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あけましておめでとうございます。
2025年が皆さまにとって、幸多き年となりますようお祈り申し上げます。
今年もよろしくお願いします ^^) _旦~~
産まれてからこれまでの話の中で、レインフォード公爵との結婚に二人は一番反応を示した。
「レインフォード公爵って・・・自意識過剰野郎?」
ルイナが王女らしからぬ言葉でぼそりと呟く。
「まぁ、そのおかげで前世の記憶が戻り、ガルーラ国の問題が解決したら離縁できるし、王族籍を抜ける事もできる」
ファラトゥールは「だから自分の為に頑張ってるんだって」と笑った。
談笑する二人を見ながら、アシアスの心の中は色んな感情でごった返していた。
アシアスはファーラが好きだ。一人の女性として。この問題が解決したら求婚しようとも思っていた。
だが、既に既婚者・・・・
胸の内ではレインフォード公爵への嫉妬と、暴言への怒り、そしてファーラの真価を見抜けない馬鹿な男と蔑む。そんな感情が入り乱れ、自分でもどうにもできずにいた。
それでも嵐の様な胸中の中心にあるのは、ファーラへの愛。
彼女は誰にも渡せない。彼女を絶対に手に入れる。その為には・・・・
あぁ・・・俺が彼女を手に入れる為には、彼女の願いを叶えればいいのか・・・
解決策が分かるのであれば、それに従えばいい。
あれほど苦しかった心は急に凪ぎ、冷静にこれまでの状況を再分析し始める。
「ファーラ様、今晩の国王との会談、俺もお供します」
先程までの困惑した雰囲気はすでになく、これまでに見た事のない雄々しい表情になっていた。
時折無力さを滲ませていたバイオレットダイアモンドの瞳は、力強い光を放ち見違えるようだ。
アシアスの本当の願いなど知らないファラトゥールは、安心してこの国を任せられるなと抑揚に頷いて「では、作戦会議だ」と指を鳴らせば、テーブルの上には美味しそうなお茶とお菓子が並んだ。
夜も更け、ファラトゥールは、アシアス、ルイナを伴い国王の私室に転移した。
転移魔法陣は式神の小鳥に託していたので、容易に転移できた。
そこには、国王と護衛騎士一人、側近三人、計五人の男が立っていた。
挨拶もそこそこに、ファラトゥールは防音と誰も入ってこられないよう結界を張った。
「はじめまして、ガルーラ国王。私はファーラという。この度は、急な会談に応じてくれて感謝する」
そう言いながらフードを脱ぎ、アシアス達以外に初めてその姿を晒した。
そしてファーラの後ろに控えていたアシアス、ルイナもフードを脱ぎ国王達と対面。
国王達は、まさか王太子と王女が彼女の後ろに控えているとは思わず、その姿を見て目を見開いた。
だがすぐに表情を取り繕い、挨拶を返す。
「・・・・初めてお目にかかる。ガルーラ国王サイモンという」
そして、控える護衛と側近の紹介をする。
ウィリアム・コナー。彼は国王の護衛であり、最側近でもあるジェイデン・コナーの息子でもある。
ウィリアムはアシアスの二歳年上で、ジェイデンは国王サイモンと同い年。
他二名の側近、グレイソン・フォークナーとケイレブ・ファウラーもまた、国王とあまり変わらない年齢だった。
式神ファイブが集めてきた情報の中でも、この四人だけは唯一国王を裏切る事のない仲間である事がいつも映し出されていた。
本当に味方が少ないと、ファラトゥールは頭を抱えるほど。たったの四人しかいないのだから。
取り敢えず味方が少ない事は後ほど考えるとして、話し合いの為にウィリアムは国王の後ろに立ち、他は皆席についた。
「まずはこれだけは先に言っておく。この土地は私のものである。ここにある魔法契約書が証拠だ」
ファラトゥールが手を出したその先に、光と共に一枚の紙が現れた。
それを手渡されたサイモンは、「・・・・ファーラ・レグルス」と呟き、隣に座るケイレブに渡した。
「・・・・間違いありません。本物の魔法契約書です。しかもかなり高度なもので、魂による契約書。どれだけ外側が変わっても契約した魂を持っていれば有効です」
実はケイレブはこのガルーラ国の魔法使いだ。これはアシアスも知らなかったようで、驚きの表情を浮かべている。
「ファーラ殿、確かに本物だと確認させてもらった」
「其方らも災難だったな。初代国王が馬鹿な事をしなければ、歴代国王も短命などと言う呪いに苛まれる事など無かったのに」
ファラトゥールの言葉に国王達はハッとしたように顔を上げた。
それは、初めて本当に呪いの為に短命だったのだと知った瞬間だった。




