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ダンジョンエレベーターガール=D.E.G=  作者: 千ノ葉


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第17話 強欲のグリードパーティ

管理アプリでモニタリングしている

とあっという間に時間が過ぎ、

1階にたどり着いてしまった。


「ああ!もう! もう少し見ていたかったのに!」


チン


「いい加減にしろ! 

 いつまで兄貴を待たせんだよ!」


「さっきから申しています通り、

 まもなく扉が開きますので! あっ!」


困り果てたソフィアと目があった。


そして隣にガラの悪い三人衆とも目が合った。


「おせえよ!」 


怒鳴り声が楓の鼓膜を通り、脳を揺らす。


「ひっ、も、申し訳ございません!」 


楓は咄嗟に後ずさりしてしまう。


「あん?こいつが管理者ってやつか。

 餓鬼じゃねえか」


男たちは遠慮なく、エレベータに乗ってくる。 


「おお、これがエレベータか。どれ」 


男たちは節操なくエレベータのボタンは内部をべたべたと触る。 


「動かねえじゃねえか!おい!」


「わ、私が操作しないと、動かないんです」


「じゃあどこのダンジョンが空いているんだぁ?」


一番巨体な男は楓を睨みつける。

楓は一層縮こまってしまう。 


「強欲のグリードパーティ様! ダンジョン運営者を傷つける行為は認められておりません!」


ソフィアは強く反論する。 


「ああ? 兄貴は指一本触れてねぇじゃねえか」


「くっ……」


「それとも俺らだけ、ダンジョンに入らせないってほうが差別じゃねえのかよ? こっちは朝から待っていた身だぜ」


ソフィアは悔しそうに唇を噛んだ。確かに彼らは明確なルール違反はしていない。入場料さえ払えば

このダンジョンを攻略する権利はあるのだ。


「おい女。どこのダンジョンが空いてるんだ!」


「えっと……予約がいっぱいで……2階ならばーー」


「2階って、兄貴を舐めてんのか! ワレェ!」


「ひっ……ご、ごめんなさい……」 


楓は震えながら頭を下げた。


「ちっ、これだからド田舎のやつらは嫌いなんだ」


「で、兄貴。どうします? 高層行っちゃいましょうか?」


「おい、餓鬼っ! 勇者パーティはどこに向かったんだ?」 


男たちはウズウズと待ちきれぬ様子で

楓に問いただす。


「17階に行ったばかりです!」


「17階かぁ……」


グリードと呼ばれるガラの悪い男はニヤつく。


「なら俺らが18階を攻略すれば、

勇者越えってことか……面白れぇ!」


「おっ!兄貴! 行っちゃいますか!」


「これでまた箔が付きますね!」


子分たちはグリードをもてはやす。


「よっしゃ! 女ぁ! 18階を押せ!」


楓は良いのかよくわからなくなり、ソフィアを見る。

ソフィアは軽く首を縦に振った。

それを合図に楓は思い切って18階のボタンを押すのであった――


エレベータが動き出し、

男たちの興奮は最高潮になる。

騒ぐ男たちと隅で丸くなる少女。

その姿は対照的であった。


「おい! まだつかねえのかよ!」


だがグリードはすぐに苛立ち始める。 


「お客様! あと10分くらいで着きますのでお待ちください……」


「10分……兄貴ぃ。コイツと遊びましょうぜ?」

「はぁ?そんなブ女に興味はねえよ。勝手にしろ」

「へへへ。俺はこのぐらいの方が好きなんですよ」


子分が楓に近づく。だが


「って! こいつ、なんかバリアみたいなの張られてますぜ!」


伸ばした手は不可侵のバリアにより弾かれてしまう。 


「はは。うまくできているじゃねえか。残念だったな」

「ちっ……」 


子分は諦めきれないのか、衣服から出た楓の四肢を獣のような目で

眺めていた。

楓は怯えるだけで、一言も話すことはできなかった。


『18到着です』


合成音声が流れ、扉が開く。

外には雷鳴と曇り空。

稲光が草原の草木を照らしている。


「兄貴ぃ……ここ、ヤバい雰囲気バリバリっすぜ……」

「う、うるせえ! 雷ごときにビビってられるか! 宝を売ったところを考えろ!」

「酒っ!」「女ぁ!」

「行くぜ野郎どもっ!」

「お~!」


荒くれたちは楓に見向きもせず、雷のなる平原へと消えて行った。


ボー然とした楓はハッと気づき、1階のボタンを押した。


静かなエレベータの中であるというのに、

男の怒声が耳に残っている。


「あ……ポーション……勧め忘れちゃった……」


まあいいかと楓はエレベータの一番奥の壁にもたれ掛かる。

ぼーっとして気づいた時には1階の扉が開いた。


「カエデ! まあ!」


ソフィアがエレベータ内部まで来て、楓に近寄る。


「カエデ! 泣いちゃってるの? 大丈夫?」

「あはは……ちょっと昔の上司を思い出しちゃって。怖くなっちゃった……」

「うんうん。もう怖い人いないから……大丈夫だよ」


ソフィアはハンカチを差し出してくれる。

「あっ……でも、もらったら消えちゃう……」

「大丈夫。これマッソーさんから貰ったダンジョン産のアイテムですから」

「ん……ありがと」 


楓は貰ったハンカチで涙を拭う。

ただの布だというのに心が軽くなった気がする……


「おいおい。ギルドマスター! 受付嬢泣かせてんじゃねえか! 何なんだあのグリードってパーティは?」


いつの間にかエレベータの外には冒険者の人だかりができていた。

その中にはダンジョンをクリアした見知った顔のパーティもいた。


「はぁ……強欲のグリードパーティはいつもあんな感じだ……」


シルベーヌは頭を抱える。


「そうそう。自分勝手で他のダンジョンでも他の冒険者に迷惑ばかりで」


「だが、実力は折り紙つきっていうぜ。他の高難易度ダンジョンをクリアしたって話だ」

「勇者越えも――あるかもな」


冒険者たちが持論を展開し、ザワザワと話し声が重なり合う。


「ほらっ! 見世物じゃないんですよ! バベルはもう受付時間終了です! 解散。解散!」


ソフィアがパンパンと手を鳴らし、冒険者たちを解散させる。


「管理者負けんなよ!」

「カエデさ~ん。ガンバ~っ」


一人ひとり楓にエールを送ってくれた。その声援に泣いていたことが恥ずかしくなってしまった。


「その、カエデ……まあ、よくあることだから、気にするなよ。変なことされなかったよな?」


「もう! シルベーヌさんっ! デリカシーってもんはないんですか!」


ソフィアは目を吊り上げてシルベーヌをけん制した。


「す、すまん。だが、何かあれば厳正に対処するからな。相談してくれよ」


「あはは。大丈夫ですよ。みんな私に触れないんですから。何もされてませんよ」


「そうか……ソフィア。その、カエデを頼んだぞ。例の話も兼ねてな」


「分かってます」


ソフィアは軽く頭を下げる。


「とりあえず、カエデ。今日は店じまいにしましょう。ちょっと早いけど」


「でも、勇者さんたちパーティも帰ってきていないし……」


「冒険者のみなさんはルールは把握していますから。大丈夫。明日にはみんな帰ってきますよ」


「うん……」


ソフィアに促され、楓は機械室へと上がった。


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