ぬくぬく
ぬくぬく、ふわふわ。
もしかしたら、ここが雲の上なのかも。
雲の上は冷たいと思っていたのに、本当はあったかいのかな?
そういえば、雲は美味しそうだったけど、食べられるのかな?
今、食べてみようかな?
ぱくっ
はむはむ
あったかくて柔らかいけど、噛みきれない。
それに、美味しくない?
はむはむはむ
やっぱり、美味しくない……
「ふはっ!」
声……人の声!?
雲を放して、ガバッと起き上がると、知らない場所にいた。
ここ……どこ?
教会じゃない。
だって、黒いもの。
教会は、白って決まってる。
キョロキョロと部屋の中を見渡すと、拾ってくれた人……アルが、お盆を片手に1つずつ持って立っていた。
「おはよ。クロネコってのは、お前が一番似合うな。いや、お前の場合は、シロネコか?」
「……にゃー?」
「ふはっ!なんだ、それ!」
クククッとお腹を押さえてる、アル。
ずっと笑ってる。
目があった時から、ずっと。
なんで?
「布団なんか食べて、どんな夢見てたんだ?」
「ふとん……?ふとんは、こんなにぬくぬくじゃないの。冷たいものなの。それにふわふわでもないこの雲は、どこから持ってきたの?」
そう、ふとんは、向こう側が見えるくらいペラペラで、とても冷たいの。
だから、これは違う。
「……」
ピタリと笑い声が止まる。
「……?」
私が首を傾けると、また笑ってくれた。
静かな笑い方だったけど。
「布団には、色んなのがある。だから、それも布団だ。」
「そうなんだぁ。ふとん、すごいね。」
ぐぅ〜〜
お腹を、右手で押さえる。
いつもは鳴かないのに、今日は鳴いた。
鳴いたら、怒られちゃう。
そっとアルを見たけど、怒って……ない?
そういえば、アルは一度も怒ってない?
コテン、コテン、と、首を傾げて考えるけど、なんでなのかわからない。
怒られたら理由を考えないといけないけど、笑っているから大丈夫かな?
「メシにするか。」
「メシ?」
「ご飯、な。ご飯。」
「ご飯!」
「起きれるか?起きれるなら、こっちのテーブルで食べるぞ。」
「うん!」
ふわふわで、あったかいふとんとお別れして、ベッドから降り……お……降りれない……
「ほれ。」
足をジタバタさせていると、アルが脇に手を入れて持ち上げてくれた。
そしてそのまま、テーブルのイスに座らせてくれた。
優しい。
「ありがとう。」
「おう。」
わたしの前に、お盆が1つ。
アルが前の席に座って、その前にもお盆が1つ。
「一緒?」
「嫌か?」
「一緒がいい!」
「そうか。」
わたしは胸の前で手を組んで、「感謝します」と呟いて、スプーンを手に取った。
「これは?」
「パン粥。胃が小さいから、柔らかいものから慣らさないとな。」
「パン粥……」
スプーンでひとすくい。
ぱくっ
はふっはふっ
あったかい。
初めて食べた、パン粥。
初めて食べた、あったかい食べ物。
「美味しい……」
もっと味わいたいのに、手が震える。
もっと見たいのに、世界が揺れる。
また、涙が頬を濡らす。
ちょっと、しょっぱい。
でも、美味しい。
優しい味。
たぶん、これが優しい味だと思った。




