表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンエレベーターガール=D.E.G=  作者: 千ノ葉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/9

第1話「あっ、死んだわ」

初めまして、

または、お久しぶりです。千ノ葉です。

約13年ぶりの投稿に手から謎の液体が……


新作

「ダンジョンエレベーターガール=D.E.G=」

を投稿します。


エレベーター×ダンジョン×お仕事系という、

ちょっと変わった作品ですが、

楽しんでいただけたら嬉しいです。


1巻分はストックがあるので

早期更新を目指します。


では、第1話「あっ、死んだわ」をどうぞ。

「あっ、死んだわ」


犬飼 楓は直感的にそう思った。


犬飼 楓 23歳 独身。彼氏無し=年齢

毒親から学んだことは

良い学校出て、良い企業に入れば、

幸せになれるからと言う刷り込み教育が

如何に人体に悪影響を与える

ということだけだった。


勉強に捧げた女子校からの女子大学。

念願の大手企業に入ったものの残業だらけで

幸せの「し」の字すらない。


「お先に失礼します」

「おー、新人のくせにお早い退社だこと……」

「だから今の世代は――」


後ろからは恨み辛みを含んだ声が。

いや、今もう23時なんですが。

現代に生きるゾンビたちの

罵声や恨めしい目線を背中に受けながら

疲れた身体を律して

会社のエレベーターに乗り込んだ。


ため息を付き、1階のボタンを押すと、

寂れたエレベータは揺れながら降下を始めた。


エレベーター内でスマホを見ていると、

突然ズドンとエレベーターが停止した。

エレベータのインジケータは消え、

照明も消え、非常灯に切り替わった状態だ。


「えっマジ? 閉じ込められた?」


慌てて階数のボタンを押したり、緊急ボタンを押す。だが反応はない。


「え? 詰んだ?」


絶望のあまり黙ってしまうが、沈黙を破り、

上の方から、ぶち、ぶちっという、

不吉な音がする。


「嘘でしょ?」

嫌な予感は昔からよく当たる。

この音はワイヤーロープが切れる音ではないのか。


(だ、大丈夫よ。落ち着くのよ、楓。

 エレベーターのワイヤーが切れても

 安全装置が効くってテレビで……)


ブチブチ音はまだ続く。

そして、激しい音を立てたと思ったら

浮遊感が身体を襲う。


「安全装置なんてないじゃない! ぎゃあああ」


叫びながら数秒落ちている。建物の高さから言ってそろそろ地面だろう。


「そ、そうだ、地面に着く前に

 ジャンプすれば助かるーー」


筈もなく彼女はエレベーターのカゴと一緒に地面へ激突した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『ピロンーーイヌカイカエデを認識。

 転送を開始します――』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




こんな衝撃を受けて助かるはずはない。

楓は恐る恐る目を開け、手、足の順で確認していく。どうやら手足首は繋がっているようだ。


エレベーターの外からは賑やかな人の声。

レスキュー隊だろうか。

楓は慌てて開くボタンを押す。


『ドアが開きます』


夜だって言うのに外が眩しい。

なんとか目を凝らして外を見ると、

たくさんの人が驚いた様子でこちらをみている。


金髪や赤髪。おまけに肩パットまで――

いつの間にやらレスキュー隊は頭髪の縛りがなくなったらしい。

救急箱やタンカではなく鈍器のような武器のようなものを向けてるし。


「って、絶対レスキュー隊じゃないでしょ!」


楓は反射的に閉まるボタンを押してしまった。


『ドアが閉まります』


エレベーターがドアを閉めると、

「ま、魔女だ、

 ダンジョンの中に魔女がおったぞ! 逃すな!」


雄叫びと怒声が聞こえて来て、

ドアをドンドン叩く。

楓は怖くなり、隅にうずくまり耳を塞ぐ。


聞こえてきた音は静かになり、

そしてヒソヒソ話になる。

外では何かを相談しているようだ。



「おほん」

外から咳払いが聞こえる。


「驚かせてすまない。

 僕の名はシオン=ベルクレイス。

 勇者およびこの塔のダンジョンの

 調査隊長をしている」


先程とは違いずいぶん優しい声だ。

それにしてもゆうしゃ?

だんじょんちょうさたい? 

聞き間違いだろうか?


