帰宅
雑貨屋さんを出てから、ノインと一緒に武器屋さんに行ったり服屋さんに行った。
そうこうしているうちに、もう夕暮れ時。
内緒の買い物に出かけて、2時間は経っている。
ノインと相談して、そろそろ帰ろうとなった時。
「見つけたーー!!!」
前方から聞き覚えがとってもある声が、わたしたちに向けられた。
思わず、「見つかったーー!」と、言いたくなってしまった。
人並みを掻き分けてやってきたのは、案の定、ロシュアだった。
ロシュアはよくアルの執務室に出入りしているので、側近クラスの人だと思う。
アルも、ロシュアのことを信頼しているように見えた。
「何やってる!?」
「「ごめんなさいっ!!」」
反射的に、わたしたちは謝っていた。
ロシュアの眉が、見事に吊り上がっていた。
「ノイン、弁明は後で聞く。ユフィーレ、アルとちゃんと話しなさい。」
「「はい……」」
たぶん、お説教されると思う。
すごく怒っているかもしれない。
そう思うと、今更ながらに不安になってきた。
怒鳴られる?
叩かれる?
捨てられる?
嫌な想像が、頭をいっぱいにする。
泣いちゃダメ。
わたしが悪いんだから。
人が死んでしまった時のような空気になってしまった。
「おかえり。」
「た、ただいま……」
「戻りました……」
「ノインはロシュアについていけ。」
「はい!」
頼みの綱であるノインもロシュアも、いなくなってしまった。
わたしは、顔を上げるのが怖かった。
どんな顔をされているか、わからなかったから余計だ。
服の端をぎゅっと握って、何があっても耐えられるように、身体に力を入れた。
「ご、ごめ……」
「心配した。」
静かに、囁くように、アルが呟いた。
「誘拐されて泣いているかもって、迷子になって泣いているかもって、もう戻ってこなかったらどうしようって、ここが嫌いになったのかなって、そう思った。」
「ち、違っ……!」
ここを嫌うなんて、アルを嫌うなんてありえない。
戻ってこないなんて、そんなこと考えたこともない。
それを伝えようと、顔を咄嗟に上げると、アルの顔が見えた。
アルの顔は、怒っても無表情でもなかった。
「あ……」
アルは、静かに涙を流していた。
自分で気づいていないみたいに、静かに泣いていた。
その目はとても仄暗く、悲しみで傷ついていた。
わたしはアルに駆け寄り、アルに飛びついた。
「ごめ……ごめん、なさいー!ごめん……ごめん……なさい!アル……アルゥー!」
飛びついて、くっついて、わんわん泣くわたしを、アルは優しく抱きしめてくれた。
その力はいつもより強かったけど、心の方がずっと痛かった。
これが人を傷つけることなんだと、初めて知った。
心が痛くて、悲しくて、苦しかった。
わたしが泣き疲れてそのまま眠ってしまうまで、アルはずっと無言で抱きしめてくれていた。




