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ダンジョンエレベーターガール=D.E.G=  作者: 千ノ葉


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第8話 受付嬢ソフィアちゃん

楓は体のだるさを感じて、目が覚める。

硬い床のせいで背中が痛い。

寝袋を片付け、

シャワーを使って顔を洗い口をゆすぐ。


身だしなみを整え、機械室から出る。

あらためてRF階を見るが何もない。

窓すらもない。屋上ということで、

眺めなど期待したが、

どうやら外を見ることは叶わないらしい。


そもそもボタンを押して2階より早く着くのだ。

本当にここが最上階かすら分からなかった。



エレベータに乗って1階へ降りる。


チーン



1階に着くと、すでに日が昇っていた。

吹き込む風が気持ちいい。

ナディアはエレベータ前で

野営の片付けをしていた。


「おはようございます」


彼女に声をかけるが、頭を軽く下げるだけだった。

気まずいと思っていたら助け舟が。

シオンとイザベラがこっちへ向かってくる。


「おはよう! カエデさん昨日は眠れた?」

「シオンさん! 

 イザベラさん! おはようございます! 

 ちょっと寝にくかったです」


楓は苦笑して答える。


「ははっ、それは大変だったな。

 案外元気そう安心した」


楓は雑談を交え彼らにも

機械室の件を共有することにした。


「なるほど。機械室か……

 そんなものまであるんだね」


「うん……でも何もないですし、

 トイレとシャワーくらいしか無いです」


「シャワー?」

イザベラが興味ありそうだったので、

簡易シャワーを不思議な力で設置できたという

ことを伝える。


「へぇ。機械室というのに便利なものもあるのね。

 私たちは安宿しか取れなかったので、

 湯浴みしか出来なかったのよ」


イザベラにとって昨日の宿は不満だったらしい。


二人の要望でRF階を見ることになった。

だが、結果は二人とも壁に阻まれRF

階に出ることは叶わなかった。


まるで楓が1階でエレベーターから

出られないように、

彼らも透明な壁に阻まれてエレベーターから

RFのフロアに出ることは叶わなかった。


「うーん……残念」

「まあまあ。シオン。仕方ないじゃない。

RF階はカエデさん専用ということで」


二人は落胆するが、

気を取り直して1階に戻り、これからの話をする。


「おっ、三人とも早いな」


シルベーヌが片手をあげこちらに挨拶する。

隣には知らない女の子だ。


「おはよう。シルベーヌ。今日は早いね」


シオンが返す。

横の女の子はシオンを見てはにかんでいた。


「とりあえず、

 カエデ嬢にコイツを紹介しなきゃと思ってな」


彼女は礼をする。

どうやら楓より二回りくらい年下らしい。

茶髪の長いくるんとした髪が可愛らしい。


「ダンジョニア王国、

 ダンジョン管理課所属のソフィアです。」


彼女は深々と頭を下げる。


「は、はじめまして。私、犬飼 楓と言います。

 ダンジョンマスターを任されております」


楓もつられて頭を下げる。


「カエデ嬢は分からないことだらけだろうからな。 優秀な助手を引き抜いてきてやった」


「そ、そうなんですか?」


「はい。ダンジョン運営のお手伝いなら

 任せてください」


ソフィアは胸を張る。たわわな胸がゆさりと

揺れた。


この世界の人はどの人も豊潤なバディだ。

楓は貧相な自分の体を見て、

ため息をついた。


「まあ、頼もしい限りだね」

「う、うん。助かる」


シオンとイザベラも感心する。

楓は助っ人を得られて一安心だ。