「危害は加えない。

 この扉を開けてくれないだろうか?」


楓は迷うが、

優しそうな彼の声に導かれ開くボタンを押した。



姿を現したのは銀髪が綺麗な

18歳くらいの青年だった。

この世の者とは思えないぐらいの美形であった。


「応じてくれてありがとう」


優しそうな彼だが、

彼以外はまだ武器を構え警戒している。

シオンは武器を下すよう

手を下げジェスチャーをする。

それに応じてファンキーな

男たちも渋々武器を下げる。


「僕の名前はシオン。君は?」

「い、犬飼、楓です……」

「イヌカイ カエデ? 

と、とにかく扉を開いてくれて助かった。

もし良ければ、こっちに来てくれないかい。

そこはダンジョンの入り口。危険かもしれない」


ダンジョン? 

楓はカゴ内を見渡すがなんの変哲のない

日本製のエレベーターがあるだけだ。


「さあ、こっち」


まるで迷い猫を誘うように優しく囁く彼に導かれカゴを出ようとするのだが、


ゴンっ


まるで透明の壁があるように進めない。


「え?」


楓は何度も試してみるも、出られない。


「ごめんなさい。私出られないみたいです」

「な、なんと」


シオンは悩む。


「では、僕がそっちに行く。下がってくれ」


彼の言葉に周りはざわつく。


「危険ですぞ!シオン殿!」

 取り巻きらしき男は止めるが、


「いや、僕は勇者だ。危険と分かっていても、

 確かめなければならない」


かっこいいセリフを言ったが、

シオンはすり足で、そっと近づいてくる。

しかもその片手はいつでも剣を振り被れるよう、

剣を握っている。


くしゃみでもすれば一刀両断されそうだ。

楓はエレベータ内の一番奥へと逃げ込む。



彼は恐る恐るカゴに近づくと


「せいっ!」


最後の一歩を精一杯飛躍した。

壁があると思ったのだろう。

勢い余った彼は楓にのし掛かる寸前で

壁に手を置き身体を支えた。


(ちかいちかいちかいちかい!)


男に免疫がない楓は

美形勇者の顔を見て

一気に顔を赤く染めてしまった。


「す、すまない。勢い余って。

 驚かすつもりはなかった!」

「い、いえっ大丈夫です!気にしないで下さい」


楓は彼の腕を退かそうと彼の胸を押すのだが


(む、胸板がっ厚い!?)


さらに顔が赤くなる。


「お、おい大丈夫か? っつ!?」


楓を触ろうとしたシオンの指が、彼女との間の空間で弾き返された。


「えっ?」


楓も驚く?


「すまん。失礼する」


今度は頭を撫でようとするが

同じように弾かれてしまう。


「これは、一体……」

シオンは楓の身体に角度を変えながら

触ろうとする。

あまりの手つきに楓は目を瞑り縮こまる。


「何レディにベタベタ触ってんのよ」


目を開けるとそこには赤い長髪の胸の谷間を強調したようなドレスを着る女性がいた。


「イザベラ見てくれ。

 ダンジョンの奥地に入れたぞ」


シオンは目を輝かせながら成果を伝えるが、


「あたしが来るまで勝手なことするなって

 言ったでしょ。さあ、

 さっさと場所変わって」


イザベラは楓を見ると妖艶に笑う。

女同士だと言うのに目を合わせられない。


「あたしは魔の勇者イザベラ。よろしくね」

「はい、私は楓です。初めまして」


楓は反射的に差し出された手を掴む。

パシッと言う音がし、イザベラの手が跳ね返った。


「いっ!?  痛いじゃない!」

「だろ?」

「触れて痛いバリアなら先に言いなさいよ」


イザベラはシオンを睨みながら、

手を引き手の甲に息を吹きかける。


「なんかわからないけど、ごめんなさい」


楓は訳もわからず謝る。


「どうやら彼女にはバリアのようなものが張られて いるらしい」


「ば、ばりあ?」


楓は自分の手足を見るが、

そんなもの見えも、感じもしない。


「成程ね。それよりカエデサンは

 この箱から出ることはできない?」


「あ、はい」


試しにまた出口を目指してみるが

やっぱり出られない。


「そっか」


イザベラは考える仕草をした後、

「あなたは何か加護や制約に

 引っかかっていると見たわ」


楓は首を傾ける。


「あなたステータスを開けないのかしら?」

「ステータス?」


「ほら、空中に画面が見えるでしょ?

