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第3章-1

 天空界、聖なる国ホーリア。4年程前、『時空の裂け目』よりやってきた闇の種族の太古の魔導士ヴァルストによって、国は壊滅状態と化した。しかし、王イルムを始め、住民たちは国内の地下シェルターや地界へ避難し事なきを得た。ヴァルストはアルスたちによって屠られ、国の滅亡は免れた。


 街はすっかり元の姿を取り戻し、民もいつも通りの生活ができるようになっていたが、彼らの闇の種族に対する憎悪は一層強くなってしまっていた。


 この事態が起きる前から、ホーリアの民は闇の種族を嫌う傾向ではあった。奴らはこの世界に必要ない、害悪でしかない存在。それこそ絶滅させるべきだとの声は、今に始まった事ではない。ずっとずっと昔から根づいているものだ。


 しかし、ヴァルストを屠ったジンブツは、同じく闇の種族のアルスであることから、住民たちは憎悪と共に複雑な感情も抱いていた。


 闇の種族同士の潰し合い……これこそが闇の種滅亡への近道だ!とか、ホーリアが率先して闇の種を滅亡させるべきだ!といった声が上がる一方で、闇の種族は悪いやつばかりじゃないのでは?と殲滅を疑問視する声もあり、ホーリア内で意見が真っ二つに分かれていた。


 イルムは国民に対し、今重要なのは闇の種を殲滅させる事ではない、この国を壊滅させられる前の平和な状態に戻す事であると声明し、一旦は落ち着いたのだが、復興が一息ついたところでまた不安定な情勢に陥ってしまった。


 しかも今度は、イルムが闇の種の擁護派ではないかと噂になり、殲滅派の民が奮起しイルムを王位の座から引きずり下そうとクーデターを企てたのだ。もちろんイルムはそういった声明は出しておらず、民の思い込みでしかない。クーデターは自国の騎士により抑えられた。


 そんなことがこの4年の間に数回起こり、地界にも『ホーリアの王が近い将来暗殺されるのではないか』という噂が回り始めた。



          * * *



 フレイがこの『噂』を耳にしたのは、炎が禍々しい色に変わる前の頃だった。


 火の国ファイストの首都モントレアを守る『聖なる炎』は、毎年末に行われる精霊祭の時に『新しい炎』に変わる。これまで灯っていた炎に、新たにホーリアから持ってきた炎を()()()のだ。


 その新しい炎を受け取りにホーリアを訪れたのだが、その際に例の噂を聞いた……という事を、フレイは相棒シーナの背上で唐突に思い出した。


 自分の出生について知りたくなり、里長に許可をもらってしばらくの間護衛の仕事を休ませてもらった。周りの竜騎士たちにも、フレイの本当の故郷はどこなのか、親はどうしているのか知りたい、とやんわりと説明した。周りは寛大だった。フレイの気が済むまでとことん調べてこい、と皆背中を押してくれた。


 そういうわけで、シノの里を離れ、聖なる国ホーリアへ向かっているところだったのだが、フレイは相棒シーナに近くの浮島への着地を命じた。天空界には、巨大な飛竜が着地できる浮島が大小数多く存在していて、休憩するにはありがたい。


 地界を覆う雪雲を抜けると、快晴の空が広がっていた。シーナは浮島を見つけると、ゆっくり着地した。シーナから降りた時、しゃくっと地面が鳴った。見ると芝が凍っている。とても冷たそうだが相棒の表情はいつもと変わらない。


 2、3歩進んで、うーんと伸びをする。大きく息を吸って、ゆっくり吐き出した。白い息がほわりと現れて、瞬時に消える。


 以前シーナの前に突如現れた精霊らしき生きものは、あれ以来姿を見ていない。気配すらないらしい。シーナは安堵していたが、フレイは少し不安になっていた。


 精霊を宿す者……つまりは賢者であるが、何事もなく普段の生活を送っているなら何も心配する必要はない。しかし精霊だけがシーナの前に現れるなんて、聞いたことない事が起きたので、やはりただならぬ状況だったのではと思う。


