手当て
硬直状態の空気を破ったのは、アルだった。
わたしと男性の間に入り込むと、わたしを庇うように背を向けた。
「お前、入るなら玄関から入れ。」
「いや〜ごめん、ごめん。僕らの出入り口っていつも窓なんだよね。」
「お前らの常識なんか知るか。」
「……アルトゥールくん、すごく怒ってる?」
「お前を今すぐ、穴だらけにしたいくらいには。」
「わお!怒ったアルトゥールくんは、相手にしたくないんだよね!だから僕はこれで失礼するよ。」
「お前の部下も、持って帰れ。」
「はーい。じゃあね、おチビちゃん!」
トスッ
「ちっ!」
軽い音がした。
なんの音なんだろう?
そっとアルの背から窺うと、ナイフが根本まで扉に刺さっていた。
つまり、あの音はナイフが刺さった音なんだろう。
アル、そんなにあの人のこと、嫌いなんだね。
今度はアルがあの人に会わなくて済むようにしよう。
わたしは1人、そう決意した。
「ユフィーレ、怪我はないな?」
「うん。アルは?」
「俺は問題ないが、下の奴らが少しな。」
「お手伝い!する!治療なら、得意だから。」
「いいのか?」
「うん!」
「じゃあ、頼む。一緒に行くか。」
「うん。」
アルは片腕でわたしを抱き上げた。
いつも思うけど、重くないのかな?
「あ、アル。ナイフ抜いて。」
「ん?ああ。」
扉に刺さったナイフをそのままにして部屋を出ようとしていたので、ナイフを抜いてもらった。
ついでに扉が可哀想なので、穴が空いた場所を撫でて、扉を修復しておく。
「おお!助かった。ありがとな。」
「うん。」
また頭を撫でてくれた。
嬉しい。
アルは日に日に、撫でポン(撫で撫でポンポン)の技術が高くなっている。
そのうちアルの撫でポンがないと、生きていけない身体にされそう。
今のわたしは、そんな平和な考え事をする余裕があった。
「おー、お前ら無事か?ヘマして死んだやつは?」
「そんなやついませんって〜痛って……」
「お前たち喜べ。ユフィーレが治療してくれるそうだ。」
「え……ユフィーレちゃんが!?こんな汚い奴ら放って置きなよ〜」
「そうそう、死にはしないんだし。」
「おいっ。せっかくのユフィーレちゃんのヨシヨシだぞ!これでいつでも死ねる!」
「死ぬな、阿呆。」
ワイワイ、ガヤガヤ、皆んな元気そう?
でも、ここまで来たから、治療、治療。
わたしはアルに降ろしてもらったけど、これだけ怪我人が多いなら、範囲治癒の方が良さそう。
胸の前で手を組み、目を閉じて力を解放する。
光る蔦が足元からわたしに絡みつき、幻想的な光の花を咲かせる。
風もないのに花弁が舞って、その場にいる全員の上に降り注いだ。
その現象は、全員の怪我が治るまで続いた。
軽傷者も重症者も関係なく、全ての人間を癒やしきった。