ダンジョンの正式登録はほぼ済んでおり、

早速明日解放されるらしい。


「明日って早すぎでは!?」


楓は驚くが、遅いくらいらしい。

普通ダンジョンは現れた瞬間、攻略を急がれるのは

よくある話で、1日で全ての宝を取り尽くされた

ダンジョンもあるらしい。



早速ソフィアと打ち合わせを行う。


「開放日、初日となれば、

 人もかなり来ると思われるので、

 それ相応の準備が必要ですね」


まるで開店初日の大手チェーンのような雰囲気だ。

2人でダンジョンの管理マニュアルを見ながら

細かい点を決めていく。


「なるほど。このダンジョンは

 かなり特殊なのですね」


ソフィアはダンジョンのルールを一つずつ箇条書きにしていく。


①ダンジョン1から100階。1階は入り口で各1階につき、ボスが1体。


②24時間誰も立ち入らなかった階はリセットされる。ダンジョンの中に人がいればリセットカウンターは進まない。


③各階に入れる人数はエレベーターの荷重まで。

パーティが入れ替わるのは可能。

死亡した人は荷重0として数えらる。


④各階の出入り口はエレベーターのみ。

乗り場からボタンを押せば管理者の許可で

エレベーターを動かすことが可能。

1階間の移動時間は30秒。


⑤冒険者はダンジョンに入る際に入場料が必要。

2層は無料。

3層より上の階にはボタンを押す前に階への入場料が必要。ちなみに3層は1000ゴルド。


1ゴルドで飴玉1個くらいを買えるらしいので1ゴルド=10円として覚えておく。


別途ダンジョン受付時に1パーティ1万ゴルドを払うことになる。それがダンジョンの運営費や人件費、

税金となる。


⑥ダンジョンでのドロップ品はすべて冒険者の所有物となるが、死亡時ケガなどがあっても

 ダンジョン運営者は一切責任を持たない。


⑦ダンジョンの入る順番は基本的に予約制であるが、急なキャンセルや有事の際は

 キャンセル待ちの人に順番を譲ることもある。


⑧ダンジョン営業時間は9時~17時で 12時~13時はお昼休憩となる。

 17時以降までダンジョンから出れない場合は

 脱出が翌日9時となる。


⑨エレベータ内で冒険者用ショップを使用できる。


⑩ルールを守れないものは即刻退場。出禁処置とする。

 最悪極刑もある。



ダンジョンのルールを整理し、

ソフィアはうんうんと頷いた。


「とりあえず、こんなところですね。

 このルールを掲示板を作って貼ると

 いいでしょう」


ソフィアは紙にルールを書くと早速

掲示板を作成。


「これをダンジョンの前に

 立てかけるといいでしょう」


ソフィアは色々とアイディアを出してくれる。


「うーん。でもふわふわしたところが

 いっぱいあるけど大丈夫かな?」


自分で説明しておいてよく分からないこと

だらけだ。まだまだマニュアルに書いていない

ルールもありそうなものだが。


「まあ、未開もダンジョンなんて

 ほとんどルールは後付けですから大丈夫です」


ダンジョン管理課というのは随分と

適当らしい。

楓は苦笑した。



「過去にも新規ダンジョンが

 入場制限をしないで解放され、

 一日ですべての宝を取りつくされて

 しまったこともありますが、まあテキトーで」


「そ、そうなの? でもテキトーでいいのかな?」


「大丈夫です! 何か問題があったら私に言ってくれれば、ダンジョン管理課に掛け合いますから」


ソフィアはニッコリ笑う。


「ありがとう。とっても助かるよ」


「とりあえず、カエデさんは

 エレベータの操作やってもらえば大丈夫です。

 あとはこちらで捌きますから」


ソフィアはエレベーターエントランスの

入口付近に窓口を設置し、

ダンジョンの運営準備を始めた。


「ところで明日の予約は決まっているの?

