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ーーーそれは毛皮に覆われたモノだった
ーーーそれは美しい白に近いグレーの毛並みだった
ーーーそれはつい先程まで少年と共に眠っていたモノだった
少年には理解が、追いつかなかった。
今、目の前の、赤い水たまりに埋まるように横たわるそれは。
2年前。村の秋の収穫祭の2回分前。
少年は森の中で逸れの子狼を見つけた。
寂寞感か、つい、紛らわせるために拾ってしまった子狼。
それは賢い子だった。
鳴くこともせず、待てと言えば待てる子だった。
村人にはバレていないと少年は思っていた。
つい、好奇心で家から出てしまったのだろうか。
腹が減って耐えかねたのだろうか。
ふと少年は自分の通って来た森へ続く道を見れば、ちょうど子狼が通ったような痕跡と数人の人間の通った痕跡が積もった枯葉に残っていた。
ふつふつと黒い、重い濁ったものが少年の胃から、胸からこみ上げてくる。
怒りだろうか、憎しみだろうか。
少年の父は常に自分を客観視しろと言っていた。冷静に分析しコントロールしろと。
父が死ぬ間際、少年の頬に伝うものを弱々しい手で拭いながら教えた。
これは『悲しい』だと。
父が最後に教えることがこんなことですまない、と謝りながら。
今のこれは少なくとも悲しい、だけではない。
わからない。教えてもらってない。
なぜこんなに息がしづらい。なぜこんなに握りこぶしに力が入る。
自分の家の奥、森の反対側、村側から複数の人の気配がこちらを窺っているのに少年は気付く。
自分が何をしたって言うんだ。
僕は、村に、悪いことなんて何もしてないじゃないか。
父も、常に、そうだった。
なぜ?なぜ?
なぜ?
疑問と、よくわからない、重く痛いものが頭と心の中を激しくかき混ぜてくる。
「アァァアアァァァ!!」
慟哭ーーー。
少年には今、新しい感情が芽生えている。
少年の血の半分に棲む魔族の本能
破壊衝動。
プロットもなくアドリブで更新してるので1話が短かったり、話が矛盾してたりします!すみません!
閲覧ありがとうございます!