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1.日常から非日常への第一歩

 4月中旬、俺が大学に入学し2週間が経過した月曜日。


 朝大学に行こうと借りているマンションを出ると、入り口付近に引っ越しのトラックが止まっていた。どうやら新しい住人が来たらしい。

 ただ時期的に少し妙ではあった。ここは主に学生が多く住んでいるマンションなのですでに学校が始まってるであろう今になっての引っ越しというのはかなり珍しいのだ。

でも俺にはそこまで関係ないし、あんまりのんびりしてる暇もなかったのでそのまま大学へと出かけたのだった。


---------

 帰ってくるとなにやら隣の部屋が騒がしい。どうやら朝の引っ越しの主は俺の隣の部屋に越してきたようだった。

 しかもよく見るとその部屋の主と思しき人物は近くの高校の男子生徒。いまどきの高校生は一人暮らしくらいするものなのだろうかと思いつつ部屋に戻る。1か月前に高校を卒業したばかりなのにもうジェネレーションギャップを感じる自分に苦笑しながら。


 ところがその数時間後、少し買い物に行こうと外に出ようとしたところで驚きの光景が目に飛び込んできた。

 隣の部屋の扉の前で何やら金色の光が渦巻いている。

 ちょっとやばいものを感じた俺は扉の内側に避難しつつ、好奇心に駆られて少し隙間を空けて外を眺めていた。

 するとどうだろう、最終的に金色の光は目も空けられないほどの輝きになったあと唐突に消え、光っていた場所には中世の騎士のような鎧を着た青年と同じく中世のドレスのようなものを着た少女が立っていた。


 ・・・俺はあまりのことにフリーズしてしまった。

 これはあれだろうか。俗にいう異世界召喚とかいうやつなのだろうか。

 けどここは異世界じゃない。でも向こうの2人にとってみれば異世界ということになるのだろうか。

 だったらこの世界には魔王がいて誰かがあの2人を召喚したのだろうか。


 そんな感じで俺が混乱しているうちに2人は隣の部屋の扉をノックしていた。

 そしてすぐに何やら慌てた感じで飛び出してくる高校生。

 しゃべってることも聞こえてきた。


「ちょ!?なんでもうこっちに来てるんだよ、ルーク、クリア!! 時期来たらこっちから呼びかけるっていっただろ!」


「ごめんなさい、優斗様。でも我慢しきれなくて・・・。」


「すまんな、優斗。俺も止めたんだが姫様がどうしてもと聞かなくてな。」


「くっ、仕方ない。散らかってるけどとりあえず中に入って。他の人に見られた厄介なことになるんだ。」


 気が付いてないようだけど思いっきり俺が見てるんですが・・・?

 

「失礼します。」


「邪魔するぞ。」


 そのまま3人は中に消えていった。


「・・・なんだったんだあれ。」


 俺はあまりの衝撃にしばらく呆然としていた。

 状況から察するに異世界召喚から帰ってきたやつのところに向こうで親しくなった女性が押しかけてきたってところだろうか?

 うらやましいようなそうでもないような・・・。

 とにかく出かける気分でもなくなったので部屋に戻る。

 すると壁が薄いのか隣の部屋の会話が聞こえてきた。

 ちょと悪い気もするが気になるので聞き耳を立ててみる。


「ここが優斗様の部屋・・・。」


「優斗、お前ずいぶんと広い屋敷に住んでるんだな。こっちに来た時いくつも部屋があって驚いたぞ。」


「そんなわけないだろ。ここは屋敷じゃなくてマンションっていうんだ。俺の家は全部じゃなくてこの部屋だけ。それぞれの部屋で全く別の人たちが暮らしてるんだよここは。」


「ふーむ。お前の世界は変わってるんだな。」


「普通だよこれくらい。というかほんと連絡なく来るのはやめてくれ。見つかったら洒落にならないんだよ。」


「なぜだ? こちらの世界に姫の顔を知るものがいるとは思えんが?」


「そうじゃない!問題なのはお前が持ってる剣だよ、ルーク。」


「む?身を守るためにも剣を持つのはおかしくないだろう。まして私は騎士だ。剣を持ち歩かないなどよほどのことがない限りありえん。」


「この世界では剣を持ち歩くほうがあり得ないの! そんなもの持ってるのが見つかったら警察に・・・あ、警察っていうのは衛兵みたいなものね。その警察に捕まるぞ。」


「むむ、なんと理不尽な。こちらの王に抗議せねば。」


「それもやめろ!ええい、もう。ちょっとこっちの世界のことを教えるからこっち来い。クリアもこっちに・・・ってなんで箪笥を漁ってるの!?」


「は!?・・・いえなんでも。盗聴や盗撮の魔法が仕込まれていないか少し確かめていただけです。」


「そんなものあるはずないからね!?とりあえずこっちきていろいろ教えるから。」


「わかりました、優斗様。」


 ・・・これ以上は聞くのはやめておいた.

 今更この世界の説明なんぞ聞きたくはないし、さすがに罪悪感が湧いてきたのだ。

 まぁ見なかったことにしてそっとしておいてやろう。

 下手に聞いてると常識が狂いそうな気もするしいろいろな意味でほっとくのが一番だ。


 俺はそんなことを考え、やっぱり買い物に出かけることにしたのだった。

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