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ダンジョンエレベーターガール=D.E.G=  作者: 千ノ葉


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15/17

第15話 就業中の飲酒行為

そして本日も15時過ぎを回った。

この時間からダンジョンを攻略した場合、

早くても脱出時間が明日の朝になってしまう。

どの層も再生と予約で満室だし、

今日はこれでおしまいだろう。


ソフィアに今日の愚痴を聞いてもらいながら、

今日のレポートをまとめていると、

遠くから足音がしてくる。


「今からダンジョンに入れるか」


そこにいたのはボサボサの黒髪に大きな剣を

背に携えた、がっしりとした体形の男であった。


声の感じは随分ぶっきらぼうだ。

ソフィアが対応をする。


「申し訳ありません。

 ほとんどのダンジョンが

 予約で埋まってしまって」


「100階まですべて埋まったのか?」


「いえ……勇者パーティが16階を攻略中で――」


「なるほどな。

 ちょっとエレベータってやつを見せてほしい」


「はい。どうぞ」


ソフィアの言葉で男は楓の方に向かって歩いてくる。身体の大きさはマッソー3兄弟のほうが上回っているのにその迫力にたじろいてしまう。


「黒髪か――」

「えっ?」

「いや、すまん。なんでもない――」


男ははっとして口元を抑える。


「黒髪って珍しいんですよね」


ソフィアがぴょこっと顔を出し補足する。


「あっ、こちらはダンジョン管理者のカエデに

 なります。こっちはウルフさん。

 ウルフさんは今もソロで冒険者を?」


「ああ」


一人で冒険者をする人がいるんだと、

楓は感心する。


「とにかく、今から入ってしまうと出るのは明日になってしまいます。明日に予約入れておきましょうか?」


ウルフは考えるそぶりをして、


「そうだな。明日15階を予約したい」

「えっ?15階ですか?」


楓は驚く勇者パーティに追従する比較的高い層の

ダンジョンだ。

この人はあの大ムカデを倒せるのだろうか?


「はい。予約を承りました」


ソフィアは笑顔で予約を受け付けた。


「邪魔したな」


そう小さく言い残し、ウルフは去っていく。


「ソフィア。あの人大丈夫かな?

 一人だし、ダンジョンクリアできると思う?」


「ふふ。大丈夫ですよ。

 ウルフさんって巷ではかなり有名な冒険者さんで

 すもの。これまでも何回もダンジョンを一人で

 クリアしてきましたし」


「そうなんだ」


ソフィアは笑顔で答えるが、

楓にはその凄さがいまいち分からない。


「とりあえず、あとはシオンさんとイザベラさん

 かぁ。ちょっと見てみようかな」


「私も見ていいですか?」


ソフィアが肩を並べて

スマホの画面をのぞき込んでくる。


「丁度ボスの部屋っぽい……大丈夫かな?」


ソフィアはダンジョンでの

戦闘を始めてみるのだろうか。

ソワソワと身体を震わせている。


ボスエリアは洞窟の奥の巨大湖らしい。

シオンが水辺に近づいた途端、

水面が震え、大きな口が現れた。


「きゃあああああ!」

「うわあああ!」


ソフィアが耳元で叫び、

楓はスマホを落としそうになってしまう。


ソフィアの驚きとは裏腹に、シオンは冷静だった。不意を衝く噛みつきを躱し、

敵にカウンターを繰り出す。


「ワニだっ! イザベラ、雷撃だ!」

「水辺よ! うまく避けてね!

