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プロローグ
彼女の見る世界は汚れていた。
彼女は汚れた世界が嫌いだった。
それでも彼女は臆病で、
逃げだすこともできず、ただその場に立ち尽くしていた。
彼は今日も怒っていた。
彼女はいつもききたかった。
<どうして怒るの?>
彼女は口を開いた。しかし、口からこぼれるのはかすれた小さな吐息だけ。
彼女は彼に言葉をかけることすら怖かった。
俯く彼女。怒る彼。それに反論する無謀なもう一人の女。
彼と女が言い合っているのをただ見つめる彼女。
これが彼女の日常。
何年も何年も繰り返してきた、最悪な日常。
こんな世界なら消えてしまえばいいのに。