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第3話 ギャンブルの代償

ギャンブル依存症

自分だけでは治らない病気かもしれない。

 夕方6時ごろ、マスターは誰もいないテーブルを眺めながら、小さくため息を

ついた。まもなくクリスマスというのに生暖かい風と大雨で客足はばったりだ。


そこに、びしょびしょに濡れたサラリーマン風の40代後半の男性が飛び込んできた。

マスターはちょっと大きめのタオルを渡し、本格的なマキストーブの近くに誘った。


マスターありがとう 

その男性は濡れた髪、服を拭きながら暖炉前の席に腰掛けて

ふーとため息をついた。

マスターは暖かいカフェオレを大きめのマグカップに注ぎ

優しい笑顔でテーブルの上に置いた。


マスターおれ、今日は家には帰れないよ。

暖かいマグカップで暖をとるように握りしめながらその男はぽつりと言った。

消費者金融や銀行の個人ローンでもう首が回らなくてね。

今日、家に催促の電話が入ったみたいで、妻から仕切りなしにメールが来ている。 


その男性は携帯電話の画面を見ながらボソボソと話しだした。

俺、それこそ35歳までギャンブルになんて手を一切出さなかったし、

それこそ月3万円のおこずかいで十分間に満足していたんだ。


でもね、魔がさしたというか、

ほんの少し、1回だけのつもりでパチンコをやってしまってね。

「お寿司や菅さん」という台だったかな。 

三千円のピッキーカードを購入してこの一枚だけやってみようと思って。 

これが、全ての始まりだったよ。 

いや終わりの始まりかな。


初めてのパチンコだったので、よくわからず見様見真似で

レバーを回して始めたんだ。

2000円ぐらい使った頃かな。 画面がどんどん展開していって、

どんどんどんと回ったかと思ったら 

777て数字が揃ってね。おーと興奮してしまったよ。


でね、ずーと大きな扉が空いててね、下から球がジャンジャン出てくるんだ。

いやーもういつ終わるんだって思うくらい出続けたよ

もうやめようと思って、店員さんに集計してもらったら

なんと70000発 それを景品に変えて

えー2000円でこんなに儲かるのって有頂天になちゃった。


もうマスターもわかるよね。 もちろん次のお休みも遊びにいったよ

だけど、その日は全く出なくて、前回もうけの半分ぐらい使っちゃった。

まあ、まだ黒字だし、次回次回て感じだったかな。


そんなことを続けて、出たり、出なかったりを繰り返し、気がついたらお金が全くない。 

貯金は妻が管理してたので、せめて無くなった小遣いだけでも取り戻そうと、

とっても後ろめたさがあったのだが初めて消費者金融機にいって5万円だけ借りたんだ。


だけど、損はすぐに取り戻してね、速、全額返済したんだ。 

でもね、ほっとしたのも束の間、以後はその繰り返しになったよ。


そのうちどうなったと思う・・・・・・・・

ギャンブル依存症って、ギャンブルを辞められないのではなくて、

借金を返すためにギャンブルをやってしまうんだよ。


ギャンブルが原因の借金を繰り返すと、しまいに金銭感覚が完全に麻痺する。

それでねとうとう利子だけでも返済できれば良いと思うようになる。


利子は約年利15.6%だから、その金額だけ捻出できれば良いやって。

でね、利子以上儲かると、返済せずにギャンブルなどにまた使ってしまう。


この繰り返しだよ。 もう心の病、気持ちを正常に保つため、安心するために

ギャンブルをやり続けるんだよ。   

当たった時だけ安心できるんだ。


でもね、持ち金が無くなれば借金して元金がどんどん膨らんでいく。

その利子さえも返せないくらいに借金が膨らむんだ。 


男は本当に苦しいのだろう、最後の方は泣きながら吐き出すように話した。


あ、マスターごめん 俺本当に馬鹿だな 家にちゃんと帰るよ

で、妻にしっかり謝って、もう今後一切ギャンブルはやらないようにする。


マスターは帰りしなに傘を差し出した。  

マスターありがとう

マスターは男の後ろ姿を見ながら、奥さんが許してくれたとしても

また、繰り返すだろうな と悪いとは思いつつ何か後味の悪い珈琲を

飲んだ気分になった。


父が手作りで作ったカフェ つなぐ は 心寒い人がくるお店 

マスターは無口で話を聞いて要るだけなのに

皆、マスターに身の上話をして、ありがとうって帰っていく。

  

いつもいつも心寒い人が、ほんの小さな炎にあたりにくる店。 


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