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あらかた方針を伝え、打ち合わせが終わると、サイモンはおずおずとアシアスとルイナとの関係を聞いてきた。

恐らくずっと気にはなっていたのだろう。


「私の地下工房にアシアスが不法侵入していてね、その時からの付き合なのだよ」

「ファーラ様!確かにその通りではありますが・・・・まるで俺が犯罪者みたいな・・・・」

「ごめんごめん。今では一番信頼しているし、頼りにしているよ」

「まぁ、お兄様ばかりずるいわ!私は?ファーラ様、私は?」

「ルイナの事も当然信頼しているわよ。だって二人は、一番最初にできた私の味方だもの」

突然始まった三人のイチャイチャに、サイモン達は只々純粋に驚く。


アシアスの忙しなく変わる表情。常に表情に乏しく、覇気のない顔をしていたのが、まるで別人のようだ。

そして、公式の場でしか顔を合わせた事がないルイナの美しさ。

ルイナに関しては、今にも儚くなりそうだと言う事だけは聞いていたが、どこをどう見ても健康そのものだ。


何よりも、この二人がここまで仲が良かったのかと、五人は呆然と眺めていた。


「あぁ、話が逸れてしまってすまない。アシアスとルイナにはいつも助けてもらっている」

「ファーラ様の言う地下工房とは・・・」

「今ではこの城に入り口を塞がれてしまっているが、私が住んでいた屋敷の地下には魔法を研究する工房と非常時に備えたシェルターがあるんだ。そこに入るには特別な魔道具が必要なのだが、偶然アシアスが獣の腹からそれを見つけてね、入り口が開いてしまったのさ」

この城の下にまさかそんな施設があるとは、三百年以上前の事とは思えない。

そして二人が出会った事で、アシアスとルイナの命が救われた事も知った。


「宮廷医長のゼノンは、バラン側の人間だ。アシアスとルイナに遅効性の毒を盛り続けていた。ルイナに至っては、死の一歩手前だった」

儚くなりそうだと言う噂は、あながち間違いではなかったのだなと思うも、その原因が宮廷医長だったとはサイモン達は驚きを隠せない。

「では、アシアスの顔色がいつも悪かったのは・・・・」

「食事に毒を盛られていたからだね」

「毒を盛られていたのは、お二方だけだったのでしょうか?」

側近のジェイデンが、国王にも毒が盛られていたのではと危惧していたが、ファラトゥールは「あぁ、国王には盛られていないよ」と笑った。

安心させるような笑みではない事に気付き、首を傾げる面々にさも当然の様に言った。


「だって、黙っていても国王は早死にするだろ?毒を盛るまでもないじゃないか」


ファラトゥールの言葉に、僅かな衝撃と妙に納得するサイモン。

バラン達が自分達をどう見ていたのかがわかる。


「まずは、この国の害虫駆除をしないといけないね。恐らくごっそりと人がいなくなるかもしれないから、忙しくなる覚悟だけはしておいた方がいい。まぁ、そこそこ優秀な人材は囲い込んではいるが・・・足りないだろう」

「害虫駆除・・・」

「因みに、どれほどの人がいなくなってしまうのでしょうか」

グレイソンとジェイデンは主に文官をまとめているのだが、バラン公爵の息がかかっている仕事のできない奴等に足を引っ張られて、うまく仕事がまわらない事が悩みの種だった。


「あぁ、バランに関わっている全ての人間だ。因みに家族を人質にとられ脅され酷使されている優秀な人材は、既に囲い済だ」


彼女には知らない事がないのだな・・・と、改めてファラトゥールの異常さを目の当たりにした気がする。

自分達がやろうと思ってもできなかった事を、瞬く間に準備を整えてしまった。

先ほど見せられた、バランの映像などで全てを把握しているからなのだろう。自分達も含めて。


だからこそ、期待してしまう。未来を夢見てしまう。そんな気持ちがどんどん強くなっていくのだ。止められないほどに。


「食料問題はアシアスとルイナに任せている。それに関してはまだ手掛けたばかりでね。大体七日ほどで結果は出るだろう」

アシアス達は伯爵達に与えた苗や肥料の効能を聞いていたので驚きはしなかったが、七日ほどでどのような結果がでるのか、サイモン達は首を傾げる。

「アシアスの協力者には特別な苗と肥料を渡している。七日ほどで収穫できるものだ」

「七日・・・・」

「だがこれは急場をしのぐ一時的な措置。同時に、季節ごとに収穫できる野菜なども植えてもらっている」


リウム伯爵家とジルト伯爵家には、隣の領でもいい。友人でもいい。進んで苗や肥料を分け与えてもらい、広めてもらいたいと話している。

まぁ、黙っていてもたわわに実る木の実や、季節を無視したように畑を彩る農作物。それを間近に見てしまえば、飛びついてくること間違いなしだろう。

みんな、お腹を空かせているのだから・・・・


肥料はこの枯れた土地を肥沃にする物。苗は二種類用意した。七日で育つ魔法をかけたものと、季節ごとに実る、ごくごく普通ではあるが健康な苗を。

「兎に角この国の食料事情を何とかしない事には、先に進まないからね」


アトラス国から連絡が来るのは、恐らく一月以内。それまでにやる事はまだまだ沢山ある。

だが、すぐそこまで来ている自由を思えばがぜんやる気しか出てこないファラトゥールだった。



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