第3話 2階攻略開始!
1階にて扉が開くと屈強な男たちが
武器を構えていたが、
シオンが手を挙げると、
彼らはほっとした様子で武器を下げた。
「ギルドマスターは到着したか?」
シオンが言うと、初老の眼帯の男がやってきた。
歳は取っているというのに
中々引き締まったガタイを
している。
楓はまた怖い人が現れた、と戦々恐々だ。
「シオン殿。調査ご苦労であった。何か進展は?」
「シルベーヌ殿。みんなを近くに集めてほしい」
シオンはそう言うと、
「あと先に紹介しておく。
彼女はイヌカイ カエデ。
異世界ニホンより来た
エレベータの管理者らしい」
「?」
シルベーヌは首をかしげる。
「とにかくマスター。
説明が面倒だからみんなを集めて頂戴。
あと、ふわふわなクッションやら
椅子やら食料やらあれば用意して頂戴」
さらにシルベーヌは首をかしげるが、
「すぐに手配しましょう!」
イザベラに従い、部下に指示を出した。
「カエデさん。お疲れ様。この後、
ちょっと騒がしくなると思うけど我慢してね」
「はい……」
カエデはそう言うしかなかった。
すぐに冒険者たちが集まり、ダンジョンの説明が開始される。
シオンが司会をし、楓がざっくり説明。
それをイザベラがかみ砕いて民衆に伝えていく。
異質なダンジョンに冒険者たちは興味津々だ。
「とりあえず、ダンジョンの安全性を
確かめるために2層をクリアしようと思う。
誰か、パーティを組めるものはいないか?」
シオンがそう叫ぶとあたりがざわつく。
「勇者パーティと組めるだと?
一生一度のチャンスだ」
「勇者パーティとなら安全だろう……」
殆どの者が挙手をする。
「冒険者ギルドマスター、シルベーヌ殿
おすすめは誰かいるだろうか?」
シルベーヌはあたりの
冒険者と呼ばれるファンキー集団を見渡し、
「そうだな。熟練者の重盾のアルスはどうだ?」
「そうだな。彼で行こう」
アルスという巨漢は名前を呼ばれ
誇らしげに前に出る。
重盾との名の通り大きい盾を何枚も持っている。
「では15分後にダンジョンの攻略を開始する。
各々は待機せよ」
ギルドマスターが説明会を〆め、
各々は用意したテント等に戻っていった。
楓は暇だったのでスマホを操作し、
良いことに気づいた。
まず、このスマホのバッテリーは充電状態となっているのだ。
マニュアルによればエレベータ管理区域にいる間は
電池の消耗の心配がないらしい。
スマホ中毒の現代人にはありがたい。
「あ、あの……」
スマホを夢中で操作する楓の前に
一人の男の子が声をかけてきた。
14歳ぐらいだろうか。やはり異世界人は美形だ。
「わっ? ご、ごめん。気づかなかった」
「いえ……あの、これ、差し入れです」
彼の手にはパンと入れ物に入った水が乗っていた。
「ありがとう」
手を伸ばし受け取ろうとするーー
途端にパンがぱっと消えた。
「えっ?」
楓は驚く。今度は水を受け取ろうとするのだが、
それも消えてしまう。
「あっ……譲渡不可? あれ? なんで?」
男の子は困惑する。
そこにシオンがやってきたので状況を説明する。
「ふむ……もしかして異世界人の楓にはアイテムを 渡せないのか? もしやこれもダメか?」
シオンは用意された椅子を
エレベータ内に入れようとするのだが、
床に置いた途端、椅子ははじき返されてしまった。
「ふむ……困ったな。すまないカエデ。
しばらく窮屈な思いをさせて
しまうかもしれない。
とにかく今は床にでも座って休んでくれ」
「そんなぁ……」
食べ物も家具も受け取れないなんて……
下手したら餓死してしまう。
そんな想像をし、楓はゾッとした。
楓は慌ててマニュアルを読んでいると、既定の時間が来たらしい。
3人はエレベータの前へ集合する。
「カエデ、そろそろ良いか?」
「はい。私は大丈夫です」
狭いかご内の操作盤に一番近い所に陣取り、3人に乗るように言う。
まずイザベラが入る。そしてシオンが入る。そしてアルスが窮屈そうに入るのだが、
足を踏み入れた瞬間けたたましいブザーが
聞こえてきた。
「えっ!?」
「なんなんだ!?」
見ていた冒険者たちはざわつく。
「カエデさん! 何が起きているの?」
「えっと、たぶん重量オーバーです!
アルスさん、
すいませんが降りてみてください!」
アルスが下がると、ブザー音は消えた。
「重量制限があるのか……」
「みたいですね……
えっと、重量制限は300kgらしいです……」
「なるほど。シオンはどのぐらいある?」
イザベラは問う
「俺は装備込みで135kgくらいか」
シオンは身体を見渡して。言う。
「私は装備込みで80kgってところね。
カエデさんが52kgだからーー」
「わーーっ!!」
体重を言われ、声でそれをかき消そうとするのだが、
「52+135+80=267kgか。もちろんアルスさんはそれより重いわよね」
もう一度言われた。52キロって……
楓は顔を真っ赤にする。
「オイラ215kgあるだ」
「じゃあ、残念だけどだめね」
アルスはがっかりし肩を落とした。
「33kgの冒険者は……さすがにいないわね」
仕方がないさ、と、シオンは
ギルドマスターに2人で行くと伝え、了承を得た。
「まあ、勇者の2人なら大丈夫だろうが。
気を付けてな」
「では行ってくる」
3人は気を取り直して2層の攻略を開始した。
チーンッ
2層に上がるとやはり異様な気配が漂う。
先程の冒険者の喧騒はここにはない。
「では、行ってくるよ。カエデは待っていてくれ」
「分かりました。頑張ってください
あっ、あと気をつけて下さいね……」
心配そうな楓に笑顔で答えて
シオンは颯爽と通路の奥へと消えていく。
「じゃあ私も行ってくるわね。
カエデさんも気をつけてね!」
イザベラはそう言って通路へ消える。
楓はエレベータ内に一人残されるのであった。
何もしないでここで待つのは耐えられそうもない。
早速モニタリングモードで
二人の動向を追うことにした。
二人は最初に戦闘のあった通路に辿り着く。
戦闘の跡が残っている。
やはりリセットはされてないのであろう。
「先に進もう」
シオン達は慎重に進む。
だが、またもゴブリンと遭遇したようだ。
2人は互いをカバーしながら攻撃を加え、
危なげなく勝利する。
2人はドロップアイテムを選別しながら
先へ進んでいく。
ゴブリンは単体の力は弱いが
集団戦法を得意とするようだ。
そのことを知っている勇者たちは
ゴブリンに背後を取られないように、
お互いの視覚をカバーしながら
戦っているように見える。
「うわー。息ぴったり」
楓は驚きそう漏らす。
戦闘中会話などないのに
2人の連携は完璧であった。
ずいぶんと長く一緒に
戦闘をしてきたのであろう。
戦闘と探索を続け、
30分ほど経過したあたりで分かれ道がやってくる。
「どちらだか分かる?」
シオンはイザベラに問う。
「一つは行き止まり。
一つはゴブリンの大群が待ち構えているみたい」
「あと、一つは罠の道か。
罠の道に行こう。罠があるならゴブリンも少ない だろう」
自信たっぷりのシオンの声がスマホから聞こえてくる。
「えっ? 罠の道に行くの?」
楓は驚くのだが
「了解よ!」
イザベラは迷いなくシオンの提案に乗った。




