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三国の王達の、どこか未練じみた視線を背に受けながら、ファーラ達はレグルス国に戻ってきた。
アトラス国王からは、先日の大捕物のお礼にと晩餐に招待されたが丁寧に断りを入れて。
三人はサイモン達への報告もかねて、サイモン達が使っている執務室へと集まった。
「はぁ~、予想していたとはいえ疲れた~」
「確かに、ファーラ様に対する執拗なお誘い・・・最後はイラついてきたよ」
「まぁ、私たちは見慣れて入るけど、彼等にとっては高等魔法だもの。目の色も変わりますって」
ファーラが盛大な溜め息とともにこぼせば、機嫌悪そうなアシアスとルイナが頷く。
その様子にサイモン達もある程度は予想はいていたのだろうが、相当しつこくつき纏われたのだろうと苦笑する。
特に、セイリオスの王妃は最後まで「帰って来てくれ」と泣きながら訴えてきて、正直なところ鬱陶しかった。
「一応、しばらく国交は開かない旨は伝えたけど、諦めてなさそうだから色々手紙がくるかもね」
「それは致し方ないでしょうね」
サイモンが頷く。
「多分、私だけじゃなくアシアスやルイナにも釣書きがわんさか送られてくると思うわ」
「それは、アシアス達の魔法が狙いですか?」
「いや、幸いな事に彼等は私だけが魔法を使えると思っているみたい。改めて誰が魔法を使えるのかも聞かれなかったし。アシアス達の縁談はこの国に入り込む手段だよ」
大魔法使いファーラの存在が大きな衝撃だった事と、この世は魔力持ちが少ないと言う先入観で詳しくは詮索されなかったことは幸だった。
「まぁ、縁談が来ても全て断ってくれてかまわない。それと、森をぐるりと塀で囲って三本の道は幅を広くして門を作っておいたから」
「え?いつの間に?」
「アトラス国からの帰りにちょっと寄ってね。森の結界の強化もしたかったし。門番は今は式神が担ってるけど、近いうちに腕に覚えのある人を雇わないとだな」
まだまだ細かいところで、やらなければいけないことが沢山ある。それら全てには人の力が必要だ。
だが、この国の人達はまだ弱っている者が多い。年若い者から徐々に動き始めてはいるが、まだまだ時間がかかるだろう。
国内の治安維持も、アシアス直属の騎士達と式神の混合でしばらくは頑張ってもらうつもりだ。
軍事関係に関してはゆっくり編成してもいいと思っている。国内が落ち着くまで、いざとなればファーラが出張り魔法で片付ければいいだけなのだから。
つまりは、騎士団などよりも強力な、ある意味人間兵器的な大魔法使いファーラが控えていると言うだけで、国内の安全安心の治安にも繋がってきている。
なにせ得意な魔法は、攻撃魔法。
いずれは、騎士団の他に魔法師団も作るつもりだ。それらはまだまだ先の話。
今は目の前の事に集中して、国の建て直しに全力を尽くすだけだった。
会合から数ヶ月は経つが、三国以外からも親書がわんさか届いているレグルス国。
ガルーラ国が解体されレグルス国となった事は、三国以外の周辺国に親書を送り知らせてはいた。
恐らくあの会合には他国からの間者も混じっていたのだろう。
まったく付き合いのない国からの、国交を結びたいと打診がきているのがいい証拠だ。
それらも全て、今のところはお断りしている。いずれは国交を開く予定ではあるが、それもまだまだ先の話し。
国内も、思っていたよりも早く復興が進み、全てがスムーズに回っていた。
ほぼ、ファーラの魔法での力技が大きいのだが、魔法を教えるために設立した学校で学んだ人々も、少しずつではあるが協力してくれることも復興が早い一因でもある。
そんな中で、今一番頭を悩ませているのが、意外なことに各国からの求婚だ。会合から結構な時間が経っているのに、減るどころか逆にどんどん増えていっている。
ファーラには当たり前、アシアスやルイナにも想像を越える釣書きが送られてくるのだ。
当然、全てお断りしている。他国と縁を結ばねば国が成り立たないわけではない。なにせ、自給自足の国を目指しているのだから。
ファーラ的には結婚する気はなく、ただ、アシアスとルイナには身分関係なく好きな人と添い遂げて欲しいと思っている。
ファーラがそう願ってはいても、他人にそんなことは関係ない。
既に、美しいと評判の国王と兄妹の評判は各国に知れ渡り、彼らを見にレグルス国に不法入国しようとする者が後をたたないのだ。
「レグルス国をまるっと結界で被っちゃったから、この国には何をしても入れないのに・・・・頑張るよね」
そんな噂が流れているのも、ファーラが冒険者をしている時に仲良くなった商人を時折招いており、そこから漏れているのかもしれない。
魔法契約はしていないものの、口止めはしている。が、オーナーは口が固くても末端もそうとは限らないのだから。
まぁ、大した噂ではないから放置しているんだけど・・・・
騎士や事務方からも、警備の支障や釣書きへの返信がとても大変で何とかしてくれと苦情が寄せられるくらいはある意味大事になっていた。
あきれたようにファーラがため息を吐くと、ルイナが名案とばかりに爆弾を落とした。
「求婚者が煩いのなら、ファーラ様とお兄様が結婚してしまえばいいのでは?」
「え?」
「ル、ルイナ!何を!!」
驚くファーラとアシアス。だが、当のルイナは当然とばかりに得意気だ。
「要はファーラ様とお兄様が独身なのが問題なんですよね。なら、お二人が結婚してしまえば、無理して他国から人を入れる事もなく問題もなくなるのでは?」
『名案でしょ?』みたいな顔で言われ思わすファーラは「なるほど」と目から鱗が落ちたかの様に、すっきりした表情でアシアスを見た。
そして、まるで『買い物にいく?』みたいなノリで「結婚する?」と聞かれ、アシアスは思わず言葉を飲み込んだのだった。




