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ライカの有益情報?

 一度宿の部屋に戻るため、ライカは宿の前で待っていてもらう。動物を入れてもいいのか受付で聞いてからの方がいいだろう。

 早速聞いてみると、別に料金を払い、備品を汚したり壊したりしないなら部屋の中に入れてもいいとのことだった。ライカは話ができるのだし、部屋の中を汚したりは心配しなくても平気なはず。お金も有り余っているしそれも気にする必要はない。


 ということで、食事から戻ったらライカを部屋に入れても良さそうだ。このサービスは小型の従魔を連れている人のためのものなのだそうだ。この宿はその辺のサービスも充実しており、ポロと同じように料金を払えば動物用の食事も用意してくれるらしい。


 部屋に戻るとアンナとメリエに創っておいたアーティファクトを渡しておく。今のところライカが敵対する心配は無さそうだが、他の魔物が幻術のような攻撃をしてくる場合もあるだろうし、つけておいてもらった方がいいだろう。


「アンナとメリエに新しいアーティファクトを渡しておくね。はいコレ」


「これは何のアーティファクトなんです?」


「幻術系の攻撃を受けた時に元通りにするための癒しの術が込めてあるやつだよ。ライカと戦ってそうした攻撃をしてくる魔物もいるって判ったから創っておいたんだ。ポロにはもう渡してあるよ」


「人間が使う魔法にも精神に影響を与えるものがあるという話だし、魔物以外の対策にもなりそうだな」


 そう言えば相手を使役する魔法も精神に作用するものだったっけ。前に聞いた〝呪縛〟みたいな魔法もこれで防ぐことができるかもしれない。

 アンナとメリエにアーティファクトを渡した後、更に鱗を一枚取り出して首飾り型のアーティファクトを創る。


「今度は何を創っているんです?」


「ライカ用の【伝想】を込めたアーティファクト。犬や狐が人間の言葉を話していたら周囲の人間に怪しまれちゃうでしょ?」


「成程な。私達は慣れすぎて何とも感じていないが、周囲の人間からすれば異常なことだ。アンナも慣れすぎて人前で話したりしないようにな」


「う、はい。気を付けます」


 何度も創ってきたので作成にかかる時間もどんどん短くなっている。

 ものの数分で完成させると部屋を出て、宿の入り口の前で座って待っていたライカと合流した。


「はい。僕達と行動するならこれをつけておいて」


「何だこれは? やはり不安になって私の行動を制限するものをつけるのか?」


「違うってば。人前で動物が人間の言葉を話してたら怪しまれるから、言葉にしなくても意思疎通ができるアーティファクトを作ってきたんだよ。使う時は伝えたい相手を思い浮かべて頭の中で話をするようにすると意思が伝わるよ。有効範囲はそんなに広くないけど」


 ライカ用のアーティファクトはアンナに渡してあるので、抱っこするついでにアンナに取り付けてもらった。


「見た目は昨日の首輪に似ているが……」


「僕の鱗でできてるからね。黒い鱗だから何を創っても黒くなるんだよ」


「こんなもの無くても、人間の姿になることもできるぞ?」


「え……そんな……!」


 途端にライカを抱きかかえていたアンナが悲しそうな声を上げる。

 ライカも何事かとアンナの涙目になった表情を見て、何を思っているのか察したようだ。

 アンナの目の中ではまだまだモフモフしたいという願望と、我儘を言ってはいけないだろうという自制心が鬩ぎ合っていた。


「う……む。わ、わかった。もう暫くはこのままでいるから」


 アンナは自慢の毛並みの良さを理解してくれたので、ライカも無下にするのは躊躇われるようだ。

 それを聞いたアンナは満面の笑顔になり、ライカを抱きしめる手に力を込めて頬ずりしている。

 この様子では当分解放してはもらえないだろうな……。幻獣をこんな風に扱えるのはアンナくらいだろう。危機意識を諭すべきなのかもしれないが、思った以上に人間臭いライカならこのままでもいいかと思ってしまう。


 メリエもそのうちにライカへの警戒心が薄れそうだし、今度は二人からいじり倒されることになるのではなかろうか。その証拠にメリエはライカをモフるアンナを自分も触りたいというような目で見はじめている。

 メリエはそんなモフモフへの誘惑を振り払うように目を逸らし、話を切り替えた。


「さて。じゃあ店を探すか」


「む、食事に行くのだったな。では早速、私がこの町で一番美味(うま)い物を食べられる場所を教えてやるぞ」


 アンナの腕の中に納まったライカが提案してきた。

 長い時間この町で生活しているのなら美味しい食事処を知っているのも頷ける。メリエも王都で生活していたそうだが、滞在時間ではライカの方が何倍も長い。ここはライカに聞いてみるのもいいかもしれない。

 そう言えばお金はどうしてるのだろうか。まさか幻術で……?


