を見兼ねたのか、お昼は陣内君が誘ってくれるようになった。
「ちょっと陣内君。」
そこへ、クラスの一部の女子が集まってきた。
「愛華と付き合ってるって本当?」
私に直接聞けばいいのに…。
「いや、俺の片想い♡」
対応が優しくてむしろ罪悪感さえ生まれる。
「てか、陣内君は愛華の何がいいわけ?」
「そーだよ!雅宗君と別れたばかりですぐ乗り換えるような男好き、陣内君には勿体ないと思う!」
言いたい放題だ。
隣には一応私もいるんですけどね。
もう空気のように扱われる。
「うーん…確かに何がいいって言われると難しいけど…。」
はぁ?!
好きという割に理由がないんかい!!
「じゃあ私達のがいいじゃない!」
「でもさ、愛華は君達みたいに群れて人の悪口言ったりしない。」
しんっ…。
騒がしかった女子達が一斉に静まった。
「愛華、行こう?」
そう言って、陣内君は私の腕をとると歩き出した。
少しすると、後ろからザワザワっと女子達の悲鳴や批判の声が聞こえてきた。
「…陣内君ごめん。」
「なにが?」
「私のせいで陣内君まで嫌われちゃう…。」
陣内君は立ち止まると私をみてにやっと笑った。
「俺はそんな事で嫌われないし、例え嫌われても愛華がいればいーや。」
確かにこんなカッコイイ人がそう簡単に嫌われるわけないか。
私はきっとこの人を好きになる。
いつしか理想は確信へと変わっていた。