 ぼんやりと『空』を眺める。天空界……私と私の両親は、この世界の民だと聞いた。『炎の声』は半竜族の力が覚醒したから聞こえたものだと、里長エンキは話していた。その一族は乱獲の対象となっている……。


 地界はそんな恐ろしい世界だったかしら、と自然と首を傾ける。里にいるヒトビトは時に厳しいが皆優しい。火の国も地の国も、どこへ行ってもヒトビトは親しみを込めて接してくれる。その一面しか見てこなかったのはそうだが、いわゆる『裏』なんて見たくて見るものではない。


 ぐるる、と後ろからシーナの声がした。相棒の視線は、遥か遠くだった。同じようにその先を見てみるが、ただ青い空にところどころにちぎれ雲を置いたような景色が広がっているだけだった。この先には聖なる国ホーリアが浮かんでいるのだが、フレイには見えていない。


 シーナのそばに行き、そっと前脚に触れ、シーナの言葉を読み取ってみる。


「……ホーリアで、ヒトビトが、戦っている……ですって?嘘でしょ……」


 また殲滅派が行動を起こしているのか。向かえば確実に巻き込まれる。フレイはため息をついたが、ふとイルムのことが気になった。


「イルム、大丈夫かしら……」


 闇の種族を擁護しているという憶測、暗殺の噂……。フレイはシーナに飛び乗った。擁護だの何だの関係ない。イルムを守らねば。


「シーナ、ホーリアへ向かって!」


 合図をするも、飛竜はそれを嫌がった。一応翼は大きく広げてひとはばたきしたのだが、浮島から離陸してくれなかった。


『行ったら危ない。殺される、かもしれない』

「その時はその時よ!上手く敵の攻撃をかわして、とにかくイルムを連れて逃げないと!」


 ぐぅ、と頭を下げて唸るシーナだったが、渋々離陸した。まずは近くまで行ってもう少し様子を窺い、イルムを救う手がかりを見つけないと。


 そうしてホーリアの全貌が見えてきた時、フレイは絶句した。シーナも前身をやめ、その場で羽ばたいている。唸る声が怯えている。


 ヒトビトが、殺し合っていた。


 互いにしっかりと武器と鎧を装備し、ある集団は槍や剣を振い、別の集団は魔法を放って応戦していた。光の壁を作って魔法を無効化させている集団は、おそらく王族側の騎士団だろう。その前後で矢を放つ者や魔力を宿した刃を振るう者たちは、その数を減らしていっていた。


