得意なこと
わたしの得意なこと。
得意なことのほとんどは、わたしの力によるもの。
それはいくつかあるけど、その1つにどんな場所でも見聞きできる力がある。
その力を使って、教会に来る人たちや、わたしを訪ねてくる人たちを観察していた。
そうして知ってしまった。
人間はすごく恐ろしいものなんだって。
時々、見聞きしたことを後悔したことがある。
気持ち悪くて、吐きそうになったこともある。
外では優しい顔をしているのに、家に帰ったら笑いながら鞭で人を叩いてる人を何度も見た。
子どもを裸にして触って興奮している人も、死体に興奮している人も、首を絞めて笑っている人も。
初めて人間に裏表があるんだって、その時気がついた。
それから、全てを疑うようになってしまった。
疑うようになってから、正直な人と嘘つきな人の区別もつくようになった。
良い人と悪い人の区別も。
全てを疑わなくて済むようになって、それからはちょっと息がしやすくなった。
わたしがその時のことを思い出して俯いていると、アルがソファの方に来てくれた。
そのままアルがひょいっと抱き上げて、ソファに座ったアルの膝の上に乗せてくれた。
そしてぎゅっとして、背中をポンポン。
わたしもぎゅっと抱きついて、アルの身体を抱きしめる。
トク トク トク
心臓の音がゆっくりで、とても安心する。
あったかい。
「聞いてもいいか?」
「……うん?」
反応が遅れた。
ちょっとウトウトしてた。
「前のとこで、どんな生活をしていたのか。」
前のところ。
教会の、聖女としての生活。
「朝早くに起きて、禊ぎをするの。神像の前でお祈りして、毎日数えきれない人と会って、訪ねてきた人の願いを聞いて叶えるの。あとは結界を張ったり、治療をしたり。休憩時間なんてなくて、食事は1日一回。味の薄いスープと硬いパン一個。あったかくなくて、冷たくて美味しくなかった。」
アルは黙ったまま、背中をポンポンしてくれていた。
だから、落ち着いて話すことができた。
思い出すのも嫌だと思っていたのに、アルの側にいれば平気だった。
平気じゃないことも、平気になった。
「たくさん、頑張ったな。」
「うん……うん。頑張ったの。褒めて。」
「ああ。よく頑張った。偉かったぞ。」
「うん……うん、うん。」
辛かった教会での生活が、ちっちゃかったわたしが、救われたような気がした。
アルなら、今よりもずっとちっちゃかったわたしも抱きしめてくれる。
それを想像するだけで、心の奥がホワホワしてくる。
やっぱりアルは、優しい人。
そして、わたしを救ってくれるすごい人。
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