お迎え
この場所に閉じ込められてから、誰も訪ねてくる人がいなかった。
そのせいか、気を抜いて、壁に寄りかかってウトウトし始めていた時だった。
部屋の外からドタバタと足音が響いてきた。
そして、何を言っているのかわからない怒鳴り声も。
間違いなく、緊急事態が起こっている。
それも、かなり大きな。
今この時に起こる緊急事態なんて、1つしか考えられなかった。
きっとアルのお迎えだ。
そうに違いない。
他の子が怯えて奥の隅っこに固まるが、わたしは檻のすぐ手前まで近づいて、その時を今か今かと待っていた。
「あ、危ないよ……」
最初に声をかけてくれた女の子が、わたしに注意をする。
でも、何の心配もない。
わたしは何が起きているのか、ちゃんとわかっているから。
だって、アルにプレゼントしたピアスが、近くにあるってわかるから。
つまり、アルが近くにいるということだ。
「大丈夫だよ。わたしのお迎えだから。」
「え……?」
まぁ、他の子がわからないのは仕方がない。
けど、わたしを止めないでね。
わたしはただその時を、扉をじっと見つめて待っていた。
そして、扉が目の前で内側に吹っ飛んでいった。
「ここか!?」
「アル!ここにいるよ!」
「はぁ……」
アルと目があった瞬間、とてつもない安心感がわたしを包んだ。
アルがこちらに歩いてくるのを見て、わたしはアルに飛びついた。
「アル!」
「よかった……」
慣れたアルの体温だ。
あったかくて、とっても優しい温度。
「怪我は?何処か、悪いところは?」
「何にもないよ。大丈夫!」
「そうか……ってか、今どうやって、あそこから出てきたんだ?」
わたしはアルの首に抱きついて、スリスリと頭を押し付ける。
わたしの心が満足するまでスリスリしてから、アルの疑問に答える。
「転移だよ。」
「……は……はあ!?」
「だから、転移。なんかやったら、できちゃった。」
えへっ
わたしの、アルに対する愛の力だよねっ!
アルのところにいち早く行きたいって思いながら、魔力を解放したら、なんかできた。
「えぇぇ……そんな、簡単にできるもんじゃ、ないんだがな……」
できたものは、できたんだ。
あんまり細かいことを考えていたらハゲちゃうよ?
気にしない、気にしない。
わたしはアルに会えたから、なんだっていい。
それが全てなんだから。
機嫌良くアルに抱きついていると、そんなわたしを見たアルも、いろいろと諦めがついたみたい。
一つため息を溢すと、アルは立ち上がった。
「攫われた子だな?もうすぐ自警団が来るから、ここで大人しくしてろよ。」
アルがその言葉だけ言い置くと、入ってきた扉に向かった。
「じゃあね!」
短い時間だったけど一緒に過ごしていたので、わたしは手を振ってお別れだけ言っておいた。
彼らの顔は、終始、ポカンとしていた。