「シーナ、王宮へ」


 飛竜は旋回した。向かった先にはイルムがいるはずだ。この殺戮現場からそう遠くない距離。このままでは王宮に乗り込まれる可能性がある。


 シーナを王宮の裏庭前へ着地させる。フレイが飛竜から飛び降りた時、近くにいた騎士たち4にん程が彼女を囲んだ。フレイと認めた騎士たちは、槍を地に立てて敬礼した。


「フレイ殿、今この国は危険です」

「わかってます。さっき見てきたから」


 なんと、と騎士が言葉を失う。


「王はご無事ですか?」

「ええ。ですが、今は避難されていてこちらにはいません」


 王宮から逃れていたことに、フレイは少し安堵した。今ここで居場所を尋ねるのは危険なので、フレイは腰につけていたポーチからある物を取り出して騎士にわたした。


「このペンダントを王におわたしください。機会を見て王を保護しますとお伝えを」


 それは、イルムが里に滞在していた頃に彼からもらったもので、麻糸を通した赤瑪瑙の勾玉だった。騎士はしっかりと受け取ると、小声で「承知しました」と述べた。


「後をつけられないように、こちらから出国してください」


 そう案内された先は、国土の十分の一程を締める森だった。シーナは翼をたたんでできるだけ身体を縮こませ、フレイの隣に並んだ。


「このまままっすぐ進んでいただくと、別の騎士がおりますゆえ、彼らに先導してもらってください」

「ありがとうございます。……どうか、ご無事でいてくださいね」

「フレイ殿も、どうかお気をつけて」


 それが、この騎士との最後の対話となってしまった。








 地の国アーステラの首都ダーラム。複合施設ヒールガーデンは、緊迫した空気に包まれていた。


 蒼竜が屋上テラスに着地したかと思うと、その竜騎士ががたいの良い男を担いで転がり込んできた。一刻を争う事態に、医師ウィージャは周りの助手や医師たちに指示しつつ、自身は治療に集中した。


 バツを描くように背中が斬られ、腰付近も横一線に抉られている。胸から腹にかけて深く刻まれており、アルスの身体からは血の気を感じられなかった。体温も鼓動もない。どのくらい心の臓が止まってしまっていたのかわからないが、とにかくまずはそれを動かしてやらねばならない。


「頼む……動いて……くれ……」


 ウィージャはマッサージを続けていた。闇の種族に効く薬は何であろうか。『闇には闇を与えれば癒える』と、ヴァルゴスを治療した際に誰かが言っていたなとふと思い出す。……誰がそう助言してくれたっけ?


 しかし、闇の力など簡単に生成できるものではない。ヴァルゴスもいまだに意識はなく、いつ死んでもおかしくない事態だ。あのヒトには召喚獣が宿っているので、その相棒がどうにか命を繋ぎ止めてくれているが、アルスは何も宿していない。


「闇の力……オーブ……なんてもの、無いよな……」


 隣ではミスティアが、傷を洗い、できる限りの治癒を施してくれている。かなり長い時間霧の魔法を出し続けてくれているので、彼女の体調も心配になってくる。


 と、助手のひとりが青年を連れて部屋に入ってきた。アルスの容態を見て、目を丸くして絶句している。


「ヘイレン、助けて」


 ウィージャはマッサージをしながら請うた。ヘイレンはミスティアと向かい合うようにアルスのそばに寄ると、両手を傷にかざして目を閉じた。白と黄色の光がたちまちアルスを包み込んだ。


 お願いだから、アルスを……連れていかないで。

 ヘイレンの願いは、ウィージャの、ミスティアの、皆の願いの光となった。






 助手に連れられて、治療室へ吸い込まれていったヘイレンを見送り、シェラはシェキルに支えられながら屋上のテラスへ向かった。冷たい空気を身体いっぱいに感じることで、心を落ち着かせるためだ……。


 アルスを傷つけたのは、聖なる国ホーリアの王族のひとり、ハヌスであることに酷く心が傷んだ。テラ・クレベスのギルドの長でもあった彼に、アルスは拷問を受けた。聖属性の鞭で打たれたらしく、シェキルがアルスを保護した際、ハヌスのそばに転がっていた。ハヌスはアルティアに担がせて光の縄で幻獣ごと縛り、聖なる国へ送還したという。


