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拾われた


わたしは早く街から離れるために、止まることなく歩き続けた。


街道はダメ。

すぐに見つかってしまう。

森に行こう。

わたしは小さいから、森に隠れられる。


時間制限は、午前5時まで。

午前5時になって起きてこなかったら、部屋に入られる。

そうしたら、部屋にいないことがバレちゃう。

部屋にいなかったら、捜索隊が出される。

きっとわたしの足より、ずっと早い。

それまでに、できるだけ遠くへ。


わたしは足の痛みを無視して、止まろうとする気持ちも無視して、ただひたすら歩き続けた。


森に入ってからは、さらに歩く速度が遅くなった。

足下がゴツゴツしていて、躓きそうになる。

不意に枝が伸びていて、ヒラヒラした服や長い髪を引っ掛ける。


それでも前へ、前へ。


木々の隙間や頭上から、魔物や動物がのぞいてる。

わたしが望まない限り、彼らはわたしに近づかない。

だって、わたしの方がずっと強いから。

本能的に避けられてしまう。

でも、今はそれでいい。

足を止めている時間がないから。





ハァハァハァ……


もう、お日さまが頂点に来ている。

きっと、捜索隊が出されているはず。

見つかったら、何をされるんだろう。


焦りで注意が疎かになる。


「あっ……」


何かに足を取られた。

止まってしまった。

倒れてしまった。

足が震える。

力が入らない。


ダメ!

ここで倒れるわけには、いかないのに!

動いて!

動け!


起き上がって足を引きずるけど、また倒れる。


ああ……もう……ダ、メ……


「あれ?何これ?」


身体が宙に浮かんだ。


違う、誰かに捕まった。


襟首を持たれ、子猫のようにプラーンとぶら下げられる。

その誰かと、目があった。


「ん?子ども?」


一切動けないわたしは、ただ黙って彼を見つめる。


動けない。

動く気力がない。

口を開くのも億劫だ。

疲れた。


「なんか面白そうだから、持ってかーえろっと。」


肩に担ぎ上げられた。

空腹の胃が痛い。


彼が歩くたびに揺られて、肩が胃に刺さる。


「あ!ギルマス〜!なんか、拾った〜!」


「捨ててこい!」


「え、やだよー。ちっこいし、ペットにちょうど良くない?」


「ペットって、お前、それ、人間の子どもだぞ。」


「でもこんなところに一人でいるんだから、捨てられたんでしょ?拾ったもん勝ちだよー」


「ちょっと貸せ。」


「ほい。」


ポーンと投げられて、別の男の人の腕に収まる。

脇を持たれて、再びプラーン。

お互いジーッと見つめ合う。


「随分、子どもらしくない目だな。」


真っ黒で、飲み込まれそうな目。

目が離せないほど、綺麗な黒。

わたしと正反対の色。


「一緒に来るか?」


コクリと頷く。


拾ってくれるらしい。

ぜひ、拾って欲しい。

できることなら、なんでもするよ?

一家に一人、聖女がいれば便利だよ?

役に立つよ?


「名前は?」


「……呼んで、くれるの?」


「呼ぶから、聞いてるんだろう?」


「……ユフィーレ。」


「俺はアルトゥール。」


「アルトゥール……アル……」


「なんだ、ユフィーレ。」


「アル……アル……アル……」


「お、おいっ!?」


目から水が流れて、頬を伝う。


これが涙というものか。

知らなかった。

悲しくなくても、涙が出るんだ。


初めて、名前を呼ばれた。

呼んで、くれた。


涙が止まらなかった。






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― 新着の感想 ―
うわぁーよかったよぉ! アルトゥールさん、早急に温かいご飯を是非お願いします!
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