 閃光よ! 敵を穿てっ!」


イザベラが詠唱すると、

雷の玉が発射され、

大きなワニめがけて飛んでいく。


大ワニは防御姿勢を取るが、

水辺に広まった電撃は確実にダメージを与える。


シオンもタイミング良く壁に剣を突き刺し、

感電を回避している。

流石のチームワークだ。


ワニはイザベラを脅威と感じ、

イザベラに突撃してくるが、側面が隙だらけだ。

シオンの強力な斬撃だ。だが、強靭な鱗は完全には切り裂けない。だが、


「うおおおおおお!」


シオンは細腕からは想像できない馬鹿力で

ワニを身体ごと吹き飛ばす。


「すごぃ! シオンさんカッコいい!」


ソフィアは黄色い悲鳴を上げる。


大ワニは破れかぶれの突進をするが

自分より小さなシオンを捉えられず、4つ足を

一つ一つ潰され、徐々に動きが鈍くなっていく。


イザベラにとっては大チャンスだ。

長い詠唱を始め、魔力が集まる。


「穿て! ライトニングボルトっ!」


洞窟内に作られた雷雲がワニの頭上に雷を落とす。

大ワニはのたうち回り、

弱点である腹部をさらけ出す。


「とどめだ!」


シオンは大きく飛び、ワニの腹に剣を突き刺した。



大ワニは大きな断末魔を上げ、

倒れ、光になって消えて行った――


「やった~! カエデやったね!」


二人でハイタッチする。

ソフィアが肩をぎゅっと掴むものだから、

楓の制服はしわしわになってしまっていた。


「やばっ、シオン時間が――」

「そうだな。時間の制約がなかなか厳しいな……」


二人はドロップアイテムを拾い上げ、

足早にボスエリアを後にした。



『16階クリア特典としてEP15000ポイントが振り込まれます』


今日だけでかなりのEPを稼げた計算になる。

これで何か拡張もできるかもしれない。



「あっ、先行で16階の入り口に迎えにいっても

 よいかな?」


「そうですね。いってらっしゃい」


ソフィアは少し残念そうに手を振る。


その後、

勇者パーティは無事にエレベータへとたどり着く。


待機していた楓の姿を見ると、安堵したのか手を振り挨拶をしてくれた。


「お疲れ様です! クリアおめでとうございます! うわっ、二人ともびしょびしょ」


「ああ、雨にずっと当たっていたからね」

「はぁ……早くシャワーを浴びたいわ」


二人を乗せてエレベータのドアは閉まる。外で聞こえていた雨音もシャットアウトされた。


「で、お楽しみの質問タイムなんだけどさ。カエデさん! これ!」


イザベラは嬉しそうに、アイテムボックスからストロング缶を3本取り出す。


「おお! それ! とても美味しいお酒です」

「美味しいの! やった!」


ぷしゅっ――エレベータの中に久しぶりに聞いた景気の良い音が響き渡る。


この姉御、躊躇なく開けおった――


「今度はうまく開けられたね。

 さっきのコーラとかいうやつは吹き出して

 顔面直撃だったのに」


「でしょ。構造を理解したのよ。

 魔法か何かでガスを封入しているのね」


二人は真剣にアルミ缶の構造について

議論している。


「では、いただきます~」


イザベラはストロング缶(レモン味)

を煽り始めた。


ごきゅっ ごきゅっ と勢いよく、

喉を強アルコールが通っていく。


「ぷぁ! 何これ! ジュースみたい!」


イザベラは感動し声を上げた。


「ほらほら、シオンも!」

「ああ、貰おうとするか」


シオンも躊躇なくストロング缶(グレープ味)を喉へと流し込む。


「くぅ……なんだこれ!こっちの酒とは比べ物にならないっ!」


ここに来て感情を高ぶらせたシオンを初めて見たかもしれない。


「えっと、カエデさんも飲みたいの?未成年――だよね?」


羨ましさが顔に出たのか、イザベラは恐る恐る聞いた。


「いただけるんですか? ちゃんと成人してますので大丈夫です!」


食い気味にそう言うと楓はストロングキウイを受け取った。



ぷしゅ―― ああ、なんて耽美な音なのだろうか。しかも、今は就業中――

こんなことが許されて良いのだろうか。ああ、神様ありがとう――


「そ、そうだ! 乾杯しましょ!」

「かんぱい?」


勇者二人は顔を見合わせる。


「えっと、おめでたいことがあった時とかグラスや、まあ、今回の場合は缶を当ててお祝いするんですよ。かんぱーいって!」


「それがカエデの世界の礼儀なんだな。分かった」

「楽しそうね」


3人はエレベータの隅に散らばり、腕を高々上げストロング缶をぶつけた


「かんぱーいっ!」


威勢の良い声がエレベータに響き渡る。


ごきゅごきゅごきゅ―――ぷはぁ!


おじさんのような威勢の良い音が

エレベータに響き渡る。


「うわぁ、カエデさん、すごい飲みっぷり……」

「酒を煽り慣れてる……本当に未成年じゃないんだな」

「はぁ……これこれ……生き返ったぁ!」


久々に社畜の友を口にし、

楓は上機嫌なため息を吐いた。

まさか異世界に来て、

これを飲めるとは夢にも思わなかった。



それからというものダンジョンでの出来事をストロング缶の肴にして上機嫌の3人を

載せたエレベータは下降していく。

「じゃあね。カエデさん! また明日!」

「カエデ~。またよろしくね~」

「ふぁ~い^^。よろしくお願いいたします!」


1階に着いた時には3人ともいい感じに酔っぱらっていた。


「カエデ、ちょっと。お酒飲んだの?」

「あ^^;。ごめんごおめん。ちょっとだけね……」

「ずるい! 私も飲みたかった!」


勤務中にお酒を飲んだことを咎められると思いきや、この世界でお酒に関してのルールは

割と緩いらしい。


とにかく時間も来たし、ここで今日の勤務は完了だ。ストロング缶も飲めたし、

今日は大収穫な一日だった。



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