 この、シェキルの話を聞き、シェラは震えが止まらなかった。過呼吸気味になる息子を見て、父は黙って抱きしめた。


 ようやく落ち着いたところで、シェキルはゆっくりと息子を連れてテラスへ向かった。そして冷たい風に当たることしばし、シェラは口を開いた。


「……シェイド」

「シェイド?」


 うん、とシェラは頷く。一瞬呪文かと思ったが、そうではないらしい。


「アルスの兄。あのヒト、過去にアルスが瀕死だった時に突然現れたことがあって。それで、止まっていた心の臓を動かした。そこに直接魔力を送り込んで」

「……ほう」

「今ももしかしたら、アルスの重篤な状況を感じているかもしれない。向かってきているかはわからないけど、この壁の外に……」


 シェラは言葉を切って一点を見つめた。シェキルもつられて見てみる。街をぐるりと囲む壁の上空、見張り台のないところに黒い靄が浮かんでいた。


「あれか?」

「……たぶん。あの近くにいるのかも。僕見てくる」


 そう言うと、シェラはあろうことかテラスから飛び降りた。魔導士は自分を浮遊させる魔法を身につけてはいるものだが、わかっていても肝が冷える。


 シェキルは慌ててテラスから見下ろすも、息子は既に芝生に着地して走り出していた。


 本当に、この行為だけは心穏やかになれない。途中で魔法を解消することも出来てしまうから……。






 門を抜けようとして、門番に止められた。


「シェラード様、お待ちを。……先程から壁際にいるヒトが『アルスの知り合いがいたら話がしたい』と言っておりまして……」


 あまりにも大柄ゆえに、この門番は少し怖気付いていた。シェラはそのヒトの居場所を詳しく聞いた。


「ありがとうございます。それと、そのヒトの入場許可を得てくださいませんか?私の知り合いとでも言ってもらえれば」

「は……はい、し、承知しました!」


 門番は足をもつれさせながらその場を離れた。シェラも聞いた場所へと駆け出した。


 テラスで目撃した靄の真下にシェイドは立っていた。黒いコートを羽織り、フードを目深にかぶっていて、近づき難い雰囲気を出しているが、シェラは構わず近づいていった。会話が出来る距離でようやくシェイドは彼に気づいた。


「ああ、シェラ。来てくれたんだね」


 フードを覗き込むとシェイドは微笑んでいたが、どこか引きつっている。というか、顔色が悪い。こんなにも色白だっただろうか?


「顔色悪そうですが……大丈夫ですか?」

「……かぶっていてもバレるんだな、あなたには」


 少し高めの声は、やはり弱っている。シェラは門へと促したが、彼はそれを丁重に断った。


「私のことよりも、これを……アルスに」


 コートの裾がめくられると、そこには大きめの袋が収まっていた。濃紺のそれは、ほんの少し靄を出していた。もしかしてこれは……。


「闇のオーブ……!?」

「そう。3つあるから少し重たいけど」


 シェラは大袋を受け取った。確かにずっしりと重みがあり、両手で抱えたほうが良さそうだった。


「本来ならひとり1つで足りるはずだけど、アルスの怪我の具合が酷そうだから2つ。心の臓にひとつずつ当てて」

「わかりました。あと1つは……予備か何か……!?」


 シェラは袋をその場に置いてシェイドを支えた。貧血を起こしたかのようにふらついたからだ。ややあって、シェイドは小さく「ごめんね」と言った。


「ガーデンで休んだほうが……」

「いや、ここでじっとしていたほうが楽かな。下手に動くと……気を失いそうだ」


 それならばせめてその場に座って休んだら、とシェラは支えながら促したが、やはり断られた。


 このヒトに一体何があったのだろうか。


「3つ目は……ああ、そうだ、ひとつだけ少し色が薄いんだ。それをヴァルゴス様に。アルスへは2つでいけるはず」

「……ヴァルゴス様に?」


 シェラは目を見開いた。その間にシェイドはシェラに預けていた重心を移動させた。


「ヴァルゴス様も、危険でしょう?同じように、心の臓に、当てて入れ込んで……」


 まさかヴァルゴスも重篤だと感じ取っていたとは。しばしシェラはシェイドを見つめた。もぞもぞ動いてコートを整える。見つめられていたことに気づいたシェイドは、少しハッとした。


