襲撃
初めてアルの執務室に行ってから、毎日わたしはそこで過ごしている。
わたしが執務室にいるのに慣れた頃、同時にアルの部下の人もわたしに慣れたみたい。
皆んな執務室に来る時に、絵本とかお菓子とかいろいろ持ってきてくれるようになった。
わたしはそれを密かに楽しみにしている。
けど、お菓子はたまにアルに没収される。
食べ過ぎはよくないんだって。
悲しかったけど、わたしを思っての言葉だって知っているから、言うことをきく。
そしたらアルが頭を撫でて、褒めてくれる。
今日も、特等席となったソファに座りながら絵本を読んでいると、扉の外が騒がしくなった。
わたしとアルが同時に顔を上げると、扉が勢いよく開いた。
「ギルマス!襲撃です!闇ギルドバンパーの奴らです!」
「ああ、うん。バンパーじゃなくて、バイパーな。いい加減覚えてやれよ。あいつらいっつも泣いてるんだから。」
「あ、すいません!……じゃなくて!」
「わかってる。先に行ってろ。どうせいつもの傍迷惑な遊びだろう。」
「うすっ!」
バンパーとバイパー、確かに間違えそう。
名前は間違えられたら、悲しいよね。
「と、言うわけだから、ちょっと出てくる。ユフィーレは、そこを動くなよ。危ないからな。」
アルは本棚を操作して、扉のように開いた。
本棚は目隠しでもあったみたい。
開いた先には、よくわからないたくさんの武器や薬瓶が飾ってあった。
そこからいくつか取り出して装着すると、本棚を元に戻した。
アルもその襲撃?遊び?を、なんとかしに行くみたい。
「うん。いってらっしゃい。」
「おう。」
アルは片手を振ると、部屋から出て行った。
アルがいなくなってから、5冊目の絵本を読み終わった時だった。
窓が閉まっていたはずなのに、風が頬を撫でる。
「アルトゥールくん、やっほー……あれ?いない?んー……君、誰?」
知らない男性に顔を覗きこまれて、手元に影が落ちる。
「…………」
知らない人とは、話をしない。
アルとのお約束。
「ま、いいや。アルトゥールくんは?もしかして、下行っちゃった?」
コクンと一つ頷いて、絵本を閉じる。
大丈夫。
冷静に。
ゆっくり動く。
絵本をソファに置いて、ヒョウのぬいぐるみを抱っこしながら、彼から距離を取る。
「んー……君を連れて行ったら、面白いかなぁ?」
獲物を見つけた蛇みたいな顔。
背筋が寒くなる。
あの笑顔は、ダメなやつだ。
教会に来ていた貴族と同じ、嫌な笑顔。
彼がわたしに向かって、片手を伸ばした。
バチッ
「痛ったー!?何これ、結界!?あいつ、そんなに過保護なの!?意外過ぎるんだけど!」
よかった。
反撃付きの結界が効いた。
アルが出て行ってから、念のために張っておいて正解だった。
大丈夫、心配しないでいい。
きっとアルが来てくれるから。
だから、大丈夫。




