--Sakura's Chapter-- 「ボクの心、私の心」
ふわふわ、ふわふわ。
夜空に浮かんでいるような、そんな感覚。
目を開けても、目を閉じても、見える世界は変わらない。
暗い闇。
でも、確かに感じる。とても近くに。
「おはよう。目が覚めたんだね」
うん。おはよう。って、もう夜だよね。真っ暗だもんね。
「そうだね。今は夜だ。でも、ボクが見上げる空には月と星が光っているけど」
そっか。私には見えないな。残念。
「ごめんね」
どうして謝るの?
「だって、キミが夜空を見ることが出来ないのはボクのせいでしょう?」
ううん、違う。アナタのせいじゃないよ。誰のせいでもない。
「でも、ボクはキミに酷いことをしてしまった。辛い思いをさせてしまった」
辛いのはアナタも同じ。だから私は一人じゃないし、アナタもそう。
「……確かにキミは一人じゃない。今日来た彼、キミの兄様なんだってね。とても心配していたよ」
うん。お兄はいつも私を心配してくれる。私はいつも心配かけてばっかり。
「そうなんだ?」
えっと、小さい頃ね、近所でボヤがあったの。私、火が綺麗だって思って、近付いちゃった。
その内に火の手が回って……、でもそんな危ない中でもお兄は助けに来てくれたんだよ。背中に大きな火傷までして……。
その時はすっごく反省した。もうお兄に心配かけないようにしなきゃって思った。
なのに、それからもずっと私は心配かけちゃってる。今もまた……。
「そっか……。それでも、ボクはキミが羨ましい。ボクは、ボクはやっぱり一人だから」
アナタにはアナタのお兄がいるじゃない。
「そうだけど、そうじゃない。ボクはボクだけどボクじゃないから」
アナタはアナタだよ。
今だってこうして私が傍にいる。だからやっぱり、アナタは一人じゃないよ。
「ありがとう……。けど、こんなに嬉しいのに、キミとはもうすぐ話すこともできなくなる。やっぱりボクは一人になってしまうんだ」
ううん、ならない。アナタは一人にならないよ。
大丈夫。心配しないで。
「どうして……、どうしてそんなことが言えるの?」
うん、それはね――。