「早く行って。間に合わなくなる」

「あ……はい!オーブ、ありがとうございます」


 シェラは一礼して袋を抱えると、踵を返した。






 シェキルが門番と話をしていたところへ、シェラが大きめの袋を抱えて走ってきた。


「あ、父さん……」

「随分と重たそうだな。……オーブか?」


 うん、と息子は頷いた。シェキルはシェラがやってきた方向に目をやった。黒いコートを着たジンブツが佇んでいる。少しだけ見つめてから、シェキルは息子に視線を戻した。


「そのオーブは運ぶから、これをシェイドに」


 そう言って袋を預かり、ポーチから手のひらサイズの瓶を取り出してシェラにわたした。魔力を回復させるエーテルだ。シェラはきょとんとしていた。


「たぶん自分の魔力で作ったんだろう、このオーブ。これだけのものを作るには、相当な魔力がいったはずだ。動いたら倒れてしまうんじゃないか?」


 それはシェイドも言ってた、とシェラは呟く。シェキルは息子からオーブの使い方などを聞くと、ガーデンへと急いだ。


 ヒールガーデンに着いて、アルスの治療室へ向かうと、ミスティアが長椅子に腰掛けていた。手には空になった瓶が収まっている。彼女も魔力切れを起こしたようだった。


「あ、シェキル様……それは?」


 シェキルに気づいた彼女はぼんやりと袋に目をやる。


「闇のオーブだ。これできっと助かるはず」

「オーブ………ですって!?」


 驚くミスティアにそっと微笑み、それから治療室に進入した。


「ウィージャ先生、これを。シェイドから受け取ったオーブです」

「なんだって!?」

「オーブ!?」


 ウィージャとヘイレンが同時に叫んだ。シェキルはアルスの傍らに立ち、袋から一つ取り出すと、ウィージャにわたした。


「これを、アルスの心の臓に当てて入れ込んでください」


 ウィージャはまだ驚いたままだったが、オーブを受け取ると、言われた通りにした。オーブが身体に触れた途端、吸い寄せるられるようにしゅるりと入っていった。「わっ」と医師は声を漏らす。


 オーブが心の臓に、身体に浸透していくのを、皆固唾を呑んで見守る。ウィージャはそっと胸元に触れると、目を閉じて願った。


「アルス、こっちに戻ってきてくれ」


 しかし、アルスの心の臓は静かなままだった。が、指先がほんの僅かにぴくついたのを、ヘイレンが見逃さなかった。


「シェキルさん、まだオーブありますか?」


 ヘイレンの問いに、シェキルは黙ってそれを取り出すと、自らの手で心の臓に入れ込んだ。先程と同じように、アルスの身体は一瞬にしてオーブを飲み込んだ。


「先生、マッサージを」


 シェキルは絶望に伏していたウィージャを奮い立たせた。医師は我に返ってマッサージを再開した。気道を確保し、一定のリズムで胸元を両手で押した。


 そして、ウィージャは手応えを感じた。


 何百回と続けたマッサージと、全身を覆い尽くしたオーブの力で、アルスの心の臓はとくん、と鳴った。ビクッと身体が一回跳ねた。ひゅっ、と息を吸い込む音がした。


 アルスは息を吹き返した。そう皆思った。


 少し咳き込んだが、それも落ち着くと、長く息を吐いたまま静かになった。


 アルスに刻まれていた深い傷は、ミスティアとヘイレンの力でかなり小さくなっていた。体内から出て行ってしまった血は、オーブの力によって徐々に戻ってくるはずだ。呼吸は非常にゆっくりだが確認できた。……ようやく。


「ひとまずは……蘇ったかな」


 ウィージャの言葉に、ヘイレンとシェキルは安堵のため息を同時についた。とは言え、まだ予断を許さない状態ではある。ウィージャは眠るアルスを眺めながら、ふとヴァルゴスを思い浮かべていた。彼もまた、別室で同じように眠っている。


「残ったオーブはヴァルゴス様に、だそうだ」


 心を読まれたのかと思うほど絶妙なタイミングで、シェキルが大袋を少し持ち上げた。ウィージャはありがたくしっかりと受け取った。


「……シェイドにお礼を言わないと。かれはまだ近くにいるんでしょうか?」

「おそらくは。シェラと一緒にいるはずです。遠くから見ても魔力が枯渇していたようだったから、シェラにエーテルをわたしてきました」


 わかった、ありがとう、と述べたウィージャは、オーブを持って治療室を後にした。シェキルとヘイレンも、あとは助手に任せて部屋を出た。

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