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閉じ込められた空間で、誰かが呟いた。


「大魔法使い・・・・・ファーラ」


その声に、一斉にファーラを見る。

五百年も前の魂を持つ者。つまりは、転生者だ。

大魔法使いファーラは平民だったが、ドミナートルのお気に入りで有名だった。


まさか・・・と、誰もがその可能性を浮かべては打ち消していくが、大魔法使いファーラに関しての書物は皆無と言ってもいいほど少ない。

口伝でしか今の世の人達は知らない。だからこそ、好き勝手に脚色し英雄にしてしまった。確かに英雄ではあるのだが、実績とはまったく違う物語として。

だから、貴族達の知る大魔法使いファーラはたくさん存在する。

だが、彼らが知るファーラ像と目の前にいるファーラはまったく想像外の存在。

なぜなら、物語のファーラは慈悲深く優しく聖女のような人物だから。

物語の最後は必ず『罪を憎んで人を憎まず』が定番なのだ。

実物はまったく正反対だというのに。


「あぁ、懐かしい呼び名だな。大魔女と呼ぶ者もいたな」

誰かの呟きに答えるように、ファーラは懐かしそうに目を細めた。


もし彼女が本当に、あの大魔法使いファーラの魂を持つ者なのであれば、逃げることは不可能だと誰もが膝をつく。

帝国が統一できたのも、ファーラがいたからだ。今では想像もできないほどの魔法を駆使し。


「彼女は‥・本物の大魔法使いだ・・・・」

契約書を説明していた魔法使いが座り込んで呟く。

「こんな魔法、此の世の魔法使い達には出来やしない・・・大魔法使いファーラ以外には出来ないんだ!それに、皇帝と同じレグルスを名乗っているじゃないか!彼女は皇帝のお気に入りだった!!」

何を言いたいのか、ファーラには理解出来なかった。多分、玉座に座る人物が、本物の大魔法使いであると言いたいのだろう。

もう少し冷静に考えれば、色んな可能性も見出せたのだろうが、彼等の思考はここに連れてこられた時点で正常には働いてはいない。

その最たる貴族が叫ぶ。

「だが!我々の知る大魔女とは違う!こんな事をする人ではないはずだ!」

彼の言葉に、ファーラの眉が上がる。

「ほぉ、こんな事とはどんな事だ?」

「我々をこの様に閉じ込め、問答無用で排除しようと・・・」

「では、お前の知る大魔女とはどんな人物なのだ?」

「彼女は、その偉大な魔法を使って人々を幸せにし、罪を犯した人間も寛大な心で許してくれる、女神のような人なんだ!!」


思わずファーラが驚きのあまり目を見開き、キョトンとした。

だが一拍置いてのち、大きな笑い声が室内に響く。


「あははははは!!何だそれは!誰の事を言っているんだ!!あはははは!!」


ひとしきり狂ったように笑い、そしてピタリと止めると、冷めた目をした無表情が彼等を見下す。


「馬鹿か?お前ら。好き勝手に我を作り上げ、それが実物だと?お前らの頭を割って中身を見てみたいものだな」

自分たちが想像していた大魔女とはかけ離れたその言葉、態度。彼等の背に悪寒が走る。

「犯罪者を許す?我がか?どちらかといえば、ならず者や犯罪者は積極的に排除していったものだがなぁ」

だからこそ帝国が統一できて、どこよりも安全な国になったのだ。

「まずはお前たちが加担してきた犯罪の数々。お前たちの家族が当事者となった場合、お前たちは許せるのか?」

バラン公爵は分からないが、彼に擦り寄り甘い汁を吸ってきた貴族達は、少なくとも一度は考えたことはある。


もし、自分の娘が、息子が・・・・・と。


「お前たちは、許せるのか?」

再度問われ心の中は、許せる訳が無い!という感情と、目を逸らしていた罪悪感でぐちゃぐちゃで、すぐには声が出なかった。

そんな彼等の心情などお構いなしにファーラは続ける。

「我はなぁ、我の大切なものに手を出されると、許せないのだよ」

そう言ってバラン公爵と宮廷医長ゼノンを、順番に()め付ける。

「お前たちがアシアスとルイナに、長年に渡り毒を盛っていた事は分かっている」

パチンと指を鳴らせば、彼等の目の前に魔方陣が浮かび上がり、光の中に人影が現れた。

アシアスとルイナだ。


突然現れた彼等にも驚いたが、それ以上にその姿に目を疑った。

昨日までのアシアスは、痩せこけて顔色が悪くてひょろひょろだったはず、なのだ。

ルイナに至っては、ベッドから起き上がれないほど弱っていたと報告を受けていた。


「なんで・・・・・」


バラン公爵に呟きに答えるようにファーラが鼻で笑う。

「これまでお前達が見ていた二人の姿は、我が見せていた幻影だよ」

またもパチンと指を鳴らせば、バラン公爵やゼノンが見慣れた彼等の姿に。

「いつから、彼等は・・・」

「結構前かな。まぁ、ルイナはあと少し遅ければ死んでいたかもしれないほどに弱っていたがな」

今じゃ、健康体さ。と、何かを払うように手を振れば、美しくも健康的な姿の二人に戻った。


「すでにお前達の屋敷にも騎士達が着いて、家宅捜索をしている頃だろう」


その言葉に、貴族達は顔色をなくし、へたり込む。

大切なものを守ろうとしてバラン公爵に(へつら)っていた事が仇となり、何の意味もなくなってしまった。

そして、(みずか)らの行いが大切な人達を窮地に陥れ、全て無にしてしまった事を悟ったのだった。


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