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ダンジョンエレベーターガール=D.E.G=  作者: 千ノ葉


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13/17

第13話 筋肉ダルマとバカップルと強炭酸高アルコールチューハイ

エレベータは1階に付き、扉が開くと、

次の組が目に入る。

もわっとした熱気と共に


「はぁはぁはぁ。ドアが開きましたな 

 このドアの開閉はまるでバタフライしている

 兄者のように美しい」


「おお! これがエレベータというやつか! 

 分かるぞ。シンプルながらに精錬されたボディ。

 弟者たちの背筋のようだ」


「はぁはぁ。ウォーミングアップもまだ足りないが、

 乗りましょう兄者たち!」


スクワットをしながらそっくりの三人が楓を待ち構えていた。

しかもマッチョ。しかも上半身裸で。


「紹介します。マッソー家の3兄弟様です」


「よろしく!」ムキっ


「はじめまして」ムキムキ


「早く案内をお願いします」ムキムキムキ


筋肉の壁に圧倒されてしまう。


「よ……よろしくお願いします。

 ちょっと待ってくださいね!」


楓は慌ててソフィアを近くに呼んで耳打ちする。


「何よこの筋肉ダルマ三兄弟」

「あはは。結構有名な冒険者さんなんですよ」


「こんなのに囲まれてエレベータ乗るの

 嫌なんですけど。潰れちゃう!」


「あはは。がんばってくださいね!」


ソフィアは非常にも次の冒険者たちの受付に離れてしまう。


「さあ」「おじょうさん」「ぼうけんへ!」


3人は楓を中に押しこみエレベータへと入ってくる


「おお」「これは」「せまい」


「ちょっと無理なんですけど!

 せ、せめてボタン押せるところに移動させてください!」


楓は3人を押し返し、肩で息をする。


「そもそも、なぜ裸なんですか! 

 目のやり場に困るんですけど」


「なぜって、お嬢さん。重量制限があるということで最適化したまでだ。

 なあマン兄者」


「ミンの言う通り。幸い我らの武器は筋肉! 

 筋肉さえあればなんでも解決できる!なあ、ムン!」


「そうです。膨大な魔力ですら筋肉が生み出すのです!」


3兄弟はいちいちボディビルダーのように筋肉を見せつけてくる。


「あー。分かりました。せめて詰めて入ってくださいね。

 狭いんですから。で、行先は?」


「12階にしよう」


「はいはい。わかりました」


楓は呆れながら12階にマッソー3兄弟を送る。


エレベータの会話は筋肉が中心で、楓についていける内容ではなかった。


「見たところ、お嬢さんは中肉中背のようだ。

 どうかね。これを機に筋トレでもしてみては」


余計なお世話だ――


『12階に到着ます』


チンーー


「寒っ!?」

扉が開いた途端、冷気が流れ込んでくる。


12階は雪がちらついている冬のような平原であった。

雪は深くはないが、気温は氷点下近くかもしれない。


「あ! ショップに防寒着もあるんですがどうでしょーー」

「おお」「なんと」「美しい!」


楓がしゃべる前に3兄弟は平原へと足を踏み入れた。

そして暖を取るようにスクワットをし始めた。


「心配ご無用。お嬢さん。ここが私たちの暖房だ」


太ももの太い筋肉をパンパンと叩きながら、

彼らは上機嫌でダンジョンへと足を踏み入れていった。


「本当に大丈夫かなぁ……」


楓は心配になりながらも、3つの背筋を見送った。



再度1階へと戻る楓。

「ははは、いきなり100階いっちまうかぁ」

「やぁ。もうハルってばぁ❤」


扉が開いた途端、ピンクの空気感。

2人のカップル風の冒険者が、

腕を組みながらエレベータの到着を待っていたようだ。


「あたし、ダンジョンって怖いかもぉ」

「はは。大丈夫。俺っちが守ってやるから」

「やぁん❤あたしの彼ピかっこいい」


楓もソフィアもいるのに2人だけの世界を作ってしまっている。


「ハルさんとエルさんのパーティ。

 ハッピーマリッジです」


ソフィアも苦笑しながら二人を紹介した。


「おお、これがエレベータってやつか」

「あっ! 勝手にボタン押さないでください!」


幸いにもエレベータは楓以外の操作を受け付けない


「ほらぁ、ハル。こっちいこうよ」


エルはハルの手を引きエレベータの奥に入る。

壁ドンのような形でハルはエルと対面する。


「で、何階に行きます~?」

「幸せの数字。8階に行こうかな。俺っちたちの

 幸せな未来を願って」

「いやぁん♡」

「では、8階に行きますよ~」


ピンクの空気感を乗せて、

楓はエレベータを起動させた。

生まれてこれまで彼氏がいたことのない

楓にとっては

耐えがたい空気感だ。


「エレベータ内ではいちゃつき禁止です」


一応釘を刺すが二人の様子は変わらない。

内心イラつきながら3人を乗せたエレベータは目的の階に到着した。


8階は薄暗く、室内だというのに靄がかかっている。

天井には大きなシャンデリアがあり、廃墟のようだ


「ひゃー」

「はははは! 

