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“Variant”   作者: 犬野ミケ
Spring 終章
16/22

脈々と受け継がれる血と命、そして力

 シルヴィア・ギルデンの人生は、正に波瀾万丈と呼ぶべき物だった。そしてまた、多くの謎を残した。

 始まりは、ルネを妊娠した頃からであろう。シルヴィアと竜の間にできた、ハーフの子供。いつ、どうやって出来たのかはテオファーヌもリオネルも知らず、ただ、本人達しか知り得ない事である。人間とバリアント、二つの相対する存在。それでも、一人と一体の間には、確実に愛と呼べるものがあった。

 異端というのは、周りから忌み嫌われるものだ。彼女達もまた、例に漏れなかった。竜達はシルヴィアの夫を「裏切り者」と呼ばわり、ついにはテオファーヌとシルヴィアの夫を殺してしまうまでに憤った。死体は酷いものだった。二人とも「簡単には死なない体」だったため、何度も何度も傷つけられ、さまいにはシルヴィアにも判別が難しい肉塊となっていた。

 シルヴィアはどうしようもなく深い悲しみにくれた。自分と腹の子を護ってくれる存在はもういないのだと、悟った。それどころか敵が増え、果ては奇妙な宗教団体まで腹の子を要求してくる始末。

 そしてシルヴィアは自分達を護る為に、天才と呼ばれる所以、比類なきサラブレッドとしての妖術師の力を余すところ無く発揮し、最高傑作達を造り出す。

 それは、彼らの為の自我としてシルヴィア自身の命を分け与えた、擬人型達。


 母と夫の死体が見つかったのは、深い深い霧のかかる朝だった。シルヴィアは、一体の少女の姿をした、対人を考慮した対バリアント用擬人型を造った。

 一体目は、霧のニエブラ。

 ただし、これはその名の通り、完成した途端に霧散して消えてしまった。シルヴィアは、対人用と対バリアント用の二つの能力を組み込んだ事によって存在が不安定になったからだ、と判断した。


 寒くなった大気を切り裂くように降ってくる氷の粒。墓に当たり、硬い音を響かせた。シルヴィアは、一体の青年の姿をした対バリアント用擬人型を造った。

 二体目は、雹のグラード。


 温かくなり、氷は溶けて水に変わり、水滴へと変化した。それはまるで、追悼の涙のようであった。シルヴィアは、一体の女の姿をした対バリアント用擬人型を造った。

 三体目は、雨のプルー。


 温かくなっていたのは、漸く出てきた太陽のおかげだった。悲しみは晴れるのだろうか。シルヴィアは、一体の青年の姿をした対バリアント用擬人型を造った。

 四体目は、晴のパゴーダ。


 晴れ間は何時までも続く訳ではない。重く天から響く光と音が、不吉を知らせる。人間の追っ手もバリアントの追っ手も、どんどん右肩上がりになっていった。シルヴィアは、一体の青年の姿をした対バリアント用擬人型を造った。

 五体目は、雷のグローム。


 雷がすぎ、後には厚く被さる暗雲。精神的に追い込まれ、夢だけでなく、幻覚として二人の姿を見てしまうようになった。シルヴィアは、一体の青年の姿をした対バリアント用擬人型を造った。

 六体目は、曇のヴェルト。


 気温が急に下がり、小さな氷の結晶が舞い始めた。白くちらつくそれに紛れ、青年の姿をした七体目を完成させたシルヴィアは、造った擬人型達にしめいだけを与えて、腹の子と共に姿を眩ました。

 七体目は、雪のネジュ。


 シルヴィアと竜は、何故、愛し合うようになったのか。

 ルネはどうやって出来たのか、何故、擬人型としてのベルヴェルグが半分だけあるのか。

 シルヴィアは何故、ルネに「神秘(ルーネ)」という名を与えたのか。

 ルネを狙った宗教団体は、何を目的としていたのか。

 ニエブラは、何処に消えたのか。

 シルヴィアは何処に消えたのか。

 謎が、全て解ける時は来るのだろうか。

 あれ……ルネの出生がどこかに行っちゃいましたね……。


 たぶん、次話か、またその次で出すと思います……たぶん。

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