 誰から登るとか揉めない?」


ダンジョンの入り口は1つだ。

この小さなエレベーターに冒険者が殺到したら……

ぺちゃんこになる自分を想像して、

楓はゾッとした。


「はい。勇者様パーティが先行するそうです。

 彼らは15階を攻略してみるとのことで」


「シオンさんたちか……」


「はい! 勇者パーティの戦闘は

 見ていて勉強になりますよ!」


ソフィアは目をキラキラさせていた。


「ソフィアちゃん、勇者パーティ好きなの?」


「もちろんです! 憧れですよ! 国民の9割は勇者様に憧れて冒険者を志すんです!」


「そ、そうなんだ」


「カエデさん! 明日の勇者様の勇姿、しっかり見ておいてくださいね!」


「あ、あはは」


ソフィアはやる気満々だ。


「そしてそこから、熟練者パーティですね。基本的には予約は1か月先まで埋まっています」


ソフィアに説明を受け、

楓は今更ながら恐ろしくなる。


「い、1ヵ月先まで予約が埋まってるの!?」


「そりゃそうですよ! こんな高い塔がいきなりできたんですもの。諸外国からも問い合わせ

 殺到で大変でした」


ソフィアは笑いながら言う。


「まあ、予約が埋まっているので

 キャンセル待ち民も多くなりますね。

 塔が出来たあたりから

 商人は簡単な屋台街を作ってるし、毎日お祭り騒 ぎですよ」


「へぇ~」


初めて外の様子を聞いて、驚いた。

確かに朝だというのに喧騒が聞こえてくる。


「なんか喧嘩してる?」


外からは金属同士がぶつかる音と歓声が。


「はい。おそらく冒険者同士が小競り合い

 しているのでしょう。よくあることですから」


ソフィアは顔色変えずに淡々とそういう。

どうやら冒険者という人たちは随分血気盛ん

らしい。


「とにかく初日は未踏破のフロアが

 いっぱいありますので効率よくパーティを

 送りましょう」


ソフィア場そう言う。



ピロン


打合せをしていると、スマホが鳴った。

見てみると、


『バベルが正式にダンジョニア王国の認定ダンジョンとなりました。管理者用ショップにアイテムが追加されます』


驚いてショップを見ると、

ダンジョンエレベーターガールの制服という

項目にnewマークがついている。


しかも初回2着無料らしい。

ソフィアも興味深そうにスマホを覗いている。

「制服が追加されたみたい」


「エレベーターガールの制服!? 見たいです!」

ソフィアが目をキラキラさせて言うので、

楓は笑ってしまう。


「うん。いいよ」


早速2着タップすると手元に制服が現れる。

制服は青と白を基調とした清楚な制服であった。


「わぁ! 素敵です。

 もしよければ着替えてもらってもよろしい

 でしょうか?」


「じゃあ着替えちゃおうかな。

 ちょっと機械室まで行ってくるね」


楓はソフィアに声をかけてエレベータに乗る。

チーン


「着替えちゃおっと」


制服の生地は高級感があり、

サイズもぴったりだ。

鏡がないのが残念だが、

着方は問題ないだろう。


「ソフィアさん。お待たせ」

「カエデさん! お似合いです!」


楓は照れ笑いする。


1階に戻ると

楓の姿を見てソフィアは驚く。


「うわぁ。すごい可愛くて洗練されたデザイン……」


楓の制服姿にソフィアは驚く。


「楓さん! この服、もう一着ないでしょうか?

 このデザインをダンジョン管理の人間に

 着せたいです! というか着たいです」


「もう一着あるけど、サイズ合うかな?」


主に胸周りを心配する楓。


「大丈夫です。仕立て屋に頼んで、あとで同じ

 デザインを作ってもらいますから!」


楓は悩む。

それでは明日のオープンにも間に合わない。

どうせなら同じ制服を着てオープンを迎えたい。


楓はスマホを見る。

幸い制服にはサイズもあるし、1着30EPと

比較的安価だ。


「よしっ」


楓は各サイズの制服のボタンをタップしていく。

空中からドザドサと制服の山が現れる。


「これ、サイズが違うんですが、ぜひ皆さんに

 配ってください」


「ええ? 良いんですか?」


「もちろん。何もできないからさ、制服くらいと

 思って」


自分はエレベーターを降りらない身。

これから随分お世話になるだろう。これくらいは

しないといけないと思う。


「ソフィアさんもどうぞ」

もう一着を渡すと、

彼女も嬉しそうに制服に着替えてきた。

貧相な自分と比べて、美人に制服は

映える。



「なんだか、仲間になったみたいで嬉しいです!」


ソフィアははにかんで言う。



「私も嬉しい。よろしくねソフィアさん!」


「ソフィアでいいですよ」


「私も楓でいいよ」


二人は笑いあう。

異世界でとても良い出会いをしたと思った。




あっという間に翌日になる。

昨日は緊張であまり眠れなかったが、

コンディションに問題はない。

ブラック企業で働いた賜物だ。


1階で待機していると、

外から楽器の音が聞こえてくる。


どうやら祭典が始まったらしい。

外からは歓声やら人のざわつきが聞こえてくる。

領主のスピーチや、

ダンジョン管理課の偉い人の注意説明。



「ただいまより、塔のダンジョンを正式に解放する。その名はバベル。冒険者の諸君健闘を祈る!」



ワァアアアアア


外では大きな歓声が上がっている。


「さあ! ダンジョンバベル! オープンです!」


ソフィアが声を張り上げると、

受付には次々と人が入ってくる。


「カエデ。最初のパーティです」


ソフィアがそう言うと。

シオンとイザベラが入ってくる。


「わあ、カエデさん。見違えたわ。

 ずいぶんオシャレな制服ね。似合っているわよ」


「えへへ」


イザベラの言葉につい照れてしまう。


「正式解放おめでとう」


「ありがとう。シオンさん。イザベラさん。

 これからもよろしくね」


2人を前についつい雑談を挟みそうになるが、今は仕事中だ。

気を取り直して、楓は言う。


「塔のダンジョン、バベルへようこそ!

 何階に行かれますか?」


こうして犬飼 楓の

異世界での仕事は始まるのであった。


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