狂った歯車
使ったお題:
炎 ラーメン 神話 歯車 銃 豆腐 変装 ゲーム 悪魔
“ワープと同時に、獲物に飛び掛る。先行してるやつらからの情報を伝えるので、チェックしておけ”
海賊船団の一角をなす「ファス」号に、団長から電文が飛んだ。
ブリッジに緊張が走り、ワープへのカウントダウンが始まる。
久々のでかいヤマだ。
なにしろ、この獲物をやる為に、星を越えて仲間の船団が三つも集まっている。
いくぞ野郎ども、という船団長の合図とともに、大小五十もの海賊船が飛んだ。
窓の外から星が消え、カオスに沈む。
だがそれもわずかなことだ。
短距離ワープで獲物となる商船団の懐に飛び込み、混乱に乗じて後続の乗っ取り部隊が船ごと掻っ攫う手はずになっているのだ。
ゲームスタートだ、と「ファス」号船長がひとつ足踏みすると同時にワープアウト――星空が窓に戻る。
すぐに予定どおり甲板のハッチが開き、とても生身では持てない巨大な銃を抱えた大型ロボたちが整然と現れ、ぴしりと整列した。
さすが、見事に訓練されている。
待つことわずか。十隻からなる大きな獲物――商船たちが視界に入る。
団長の船がぶっぱなした大砲の盛大な炎を合図に、銃の連射が始まった。
反撃はあるが、拍子抜けするほど少ないものだった。
例の情報が間違っていたのか、と「ファス」号の船長は少し安堵した。獲物はでかいが、護衛には悪魔のような戦いをする連中がついているという話だったのだ。
一隻、また一隻と、獲物の船が傷つき、行動不能になっていく。
と、そこに団長から電文が飛んできた。
“このまま一気に畳み込む。まもなく乗っ取り隊が来るから、同士討ちに気をつけろ”
了解、とばかりに「ファス」号の船長は、短いピングを打ち鳴らす。
その電波を受け取ったかのように、乗っ取り隊を乗せた後続の船が、空間を切り裂いて現れた。
そして、次々と格闘戦用の比較的小型なロボを次々と放出していく。
ロボたちは、鍛えられたパイロットに操られ、獲物の船に次々と取り付いていく。さらに、「ファス」号の大型ロボも援護のため船を飛び出していった。
だが――
なにか様子がおかしかった。
突然、ロボたちが同士討ちをはじめたのだ。
いやちがう。
見たことのない船から、見方のロボに偽装、いや変装したロボたち放出され、紛れ込んでいたのだ。
変装ロボたちの戦いぶりは凄まじく、次々と味方のロボたちを蹴り倒し、叩き潰し、宇宙空間へと投げ飛ばしていった。大型ロボが距離を置き援護射撃をするが、相手の方がはるかに射撃が巧く、返り討ちにあう有様だった。
どういうことだ、完全に歯車がかみ合わなくなった。と、「ファス」号の船長は思う。
やっぱりだ、あっちには悪魔がついていたんだ。
“撤収だ!”
だが、その命令は誰にも届かなかった。
新たに現れた悪魔、地球連合の戦艦の主砲が一閃、「ファス」号を……
「なんて、SF神話みたいのを考えてるんだが」
「ふーん。で、その悪魔が地球人だと」
二人の若い男が、屋台の片隅でビール片手に語っていた。
「そういうこと」
「あんまり勝ちすぎってのどうかね。宇宙人ってそんな豆腐アタマなのか?」
「地球人が強いって設定で」
「ま、即売会ならもちっと先だから、書いてみろや。」
「やるだけやれと」
「そうだ。ほら、喋ってるうちに、ラーメンのびちまうぞ」
「いけねえ……ん?」
ふと見上げると、よく分からんものがふらふら飛んでいるのが見えた。