第一話
なろうユーザーの皆さんに捧げます!
【日本のどこかにあるという那辺市。そこには、最強を求める男達が集まる学校があった!
那辺私立楼閣学園。通称『那楼学園』!
『弱肉強食』を学訓に掲げるその学園の教育理念は『欲しければ奪え』ただ一つのみ!
今日も男たちは最強を目指して奪い合う! 己こそが最強だと証明するために!】
~なろうパロディシリーズ第三弾 『那楼学園熱血編 気になるアイツは小説家』堂々開幕!~
「オラァ! とっとと寄越せや『武勲印』をよぉ!」
那楼学園の校門近く、グラウンドの端で、長身のモヒカン頭の男が怒鳴り声を上げながら一人の生徒を突き飛ばしていた。
モヒカン頭は素肌の上にトゲトゲの鋲を取り付けた制服を着て、前を完全にはだけた世紀末スタイル。
対して突き飛ばされた生徒は、メガネをかけた大人しそうな風貌で、サラサラと風になびく長い黒髪、小さい鼻に、涙で潤んだ大きな瞳。ぷるぷるの唇のその可愛らしい中性的な風貌の生徒の身体は、恐怖からか子犬のように少し震えており、それを見たモヒカンが嬉しそうに顔を歪め、長い舌を出して舌なめずりをした。
【ちなみに那楼学園は完全男子校なのである! 登場人物は全員男なので間違えないように!】
「甘栗ちゃんよぉ! 大人しく寄越せば痛い目見なくて済むんだぜぇ?」モヒカンが甘栗と呼ばれた生徒の襟を掴んで持ち上げる。
「からあげレモンうどんくん……こんなやり方っ、良くないよ……!」
からあげレモンうどんと呼ばれたモヒカンは「わかってねぇなあ! この学園ではこれが正しいのさ! 『欲しければ奪え』 だから俺はお前から『武勲印』を奪って那楼ランキングの上に行くんだよぉ! ここでは『武勲印』の数が! ランキングこそが全てなのさぁ!」
【『武勲印』とは!
那楼学園に入学した際に、生徒にそれぞれ10個配布されるバッジのことで、バッジ一つにつき二点が生徒に与えられている。その得点をもとに作成されるのが那楼ランキング!
この那楼学園では、ランキング上位者には全てが与えられ、下位者は奪われる。
食べる物も、寝る場所も、全てが『武勲印』によるランキングで決まるのだ!】
「どこに隠し持ってるんだぁ!? 『武勲印』寄越せよぉ!」からあげレモンうどんが甘栗の制服を無理やり引っ張って袖がギチギチと悲鳴を上げる。「やめて! やめてよぉ!」涙声で訴える甘栗。突き刺さる視線に校舎を見上げると、そこにはニヤニヤとした表情を浮かべた生徒達。
【繰り返すが、那楼学園は完全男子校であり、登場人物は全員男なのである!】
「こんなの間違ってる! この学園は間違ってる! 武勲印で争うなんておかしいよ!」甘栗が叫ぶが、返ってくるのは囃し立てる声ばかり。
誰もボクの話を聞いてくれないんだ……と甘栗が諦めかけたその時
「よぉ。那楼学園ってここでいいのかい?」
校門に、一人の男が立っていた。
襟のホックをしっかりと締め、ぐるぐるメガネに七三ヘアー。いかにも優等生といった出で立ちだが、その輝くような金色の髪が引いていた。
「ああん!? てめぇ邪魔する気か! 舐めた格好しやがって!」からあげレモンうどんが、突如現れたその男へと近寄る。
「ったく、こんな格好じゃ舐められるって言ったのによぉ。いきなりじゃねぇか」男はメガネを外して制服に仕舞うと、制服のホックとボタンを外し、金色の髪を後ろに掻き上げて逆立たせ
「オラァ!」からあげレモンうどんが拳を振り上げて男に殴りかかると、するりと交わして甘栗の正面に立つ。
「男が何泣いてんだよ。情けねぇ」
「ぐすんっ……キミは……?」
「俺か? 俺はな」
男は甘栗の言葉に答えるように
窓からこちらを見つめる全員に己の存在を宣言するように
「俺の名前は比古清十郎! この学園の頂点取りに来た男だ!
趣味は小説を書くこと! 友達募集中だ! よろしくな!」
「俺を無視するんじゃねぇ!」からあげレモンうどんがポケットからナイフを取りだし、後ろから比古に襲いかかって「比古さんっ!」甘栗が叫び声を上げ、
「知らねぇのか? ペンは剣よりも強し、だぜ?」
比古がナイフを横合いから殴りつけ、砕け散ったナイフの破片がからあげレモンうどんの頬を傷付けた。
「男前が上がったじゃねぇか」比古がそう言って、ガクガクと震えるからあげレモンうどんに近寄る。
「なんつったっけな、アレ。『武勲印』くれるんだろ? なぁ?」
比古はからあげレモンうどんから武勲印を奪い取ると、甘栗を見つめ
「さっきの『この学園は間違ってる』ってアレ。悪くなかったぜ。
……なぁ、お前の筆は、もう折れちまったか?」
甘栗は、比古の言葉に、胸の前で手をぎゅっと強く握ると
「まだだよ! ボクの筆はまだ折れてない! こんなことじゃ折れないんだ!」
甘栗の目をじっと見ていた比古は、ふん、と小さく呟くと
「九渡、いるんだろ! 出てこい」「……ここに」二人の目の前に、一人の男が立っていた。
白い制服に短く白い髪。手には金色に輝く天秤を持った、細い切れ目のその九渡と呼ばれた男に比古は「俺の武勲印、あるんだろ?」「はい、既に手続きは完了しております故」
比古は、甘栗に「ほらよっ」その武勲印を一つ、投げて渡した。
「え? どうして? こんな大事な物を!」
「大事なのはこんなもんじゃねぇ。そうだろ?」
「あっ……うん! でも」
「お前は面白そうだからな。お前はお前のやりたいことをやって、俺を楽しませてみろ」
そのための力は、九渡が与えてくれるさ。と比古は学園の校舎に向かって歩き出した。
「九渡さん、ボクは強くなれるかな?」
「私の天秤に認められなかったら死ぬだけですが、止めときますか?」
「ううん、やるよ。強くなるって、決めたんだ!」
甘栗は、手のなかの武勲印を、ぎゅっと強く握り締め、比古の背中を見つめていた。
『彼が『なろうを越えし者』ですか』
『はい。少なくとも『名狼の島』『納牢の森』二つの踏破が確認されています。他にも二つ。何者かによって踏破されたとの連絡も来ております。恐らくはヤツかと』
『あははっ! 面白いじゃない! ウィング、彼から決して目を離さないように』
『かしこまりました。弥生様』
【次回予告!
ついに那楼学園へと足を踏み入れた比古!
那楼の頂点を目指す比古の前に立ち塞がるは、学園四天王が一人。『無職の狸』!
その絶対的な特殊能力を前に、比古はどう立ち向かうのか!?
次回!那楼学園熱血編第二話『無色の理』 武勲印しねえと見逃すぜ!】
武勲印ください!w