「僕はいいと思うけど、二人は?」


「私もいいぞ。師匠とこの都市で生活していた時は師匠行き付けの決まった店ばかりに行っていたから、どこが美味しいのかは良く知らないんだ。慣れると同じ店の方が落ち着くしな」


「私もわからないし、お任せします」


「よしよし。では教えてやろう。その場所はここからも見える、あそこだ」


 そう言ってライカが前足で指し示したのは……。


「え……まさか……王城?」


「そうだ。この町で食べた物の中で一番美味かったのはあそこで出される食事だったぞ。まぁちょっと量が少なくて物足りない感はあるが、味は絶品だ」


「……メリエ……この国のお城って食事処もやってるの?」


「まさか、そんなわけなかろう。一般人が用も無く入ることはできないはずだ。不法侵入は投獄され、殆どの場合で極刑だ」


 だよね。聞いてみて自分でもそれは無いだろうと思ったよ。


「……ライカ?」


「何だその目は! 私は嘘は言っていない。味が良いのは確かだ」


「……どうやって食べたの?」


「簡単だ。まずは食事時に忍び込む。そうしたら、ちょっと偉そうな態度と格好をした肥え太っている人間を見つけ、その後を付けるんだ。そうすると食事がある場所に行くから、そこでチョイチョイと幻術を掛ける。〝もう食事は食べ終わった〟と思わせて眠らせておき、私がそいつの食事を頂くのだ。太った人間は肥満解消の一助になり、私は美味しい食事にありつける。いい考えだろう?」


 うわぁ。せいぜい誰かに変身して入り込むくらいだと思っていたが、想像していたよりも悪質だった……。

 フンフン鼻を動かし、ドヤァと得意満面に説明するライカだったが、説明を聞いたこっちは溜め息を吐いてがっくりと項垂れた。


 そりゃあお城で王族や貴族が食べる料理なら美味しいだろう。だが自分達にそれはできないし、できてもやりたくはない。警備厳重な城に盗み食いに入るとは、考えることが人間とはかけ離れているな……。


「あのね、ライカ……僕達はお金を払って食べられるところを探しているんだよ」


「何だ、美味いのに。他の場所は似たり寄ったりだぞ。飛びぬけて美味いのはあそこだけだ。まぁ他にもいくつか美味い場所はあったが、数が多くて場所を細かく覚えていないな」


 何とまあいい加減な情報源だこと……。

 そんな風に呆れていたら、意外な情報がライカの口から飛び出てきた。


「あの城の食事は美味いが、忍び込むのは結構大変でな。城の中いる人間に手練(てだれ)が五人ほどいて、そいつらが居る場所に近付かないようにしなければならん。美味い物を食べるのは楽ではないということだ。まぁその一苦労のお陰でより一層美味しく食べられるのだが、面倒臭いから町の中で食べ物を出す場所を探すことが多い」


「へー。手練の人間ってどんなヤツだった?」


「一人だけ出くわしたことがあったが、そいつは私の幻術を見破れはしなかった。しかし雰囲気が只者ではなかったな。幻術を使わず正面から戦えば私でも苦戦するくらいの実力はあったかもしれん。クロも食べに行く時は気配に注意するといいぞ。

 手練の人間は城の上の方にいることが多い。だから下の方で食事を探すのだ」


 いや行かないから……わざわざ食事をするためだけに王城に不法侵入なんてしないから……。

 それにしても上の方にいる実力者か。王や王妃、それに姫の警護などをしている近衛の実力者などだろうか。

 ライカが手練というのならかなりの力を持っているのだろう。それが五人……。


 思わぬところで王城にいる強敵の情報を得られたのかもしれない。シェリアの方が動き出せば王城にも行くことがあるだろうし、数だけでも知ることができたのは有り難い。こんな会話から重要な情報を得られるとは、どこで何があるかわからないものだ。


「じゃあこの近所で探してみよう。まだ昼時には少し早いから今なら混雑もしていないだろう」


「ん。じゃあいきますか」

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