いろんな色
涙を流れるまま流していると、アルが布で拭いてくれた。
けれど、全然止まらない。
どうしよう。
今度こそ、怒られる?
アルをチラチラ見ていると、気づいてくれた。
「どうした?」
「怒らない?」
「怒る?なんで?」
「ずっと泣いてるから……」
「泣きたければ泣けばいい。子どもは、泣くものだ。」
「アルにも、子どもいるの?」
アルがギョッとした。
「いねぇよ!いねぇからな!?俺、まだ20だから!」
「……え……」
「え?」
「え?」
「えー……」
びっくり。
びっくりしすぎて、涙が止まった。
もっと年上だと思ってた。
アルが項垂れてしまった。
「ごめんなさい?」
「いや、いいよ……よくないけど……いい。」
いいの?
ダメなの?
どっちなの?
アルって不思議。
「よし!メシ食ったら、買い物行くぞ!」
「買い物?行っていいの?」
「もちろん。でなきゃ、いるものとか、欲しいものがわかんないだろ?お兄さんは、これでもお金持ってるから!欲しいもの言えよ。」
「欲しいもの……欲しいもの……?」
なんだろう?
わたしの、欲しいもの。
欲しいと思ったことがない。
思うことは、許されなかった。
「難しく考えなくていい。行って見てから、決めればいいからな。」
「うん。」
アルは優しい。
とっても優しい人だ。
きっと、アルより優しい人なんて、いないと思う。
ずっと、アルと一緒にいられたらいいなぁ。
アルが食器を1つにまとめて、片手でお盆を持った。
そして、もう片腕にはわたし。
アルの左腕の上にお尻を乗っけて、ちょこんと座る。
手はアルの首にぎゅっ。
アルはその状態で器用に扉を開けた。
廊下は暗い茶色で統一されていた。
白ばかり見ていたせいか、色があるとすごく落ち着く。
「あれ、ギルマスお出かけですか?」
「ああ、ちょっと出てくる。あと、これ頼むわ。」
「了解っす。いってらっしゃい!おチビもいってら〜」
「い、いってきます!」
びっくりした。
見たことないのに、声かけてくれた。
お盆も持っていってくれた。
アルの周りには、優しい人しかいないのかな?
「ねぇ、アル。」
「ん?」
「ギルマスって、なに?」
「ああ。ギルドマスターの略称だな。まぁ、気にしなくていいぞ。また、今度色々教えてやる。」
「わかった。」
アルが教えてくれると言うなら、教えてくれるのだろう。
教会の人みたいに、嘘ついたりしない。
教会の人たちは、嘘つきばっかりだった。
嘘をつかれたら、すぐにわかった。
嘘をつくくらいなら、喋らなかったらいいのにって、何回も思った。
廊下を歩いて、何回か階段を降りて登って、そうして建物の外に出た。
人通りの少ない路地裏から出ると、一気に色が溢れた。
赤、黄、青、緑……
たくさんの色。
白じゃない色。
少し目に痛かったけど、それでもずっと眺めていたい。
「さて、まずは服一式とだな。」
「うん!」
心臓がドキドキする。
これが、ワクワクするってことなのかな。
アルと出会ってから、色んな感情が理解できるようになった。
もっとたくさん、知ることができたらいいなぁ。




