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その知らせは、あの日から時間を置かずすぐにガルーラ国王の元へと届けられた。
アトラス国王からの、親書である。
内容は勿論、先日摘発された人身売買の件。
ジャーク侯爵が全てを吐いたと。
その尋問はかなり厳しいものだったらしく、あっという間に陥落したらしい。
ジャーク侯爵の話のよれば、元締めはガルーラ国のバラン公爵である事。
商品とされた人間は全て、ガルーラ国の民である事。
近いうちに、この件でガルーラ国に使者を送りたいとの事。
そして、最後には感謝の言葉が綴られていた。
いずれはアトラス国からも、商品となる人間を見繕う計画だったというジャーク侯爵の目論見を阻止できたのだという。
また、黒い噂があったジャーク侯爵ではあったが、なまじ権力と金があった為、なかなか尻尾が掴めなかった。
だが、今回の事件のおかげでこれまで燻ぶっていた余罪も追及出来たと、その件のお礼も記されていたのだ。
ここまで静かに、そして確実に事件が解決できたのも、魔術師殿の協力のおかげだと絶賛もしていた。
ガルーラ国王とファラトゥールが顔を合わせてからすぐに、ガルーラ国王からアトラス国王へと、此度の捕り物に協力して欲しいという密書を式神に託していた。
この捕り物のサポートをする匿名の魔術師ことファラトゥールは、ガルーラ国側の人間である事も明かしていた。国王と近しい事も。
アトラス国王に凄腕の魔法使いがいる事を明かしたのは、恩を売る事と牽制だ。
魔法が廃れたこの時代に、これほどまでの魔法を使える魔法使いがガルーラ国にいるのだと。
これまではバランの所為ではあるが、他国へ侵攻しようとしていたが今後はそう言う事はない。
この国は変わるのだと示したかったのだ。
その本気度は、今の所正確にアトラス国王には伝わっているようだ。
此度の事件は、アトラス国に限らず、どこの国でも起こり得る事だった。貧しさに苦しむ民はどこの国にもいる。
その極限がガルーラ国だっただけの話。
事実、人身売買を法で規制しても、地下では普通に売買されている。今回の売買相手の貴族の国の様に。
一緒に捕まった彼等は自国へと強制送還され、かなり厳しい罰が下されるという。当然、彼等に関わる売人達もだ。
アトラス国でも、ジャーク侯爵とかかわりのある貴族達を一斉摘発している。
そして、ガルーラ国でもようやくバラン公爵を捕える手筈が整った。
ファラトゥールがこの土地に戻った時点で、バランだけであれば捕える事も可能だった。
証拠なんて、ファラトゥールがその気になればすぐにでも入手できるのだから。
でも、それでは取りこぼしが出てきてしまう。
例えば、今回捕まったジャーク侯爵だとか。
それでは駄目なのだ。
ファラトゥールがこだわったのは、この組織の根絶と見せしめなのだから。
新たに連載投稿してます。現代ファンタジー系です。
「助けた彼には悪魔が憑いていました」https://ncode.syosetu.com/n2045kz/
一度引き下げた小説ですが、修正しつつ再投稿。タイトルも変更しています。
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