 まあ、パーティを組まなきゃ、

 共有はできないんだけど」


知らない単語が続々と飛び出てくるが、

とにかくステータスというのは

見られないみたいだ。


「うーん、どうしよっかシオン?」

「パーティも組めないしな」


イザベラは悩み、


「ごめんなさいね。無闇やたらと人には使うもの

 じゃないんだけど解析魔法【アナライズ】」


彼女が何か詠唱したと思ったら楓の足元に白い光の魔法陣がパッと浮かび消えた。


「わっ!?」


びっくりする楓だが、


「うそっ!」


イザベラは信じられないといった表情で

目を見開く。


「どうした?補助魔法も弾かれたか?」

「いえ、機能はしているわ。上から読み上げるわ」


イザベラは続ける


「イヌカイ カエデ。

 身長151センチ。体重52キロ……」


「待って下さい!」


楓は思わず叫んでしまった。


「なっ、何?」

イザベラは驚く。


「あ、あの体重とか、プライベートなことは、

 避けてもらって良いですか?」

楓は赤面涙目に訴える。


「え? ああ、そうね。了解するわ」


イザベラは何故体重など

気にするのだろうと首を傾げる。



気を取り直し、イザベラは読み上げる。

「能力は……平凡、というか、最弱かも。

 その辺の子供の方が強いわ。知能はまあまあね」


凡人だとは重々承知していたが、

面と向かって言われると凹む。


「それはわかった。だが驚くことがあるのかい?」

シオンは聞く。


「ええ。職業の欄なんだけど。

 エレベーターの管理者って書いてあるの」


イザベラの頭にも疑問符が浮かぶ。


「エレベーター? 

 なんだろう聞いたことない。

 カエデは思い当たる節はないかい?」


とシオンは尋ねる。


「エレベーターってこの乗り物のことです」

「乗り物? これが?」


シオンは驚く。


「えっと、別名、あっ。昇降機って言って

 ボタンを押すと、行きたい階に

 カゴが動く機械になります」


「はぁ?」


シオンはピンと来ていない。


「つまり、この古代語で書かれた。

 ぼたんって物を押せば動かせるのね」


イザベラはそう補完する。


「はい、そうです!」

「ふむ、ならばボタンを押そう」


カチッ


「あっ、お馬鹿っ!」


100と書かれたボタンから

シオンの指を離すイザベラ。


「危険だったらどうするのよっ!

 あなたはいつも向こう見ず過ぎるのよ!」


イザベラは本気でシオンを叱る。


「あはは。ごめん。

 でも何も起こらなかったじゃないか」


シオンは笑う。


まったく――と、ため息を吐くイザベラ。


「それで、カエデさん。

 もしかしてあなた古代語を読める?」


「えっ、私が?」


楓は慌ててカゴの操作盤を見る。


「えっと、このボタンは階数別にあって、

 さっき押されたボタンは100で、

 1階から100階までのボタンがあります」


「素晴らしいわ。これは数字だったのね!」


イザベラは目を輝かせながら

まじまじとボタンを眺めている。


「じゃあ、こっちのぼたんは?」

「それは開でこっちが閉ですね」

「なるほど。入り口の扉を開閉できるのね」


楓が閉まるボタンを押すと、


『ドアが閉まります』

「喋ったぁ!?」


2人とも大袈裟過ぎる

リアクションを取るのであった。


「な、なるほど、閉まることを音声で

 教えてくれるのね……音声を発する魔導具なんて 聞いたことなかったわ」


イザベラは、

興味深そうに状況をメモに取っている。


「カエデ、お願いがある。

 100階のボタンを押してくれないかい?」


シオンは楓に依頼する。


「え? でもさっきは?」


「さっきは僕がボタンを押したからね。

 もしかしたらエレベーターの管理者の

 君なら、起動するのではないかとね」


「わ、わかりました!」

「ありがとう」


楓は言われるがままボタンに指を伸ばす。

しかし、直前の記憶にあった

エレベーターが落ちた記憶が蘇った。


「ま、まずは危ないかもしれないので、

 2階でいいですか?」


イザベラとシオンは顔を合わせ、

イザベラは目配せする。

「勿論かまわないよ」


2人の同意を得て、2のボタンを押した。


『ドアが閉まります』


無機質な音声が響き、ドアが閉まる。

外に控えてた冒険者風の人たちが驚くのが見えた。


シオンは

「1時間以内に戻らなければ、

 ギルドに連絡してくれ!」


と、叫び、扉が完全にしまった。



エレベーターは機械音を上げ、上昇を開始した。

「ほ、本当に動き出した……

 上昇しているのかしら?」


イザベラは腰を引きながら、

壁へ両手を当てている。


「おそらくですが、

 すぐ2階に着くと思いますので」


シオンは神妙な面持ちで、剣に手をかけている。

緊張感が伝わり楓も冷や汗を垂らしてしまう。


もし彼らの言うことが本当で、

残酷なモンスターが居たらと思い

楓は目をきゅっと閉じてしまうのであった――



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