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聖女は逃げ出した  作者: 氷桜 零
第1章
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ただいま


アルの腕に抱っこされて部屋の外に出ると、通路にはたくさんの人が血を流して倒れていた。

アルはそれを、器用に避けながら歩いている。


元聖女として、人の死について何かを思わないといけないけど、教会での経験でいろいろと麻痺してしまった。

アルとの出会いや優しさに触れて、少しずつ自分の気持ちを知ることができるようになったけど、心が動かないこともあるのだと、この瞬間わかった。

また一つ、自分のことを知ることができた。


ぼーっと眺めていると、アルがわたしの頭を肩に押し付けた。

わたしはそれに逆らわず、倒れている人から視線を逸らした。

そしたらアルが頭を撫でてくれたので、正解だったのかも。


大勢の人の気配と声で騒がしい場所を通り抜け、静かな外に出た。

少し肌寒い風が吹いていたけど、アルの腕の中はやっぱりあったかくてほっとする。

そのあったかさに安心していると、撫で撫でポンポンがやってきた。


これはダメだ。

眠たくなってしまう。

ダメなのに。


まだ……寝たく、ない……の……に……


わたしはいつの間にか、アルの腕の中で眠りについてしまった。






日差しに照らされて、ぱちっと目が覚めた。

いつもの、慣れたアルの部屋。


いつの間に、帰ってきたの?

どのくらい、眠っていたの?


まだはっきりとしない頭でぼんやりと考えていると、部屋の扉が開いて、アルが顔を出した。


「お!起きたな。おはようって言っても、もう昼だけど。」


「おはよう、アル。帰ってきた?」


「ああ。こっちの方が安心して寝れるだろう?(夜通し馬で駆けたことは言わない)」


「うん。確かに安心して眠れた。でも、アルがいれば、どこでも安心して寝れるよ?」


「うぐっ……」


なんだろう?

アルが胸を抑えて蹲った。


「アル?」


「……いや、何でもない。大丈夫だ。(攻撃力がいつもより高かっただけだ)」


怪我してないならいいけど……

不思議なアルだね?


「さて、着替えて食堂に行くぞ。お腹空いてるだろ?」


「ご飯っ!」


わたしはバタバタと急いでベッドから降りると、クローゼットから服を取り出した。

アルは扉の外で待っててくれてる。


「お待たせっ!ご飯!」


「よし、行くか。」


ご飯♪ ご飯♪ 


鼻歌を歌いながら、アルの手をめいいっぱい引っ張る。


廊下ですれ違った皆んなから、「おかえり」って言ってもらって、余計に嬉しくなった。

もちろん、わたしの返事は……


「ただいま!!」


だよ!


「おかえり」って言ってくれることも、「ただいま」って言えることも、何よりも嬉しいことだって、わたしはもう知っている。

これからもずっと言いたい。


「ただいま」って。






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― 新着の感想 ―
一気読みしたが面白い 子供視点でほんわかした感じで語られるのに力はすごくて色んなことを知ってて好奇心で普通の子より色んな事をしちゃうのが話の展開的に分かりやすい 子供視点のほんわかな感じも好き 闇ギ…
ぐふっ
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