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キラキラとした眼差しで愛するファーラに見つめられるのは、アシアスとしても悪い気持ちはしない。正直なところ、天にも昇る気持ちだ。
だが、婚姻の理由が他国からの求婚が煩わしかったからなんて・・・・
アシアスの表情に察したのか、サイモンが「まぁまぁ、結婚は大事な事ですから、そう簡単に決めなくてもいいのではないですか?」と助け船を出した。
国王の結婚を、単に求婚が煩わしいからというだけで決めるのもどうかと思う、とも。
サイモンの言葉に「それもそうね」と素直に頷くファーラ。
「アシアスに好きな人がいるかもしれないしね」
その言葉にギョッとするアシアス。
会合が終わり、全てから解放されたファーラに対してアシアスは、ファーラに対する恋心を結構わかりやすく態度に出していたつもりだった。
ただ、手応えがないな・・・とは思ってはいたが・・・・まさか、本当に何も伝わっていなかったとは・・・
打ちひしがれるアシアスにルイナは「ファーラ様には直接的な言葉でお伝えしないと伝わらないと、何度も言ったでしょ?」と、出来の悪い子供でも見るような眼差しを向けた。
妹が兄に向ける眼差しではない。どう見ても母親だ。
「もたもたしていたら、ある日突然結婚相手を連れてくるかもしれないわよ」
そんなルイナの一言は、アシアスにとっては強烈なパンチであり、一番恐れていることでもあった。
これはなりふり構ってはいられないと、ファーラに思いのたけをぶつけ求婚しようとしたアシアス。
だが、彼女の前に跪く前に「あ、そうだ」と、ファーラがポンッと手を叩く。
「いったん私が女王になるけど、すぐにアシアスに王位を明け渡そうと思ってたのよ。結婚しちゃうとアシアスが王配になるじゃない?だめじゃん。やっぱ、結婚はナシかな」
声もなくソファーから崩れ落ちるアシアス。
この世の終わりのような顔をしている兄を横目に、ルイナがファーラに問いかけた。
「お兄様に王位をあけ渡した後、ファーラ様はどうなさるおつもりだったんですか?」
「もちろん、魔法の研究よ!」
そう言うと、聞いてもいないのに研究したい魔法を語り始めた。
「今、空間魔法を研究しててね、なかなか難しいよの」
「え?空間魔法であればすでに習得されているのでは?」
地下工房もそうだが、森にある別荘は外見と中身がまったく比例していないのだから。
こぢんまりとした外観とは違い、ドアの向こう側はまさに豪邸。
「あぁ、あれはこの世界の空間をいじっているだけで、私はこことは違う空間を研究しているのよ」
みんなの頭の上には、おそらくクエスチョンマークが立っているだろう。
「私よく空間魔法で、食事を出すでしょ?あれはこことは違う、別の世界と繋げている空間なのよ」
みんなの頭の上のクエスチョンマークが、どんどん増えていく。
「そこの空間は広げることはできたんだけど、時間が止まっていてね。確かにできたての料理とか生物は腐らないからいいんだけど、それとは別に人が住める空間を作りたいんだよね」
『空間原理』だとか『絶対空間』だとか、凡人では分からない単語がばんばん飛びだし、もう誰もついてはいけない。
こうなれば話が長くなることがわかっているルイナは、話にのるふりをしながら、不自然なく話を変えていった。
「でも、結局は女王になるのだし、結婚話は避けられないと思いますよ」
「アシアスを王太子とするから、いずれ退位する君主より未来の君主に目が向くでしょ。誰も私に見向きもしないわよ」
「ではファーラ様はお兄様に、いずれは政略結婚をさせるというのですか?」
「まさか。好きな人がいるのなら、身分なんて関係なく娶ればいい。国を傾けるような人間でなければ、私は反対しないよ」
「お兄様が選んだ人であれば、ファーラ様は賛成してくださって、婚姻まで協力してくださいますか?」
「もちろん!」
「どんな方でも?」
「私は身分とか全然気にしないから。人間性に問題なければ反対はしないわ」
もとより、自分のように国の都合で政略結婚なんてさせるつもりもない。
今世は王族だった。自分の立場も理解している。でも、前世で議会制民主主義を経験し、その当たり前の中で生きてきた。
政治家達は国の為に外交はするが、政略の為に誰かを人質のように差し出すことはない。
そう、時代が違う。常識も違う。何もかもが違う。
だからこそ、この国では前世のような政治をしたいと思った。
すぐには無理な事は百も承知だ。けれど、この国は一から作り直している最中。
うるさい貴族は制裁により消えた。
自分が進める政策で、将来的に王侯貴族は消えるかもしれない。
それでも遠い未来なのか近い未来なのかはわからないが、アシアスやルイナ、彼等の子孫達が生きやすい世界を作りたいと思っている。
思わず未来に思いを馳せていたところに、ルイナの嬉しそうな声で現実の戻された。
「言質はとりましたよ。約束ですよ。ファーラ様」
「え?あ、うん」
いつにないルイナの迫力に押され頷くファーラに、アシアスとルイナは顔を見合わせ頷きあう。
そしてアシアスは、ファーラの前に跪いたのだった。




