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交換日記

作者: 水樹雫
掲載日:2026/09/01


「交換日記やろうよ」


 高校三年の春、最終学年になったその時に彼女は言った。私は目を丸くした。なぜ今なのだ!?


 クラス替えがあったのは二年の時。つまり一年間彼女とは友達だった。同じ友達グループでもちろん仲も良い。同じ学校、同じクラス、同じグループ、これってほぼ毎日一緒にいるし、会話もやることも一緒。それで一体何を書けと?


 しかし、頼まれると断れない性格、ふたつ返事で答えた。


 返事をするとすぐにノートを渡された。ピンク色の女の子らしいノートだった。それをカバンにしまうと私は自転車で学校を後にした。


 帰り道、自転車をこぎながら考え、電車に乗ってもずっと考えていた。

 うーん、なんで私?


 彼女とは二年になりたての修学旅行で、たまたま一緒のグループになった仲だ。クラス替え直後の、まだ友達も少ないグループがくっついて修学旅行の班が出来あがった。そう、きっかけは人数合わせで一緒になっただけ。それまでは挨拶はしたけど、会話らしい会話はしていない。修学旅行でもそれぞれの友達と話してばかりで名ばかりのグループ行動だった。仲が良くなったのは修学旅行の後から。


「今修学旅行に行ったら楽しかったのにね」


 そんな話がよく出た。確かに今なら共通の話題があるから楽しいだろう。が! しかし、私達は話が合うか? 趣味が合うか? となると話は別だ。何一つ合ってない気がする。


 元々別のグループだったのも共通の話題が無かったからだ。今はクラスや行事、行動が一緒だから話が合うけれど。いつも一緒にやってたら書くことなんて無いんじゃないかなー?


 それに困ったことに私は絵が好きで、マンガやアニメが好き。彼女は文学だったり……うーん、何が好きなんだろ? 結局のところそれもわからない。


 だいたい私は文字が書けない。本を読まないから文の書き方を知らない。


…………


 悩んで悩んでその悩みを書いた。


 何を書いていいかわからないをグダグダと三行ほど。後は落書きをしてページを埋めた。


 次の日彼女にそのノート渡して、一日過ぎてノートが戻ってきた。私の日記にはとくに触れず、びっちりと家でのことが書かれていた。なるほど! と思い、次からは私も真似て日記の内容には触れず、彼女の知らない通学や家でのことを書いた。


 そのうち書くことにも慣れてきて、趣味の話も書いていった。好きなマンガの話しや絵についても。けれど、やはり趣味には興味が無いようでいつも一方通行。交換日記なのか自分の日記なのかよくわからないままノートが増えていった。


 元々一冊から始めたものだったが、彼女が書いているときに暇なのでノートを増やした。二冊のノートを交互に渡す。そしたら毎日書けるし毎日読める。微妙に会話が噛み合わない交換日記は卒業するまで続いた。


 卒業後何度か旅行や遊びにも行ったが、お互いに家庭を持って今ではすっかり疎遠になった。


あれだけ交換日記を続けていたけれど、多分彼女を理解してはいない。彼女も多分そうなのだろう。お互いに書きたいことだけを書いた交換日記だから。


 あの日記の意味は全く持ってわからない。だけど楽しかった記憶だけはある。


 彼女、元気にしてるかな?


 完

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