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泥雨びより

作者: いち


私の家には醜いお化けがいる。

頬は丸く、色は白い。

大きさは部屋に備え付けの本棚の一番上の棚にある本には届かない程度

髪は熟れてしまった玉葱と同じ色、瞳は塩化ポリ袋と同じ、黒一昔迄ゴミを回収されるために使われていたものと同じ色だ。

お化けと言うのは勿論厭味である。

それが血の分けた親族であるのだから、しかしそれを知るのは私とソレしかない。

私の名前は日南崛明日美<ヒナグチアスミ>

ソレは性格には日南崛飛鳥<ヒナグチアスカ>と言う。

私はソレをソレとしか言わない事は事実だがソレは私と似た名前を所有していた。

そもそも、私の姓は珍しいし親族である事を否定するのは難しいものだ。

ふと、朝目覚めるとソレは私の前にいた。

見慣れていた鏡に写る自分とは違うソノ人物に吐き気がした。

気持ちが悪い。

そう吐き捨てるとソレの顔は青ざめていた。

見た目だけでも不愉快なソレを何とか私は部屋に留めた。

胃の中から込み上げる嘔吐物を無理矢理飲み込み

手足の奮えを押さえ込み

皮膚から浮かび上がる発汗と眩暈は気付かないふりをして

ソレよりも強く振る舞う体制をとった。

何故そうしたかと、問われれば、私のプライドがそうさせたのだ。私と同じ苗字のものソレは多分同じ苗を祖先とし、プランターや鉢植えに分けられたものであり、元を正せば紛れも無い同じ遺伝子の配合を持っている。それが酷く私を不快にさせるのだ。

最近では、人生の三分のニを共に過ごしたミロですら姿を見せない。

お化けに恐れを成しているのだろう。

しかし、彼女も私の配下として相棒としてお化けと対面する時は常に同じ敷地内にいる。

言い忘れたが彼女は茶虎柄な猫だ。

例えば、私が寝室を出てリビングで有名なコメディアンを映すブラウン管を見つめている時に

それこそ、本物のお化けの様に気配もなく姿をソレが表した時ミロは肥満な猫から果敢なライオンに姿を替え、ソレの足の親指に牙を剥くのだ。

ライオンになったミロがソレのふくらはぎ分をバリケードする。

まったくもって褒めたたえたい、警察犬ですらソレの姿を見たら尾を振り腹を見せ服従の意志を何とか伝えようと必死になるだろう。

下手したら猫撫で声や負け犬の遠吠えをあげるかもしれない。

今もミロは果敢にお化けのふくらはぎソレの体積の7分の一程に鋭い爪を向ける。

ソレはいつも以上にイビツに歪んだ顔を向けると退散と言わんばかりに暗がりに消えていく。

良くやったミロ!

しかし、ミロは果敢な戦士である。

撤退を迎えたソレにすら更に詰め寄り暗闇に消えていく。

仕方の無い話しなのだ。

主人のためには肥満な猫だけではいられない。

ましてや、あんなお化けが出たのではミロはライオンでいる時間の方が圧倒的に長い。

私はその事実が寂しくもあり、ますますお化けが嫌いになる。



廊下を突き当たった所で、キッチンに入る。古いマンションであるためにキッチンとリビングは繋がっていないのだ。

しかしとて、それは深いため息での入場と共に我慢をしよう。

いつもながらに、自分の生活週間に反する室内を照明一つで操作する。足元に巻き付く血肉に餓えた生物にお供えをしなければならない。

短くは無い付き合いの中で嗜好も掴めたと今では自負する。

この生物は味覚にそぐわないものを差し出せば冷ややかな目を細め、そこかしこを跳ね回り悪魔の様な声を出す。どうやら最近は主人を認識したようだ。

銀色の皿に、以前は白い羽毛を纏っていた鳥の肉を載せてやると、奥歯と穿った牙を巧みに使い分け、鋭い爪で押さえ付け満足気に体内へ収めていく

低い唸り声は恐らく外部、つまり此処で言うのであれば僕自信への権勢であろう。

僕は生肉を食す様な胃袋も味覚も所持していないのだ。

例え、接待の席で奨められても箸は付けないであろう。多分、絶対に。

彼女との歪んだ生活を思えば、

接待等、夢のまた夢だ。

勿論後悔ばかりが募るけれど、

僕は此処から出れはしない。

彼女が存る限り。

この閉塞的な箱庭からは逃れる事は、僕には叶わないであろう。

読んで頂きありがとうございます。ご感想、評価よろしくお願いします。続編に生かして活きたいと思います・∀・お疲れ様でした

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