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翌日、リウム伯爵領に転移魔法で移動したアシアスとルイナ。

今回は邸宅内にではなく、少し離れた森の中の小屋に魔方陣を設置。

そこから馬車に乗って移動した。これもルイナの訴えから急遽、ファラトゥールが準備したものだ。


元々、リウム伯爵領は王都から馬車で向かって丸一日かかる距離だ。

予定では馬車でゆっくりと向かう予定だったが、ルイナが「いけ好かない伯爵子息と令嬢がいる!長居はしたくない!」と訴えた為、伯爵邸から十分もかからない所に転移用の小屋を建ててしまった。勿論、ファラトゥールが。

アシアスとルイナにはめっぽう甘いファラトゥール。

例え味方でも、彼等に不快な感情を見せる輩には冷たい対応しかするつもりはない。


「アシアス、そのいけ好かないガキ共は無視よ!適当にあしらいなさい。王族を侮辱するやつらは私の代わりに式神が成敗するから」

フンスと鼻息荒いファラトゥールに、嬉しそうに頷くアシアスとルイナの目は、相変わらずフィルターがかかり曇っていた。


ジルト伯爵には魔法の事は話していた。それだけ信用もしていたし、領地が辺境で何かあっても王都まで情報が流れて来るには時間がかかると思ったから。

だが、リウム伯爵に関しては、当主は信用しているが夫人と子息令嬢に対しては一切信用していない。


真実は当主にしか話すつもりはなく、それに対しても魔法契約で縛り情報を守るつもりだ。

すぐ目の前の伯爵邸に肥料と苗を積み馬車で移動したのも、伯爵以外の人間に魔法を隠蔽するため。

王都との距離を考えれば、それ以外にの選択肢は無い。


昔から伯爵には世話になっているが、あの家族にはどうしても好意を持てない・・・領民も気の良い人ばかりなのだが。


憂鬱そうに溜息を吐き馬車の手綱を握るアシアスに、ルイナは満面の笑みを向けた。

「お兄様は私が守ります。私から離れないでくださいね!」

なんとも男前な科白にアシアスは、つい数か月前までいつ消えるともわからない命だった事が信じられない。そして、こんなにも勇敢に自分を守ると宣言する。

片手で手綱を操りながら、もう片手でルイナを抱きしめた。


「頼りにしているよ。美しい守護姫殿」




リウム伯爵邸に着くと、伯爵一家が出迎えてくれた。

だがそのいでたちにルイナが一瞬だけ眉を眇めるも、すぐに張り付けたような笑顔を浮かべた。


「ようこそおいでくださいました、王太子殿下」

「あぁ、今日は世話になる」

「お初にお目にかかります。ガルーラ国第一王女ルイナにございます。兄がいつもお世話になっております」

誰もが見惚れる様な微笑みとカーテシー。

当然の事ながらアシアス以外の人間は皆頬を染め見惚れる。

そんな中、伯爵だけはハッとしたように、家族を紹介した。

「当主のアナストと申します。殿下にお会いでき光栄に存じます。こちらは妻のイーゴゥイス、息子のスポイル、娘のチャイルディです」

アナストに紹介され頭を下げるものの、彼等の視線は目の前のアシアスとルイナに固定されていた。


スポイルの中での王太子は、顔色が悪く痩せ細った貧乏くさい奴と言う認識しかなく、いつも見下していた。

どこからどう見ても、自分の方が健康的で容姿も女性に好まれる。

「並べば、俺の方が王子にしかみえないよなぁ」と、心の中ではいつも優越感に浸っていた。

だが目の前に現れた彼は正に格が違っていた。いつもの貧乏くささはなく王太子然としており、何よりも健康的で男であるスポイルから見ても見惚れるほどの美丈夫っぷり。

張りが無く不健康な色をしていた肌は、艶と張りを取り戻し少し日焼けしたような健康的な色をしている。

綺麗な色の紫がかった濃紺の髪ではあったがパサつき、手をかけていないのがまるわかりだったが、今は宵闇に向かう空の様にサラサラと輝き綺麗に整えられている。

そして何より、覇気のなかったその瞳には力強い光が灯り、青みがかったバイオレットダイアモンドは吸い込まれそうなほど澄んでいた。 

いつもと変わらず纏っている服は軽装だ。それなのに、これまでのみすぼらしさはなく、只々神々しい。


そして神々しと言えば初めて会う、王女殿下ルイナ。

スポイルは彼女から目を離す事が出来ずにいた。


病弱でいつ儚くなるともわからない命だと聞いていた。

だが目の前に現れたルイナは、艶やかな金髪を綺麗にまとめ上げ細い首筋が艶めかしい。ガラス玉の様に澄んだ碧眼は強かな意志を宿し、見る者全てを魅了する。


なんて美しいのだ・・・・


一目見て彼女の虜になったスポイルは、自分の妻にしてやろうと欲をかいた。

今のアシアスには及ばないが、自分も容姿は整っており令嬢達にも人気がある事を自負している。

これまで何人もの女性を堕としてきた自信もある。


ずっと療養していたのだから、きっと異性への免疫もないはず。チョロいはずだ。とルイナを熱く見つめた。


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