 俺っちがいるから怖がる必要はないんだぜ」


2人はエレベータの外に出ると、ハグを交わす。

楓は悪寒を感じながらも2人を見送った。


楓はその後もエレベータの

ピストン輸送を繰り返す。

どのパーティも色が濃く頭が痛い。


そしてやっとお昼の時間となった。


ソフィアはデスクでお弁当を広げる。

パン中心のお弁当だが、

配色など工夫されており

とても美味しそうだ。だが、

楓の元には固形食のカロリーフレンドしかない。


ソフィアに気を使われると申し訳ないので、

再開の時間を確認しRFのボタンを押した。

まだ、どの冒険者も帰る気配もないので

13時ギリギリまでは機械室でゆっくりすることにした。


スマホの監視アプリで

他のパーティの動向を見ながら

カロリーフレンド(固形食)を頬張る。


「えっと、最初は勇者パーティを見なきゃ!」


スマホに映ったシオンとイザベラも休憩中だったらしい。小さな洞窟を見つけ火を起こし

身体を温めている。


「アナライズ!」


イザベラが手に入れたものに

解析魔法をかけている

「レモンの飲料……お酒ですって!」

「たしかにパッケージに

 レモンのイラストが描いてあるな……」


シオンはパッケージを怪しげに見る。


「えええ! それストロング缶じゃん!」


思わず楓は画面に向かって声をあげてしまう。

どう見てもあれは社畜の友、強アルコールの缶チューハイであった。


「お酒かぁ。少し味見してみたいわねぇ……」

「だめだ。イザベラ。

 それに楓に見てもらわないと危険かもしれない」


イザベラは明らかに飲みたそうだが、

シオンは止める。


「そ、そうよ! 仕事中にそんなの飲んだら絶対

 ダメに決まってる!

 そして私に是非差し入れを!」


楓はまた画面に向かってツッコミを入れた。

そして願望も。


「冗談よ。複数手に入ったし、

 楓さんにあげようかしら」

「いや、楓はたぶん、背丈的にまだ子供だろ? 酒はまずいんじゃないか?」


シオンは残念そうに首を横に振る。


「いや! 私23歳です! もう成人してますっ!」


またツッコミを入れる。そんなに幼く見られていたのだろうか。


「もう!期待していますからね!」


祈りつつ、監視モードを違うダンジョンに切り替えた。



「うりゃああああ!」

「おお! 兄者! かっこいいですぞ!」


マッソー3兄弟のいる

12階に場面が切り替わっていた。

おそらく長男のマンさんが巨体のオーク相手に

チョークスリーパーをかけている。

彼らが武器無しでやっていけるのは

本当だったらしい。

安心と呆れを半々にカメラを切り替える。


次は8階の様子だ。バカップルの

「ハル&エルのハッピーマリッジ」だ。

彼らも休憩中らしい。


「ほら! エル。あ~んして❤」

「あ~ん」


ハルはポーションを取り出し、

エルに飲ませている。


「いや。ポーションは

 そんな感じで飲ませないでしょ!」

楓はツッコミを入れる。


「いやぁん❤ハルからポーションあーんしてもらえると、回復するぅ」

「そうだろ~。ダンジョンの残りも

 頑張ろうな。チュ❤」


楓に見られていることも知らずに、

 二人で抱きつき、

キスまでもしてしまっている。


「あわわわわ!」

楓は慌ててスマホのホームボタンを押した。


「はぁ……」


楓はスマホを置き、寝袋へ横になる。


「私もちょっと休憩しようかな」

アラームをかけて目を瞑る。


「そういえば以前の仕事中は

 昼さえまともに休めなかったな。

 異世界の方がホワイトなんてね」


ちょっと以前にいた世界のことを思い出してしまったが――

考えてるのを止めた。

確かにホームシックに似た帰りたい感覚はある。

だが今のところ、ブラック企業から解放された

開放感が上回っている。こうして昼飯時も横になり、

スマホを弄れるのだから――


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