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ファラトゥール達が馬車馬のごとく働き続けたおかげで、国内の復旧はかなり進み、人身売買の被害者達も順次社会へと戻っていった。

三ヶ所あった森の中の屋敷。

屋敷にいた時のまとめ役だった人に町や村の長になってもらうと、その人に着いていく形で移動する人がほとんどだった。

勿論、自分の故郷に帰る人達もいたが、概ねまとめ役の人に着いていった。

あまり変わらぬ人間関係や環境のおかげで、被害者達家族も心穏やかに暮らすことが出来ている。

実は彼等には屋敷にいたときから、読み書きの勉強や魔法の訓練をしてもらっていた。

その人達の適正を見て、いずれは教師として働いてもらおうと思っているファラトゥール。

試験的にいくつかの学校を設立して、大人も子供も関係なく受け入れる準備を整えていた。


『今はまだ、必要最低限の少し上の生活』を目標に掲げたファラトゥール。周りの人達の協力に助けられ、順調に復興は進んでいた。


そして、忙しく働いている間に、三国との連絡を取り合い二週間後にアトラス国で会談を開く事になった。




三国の王達が渋々合意したレインフォード公爵との離縁条件。ガルーラ国問題が解決した今、三国の王達はファラトゥールをどう説得しようかと、頭を悩ませていた。

まさかこんなに早く解決するとは誰も思わない。年単位でだと思っていた。

時間がかかればかかるほど、二人の仲も少しは進展するのではと期待していた。離婚は回避できると、期待していたのだが。


とうとう、その日がやってきた。


「結局はこうなってしまうのか・・・・」

どの国の王が呟いたのか・・・・


セイリオス国、アトラス国、グルリア国の国王が立ち会うなか、ファラトゥールはセレムとの離縁届にサインをした。

何故かこの期に及んで渋るセレムに、ファラトゥールは冷ややかな視線を向ける。

そして、約束通り王族から抜ける書類にもサインをする。

ファラトゥールが王族を抜ける事に対し、両親でもあるセイリオス国王夫妻や二国の王達は引き留めたのだが、約束は約束だとあっさりさっくりサインをしてしまった。

ファラトゥールの母でもある王妃が泣きながら懇願しても、迷い一つ無いほどあっさりと。


泣き暮れるセイリオス王妃を横目に見ながらも、室内は次第に緊張感が漂い始めてくる。

何も今日は二人の離縁や、ファラトゥールの王籍離脱だけを見届けに来たわけではない。

国の内部が解体され、レグルス国として生まれ変わった旧ガルーラ国。

本日は、新たに国王となったファーラ・レグルスとの会合もこの後予定されていたのだ。


面倒な事は一気に済ますべきよね!三国の王が集まる事は、それこそ稀だし。希望的観測だけど、三国が全て敵に成りうる可能性も低いし。

人身売買の件で、アトラス国が目をつけていたジャーク元侯爵の捕縛にウチは協力した恩人的ポジションにいるし。会談前だけど手紙での感触はまぁ、友好的なんだよね。


「そろそろ指定された時間ですね」

セレムは、離縁届にサインする事もだが、アトラス国王の護衛としての役割もあった。

いくら内部が解体され新体制になったとしても、新たなる国王がどのような人物なのかわからない。

ただ、見た事のない魔法を使う事だけはわかっている。


ファーラは三国の王に向け、当然の様に式神で手紙を届けさせたのだ。

まぁ、舐められないための先制パンチ的意味合いもある。


会談場所でもあるアトラス国の王宮内の会議室は決して狭くはない。

だが、護衛やら何やらでかなり狭く感じる。

それは会議室の外もだが、王都そのものに厳戒態勢が敷かれていた。

当然だ。三国の国王が揃い、元凶であった国の新たな王が来るのだから。


指定された時間が近付くにつれ、室内の緊張が膨れ上がる。


「―――・・・時間だ・・・・」


誰かが呟いた。それが合図だったかのようにファラトゥールが、シンと静まった室内にコツコツと靴音を響かせながら三国の王の前に立ち、美しいカーテシーを見せた。

突然の事に皆が呆然と見ている中、パチンと指を鳴らせば一瞬にして、本来の姿でもある大魔法使いファーラへと変わる。


柔らかな栗色の髪は天の川の様な輝く銀髪に。色鮮やかな緑色の瞳は華やかなオレンジ色のパパラチアサファイアへと。

右手には杖を持ち、白地に金銀の糸での刺繍が施されたローブを纏った、ファラトゥール・セイリオスの面影などまったくない美しい女性が現れた。


誰も動けない中、セイリオス王妃の「ファラトゥール・・・?」と言う呟きを引き金に、騒めきと警戒感で混沌とする。

その全てを無視しファーラが杖でトンと床を叩けば、彼女の後ろ左右に金色の魔方陣が現れ、強い光と共に人が現れた。

勿論、アシアスとルイナである。


初めて見るその現象に警戒感が高まり、剣の柄に手をかける騎士達。

だがファーラは何事もなかったかのようにニッコリと微笑んだ。


「本日は多忙の中、お集まりいただき感謝する」

決して大きくはない声なのに、それは室内によく通った。

「初めてお目にかかる。レグルス国の王となったファーラ・レグルスという。これからは、三国とはより良い関係を築けたらと思っているので、お手柔らかにお願いしたい」


その美しい容姿からは想像できない程の鋭利な笑みは、その場にいた全ての者を竦み上がらせるには充分だった。



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